旧領に行ったらクズだらけ
アルブレヒト旧領へと向かう。
ニールスとデニスは11歳になったという。この世界の子どもたちは、ほんとうにしっかりしている。
この旅でも、彼等にはずいぶんと助けられた。馬に乗る練習をしていたが、餌をやったり水を飲ませたり、そして夜はどう世話をするのかとかは知らなかった。
歩くより楽だ、くらいにしか考えていなかったのだが、やはり腰も痛くなってくる。そうしたときの乗り方、休み方なども的確にアドバイスしてくれる。彼等がいなかったら、どうなっていただろうか。
僕が11歳のときはどうだっけ……。小学校5,6年生……。ただ、のんべんだらりと学校に通って、家ではゲームをする毎日だった。それは高校生になっても変わらない。
この世界に来て、ようやく自立したと言えるようになったと思うが、前の世界のままだったら、きっとグダグダと不満を言いながら、何もしないで生きていたのだろう。
彼等のおかげで予定通り5日で旧領に着いた。
旧領は、まだゴツトツ国との戦争状態だから自由に出入りはできない。入るには関所を通らなければならない。
戦争状態といってもゴツトツ国と民間レベルでの貿易はされている。焼酎もゴツトツ国で販売されている。でも武器などを輸出することはできない。そうした禁輸品の取り締まりが行われていた。
「禁止されている物はもっていませんね」
関所では、2人の兵士に、まずそれを聞かれた。
「ございません」
「一応、改めさせてください」
僕たちは、荷物を渡した。兵士は中を開けて見ている。
「大丈夫ですね」
兵士は、そう言って僕たちを通そうとした。でも、それで終わりではなかった。
「おい、持っているお金も確認しろ」
兵士の後に、上官らしき男が来て、そう指示した。
「すみませんね」
そう言われたので、持っているお金を全部出した。全部で100万円くらいはあるだろう。
「ほう……」
上官は、ニヤニヤしながら見ている。
「怪しいな。お前たちはいったい何者だ?」
「僕たちは王女殿下の依頼で、バルスフェルトの子爵様のところへ行くのです。こちらに殿下の指示書もございます」
僕は、そう説明したが、その上官は納得しない。
「お前のようなやつが、王女殿下から依頼されるわけがないだろう。これは偽物だ」
そう言って、指示書を破り捨てた。
「なんていうことを……」
その間、その上官はセシリアを舐め回すように見ていた。
「かわいいな……」
上官は、ゴクリと唾を飲んだ。
「この金は没収だ。この女も調べるぞ。着ている物をすべて脱がせろ」
ニヤニヤ笑いながら、そう言う。
「しかし、王女殿下の……」
部下の兵士が言うが、
「何かあったなら、こいつらを全部殺してしまえばいいだろう。俺の命令通りにしろ」
そういう奴らだったんだ。今までも、関所を通るときに難癖をつけて金を奪って、女性を食い物にしていたんだ。なんていうクズだ。
ニールスとデニスは、腰の剣に手をかけたが、僕はそれを制した。
ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਤੇ, ਮੈਨੂੰ ਬਰਫ਼ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਦਿਓ.
僕が呪文を唱えると、上官と二人の兵士の膝から下が氷で地面に固定された。もう身動きはとれない。
「もう大丈夫だよ」
セシリアの手を引いてから、彼女をニールスとデニスに任せた。
「何をするんだ!おい、全員出てこい」
上官は、他の兵士たちを呼ぶ。
ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਵਿੱਚ ਮੈਨੂੰ ਅੱਗ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਦਿਓ
巨大な火の壁ができて3人の兵士を囲む。ヴァイスさんから習ったのをさらに強力にしたものだ。
30人程の、他の兵士が駆けつけたが、火の壁を見て立ちすくんでいる。
「こちらのお方は、タクヤ・ジークフリート子爵様だ。その者たちは無礼を働いたので、貴族特権で処罰する。お前たちが証人だ」
ニールスが大きな声で告げる。さすがに騎士爵の息子だ。貴族の対応は心得ている。
駆けつけた兵士は、その場できれいに整列してから、しゃがみ、頭を垂れた。
「何をやっている。その者たちは偽物だ。貴族を騙る犯罪人だ」
火の向こうで、上官が叫ぶ。
「フォクトマン様のご子息ですね。お父上にはたいへんお世話になりました。そちらはバグナー様のご子息ですね」
「お二人には、反乱の時に助けていただいたとも聞いております」
兵士たちが口々に言う。
「何?それじゃあ、本物……」
火の壁の向こうで、上官は呆然として立ちすくんでいる。
「あとは我々にお任せください。今まで、我々も苦々しく思っておりましたが、軍では上官の命令は絶対ですので、従うしかございませんでした」
火魔法を解除した後、上官は縛られて連れていかれた。おそらくただではすまないだろう。そして、最初の二人の兵士は、上官の命令だったこともあって許してあげることにした。
関所の兵士たちは、上官を更迭できるので喜んでいる。ニールスとデニスは、この地の兵士たちの間では、反乱を収めるのに活躍した若者として人気があるともいう。
僕たちが見えなくなるまで、手を振って見送ってくれた。
この後は、関所はもう無い。目的地まで一直線だ。
******
関所を出てから宿場町で1泊して、目的地のボウラー子爵邸に到着した。
出迎えたのは家宰で、その後、ボウラー子爵に通された。
「よくおいでくださいました。王女殿下からも話は聞いています」
やわらかな物腰だが、〈鑑定〉してみるとろくな者ではない。〈金集め〉というスキルは初めて見た。兵士の夫人たちが、「追加の税のとりたてがあったり、若い女性を召し上げたりもした」と言っていたのは、こいつなんだろう。
それに僕に言葉をかけた後、ずっとセシリアを見ている。それも舐めるように……。
「長旅でお疲れでしょうから、今日はお部屋でお休みください。婚約者とのことですが、結婚前ですので、別室にしましたがよろしかったですね」
「ええ、それで結構です」
それから部屋に案内されたが、僕たちの部屋は馬小屋も近く、お世辞にもきれいとは言えない。
「昨日、関所の役人を捕らえましたね。今日、報告がございました。実は、あの役人は子爵様の子飼いだったんです。それで根に持っているようです。お気を付けください。私たち屋敷の者はみな、アルブレヒト様を慕っております。アルブレヒト様の恩人とも伺いました。ここにいる間は、誠心誠意お仕えさせていただきます」
案内した侍女は、小さな声で、そう教えてくれた。子爵に歓迎はされていないとは思ったが、その通りだったのだな。
「ありがとう。とてもうれしいよ」
侍女は微笑んでから一礼をして下がっていった。
「久しぶりだな」
部屋の奥の影から声がした。ニールスとデニスは、すばやくその方を向き、剣に手をかけた。
「俺だ。俺だ」
現れたのは、シャテーのメンバー3人だった。ニールスとデニスと一緒に森を抜けた、あの3人だ。久しぶりに会えて、2人ともすごく喜んでいる。もちろん僕もだ。
「お前を助けてやれと主から言われた」
「どうして?危険なことでもあるの?」
「お前の任務は、この領地の経済の立て直しだと思っているだろう。王女の考えはそれだけではないんだ。もちろん主も……。詳しくは言えないがな」
「それが何かはわかりませんが、みなさんがいるのならば心強いです」
「あとな、お前の婚約者は覗かれるぞ」
「覗かれる?」
「ああ、そのための部屋を用意されているんだ」
なんてことだ。すぐにセシリアに知らせなければ……。
「心配するな。そういうことも含めて、我々が派遣されたのだ。絶対にそんなことはさせないからな。関所でも助けようと見ていたんだが、その必要はなかったけどな」
このメンバーがそういうのなら、絶対に大丈夫だろう。
それにしても、出だしからこれとは……。
しかし、本当の任務とはなんだ?
ブラウザで翻訳ができる方は、翻訳してみてください。呪文の意味がわかります。




