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脱出

 隠れ家に戻って、僕が考えた作戦を説明した。

「本当に、そんなことができるのか?」

「大丈夫です。自信はあります」

「それができるのならば……。おもしろいな」

 シャテーのメンバーも同意してくれた。


「それならば、3日ほど時間をくれ。いろいろと準備をしたい」

「3日ですか?その間に侵攻されたら……」

「いや、そのほうが結果として早くなるはずだ。心配するな」

 シャテーのメンバーがそう言うのならば、大丈夫なのだろう。

「あの場所は、後のことを考えると都合がよかったんだ。まあ見ていてくれ」


 それから3日、シャテーのメンバーは準備をしているようだったが、僕たちがすることはなかった。それで僕はあることを試していた。それがうまくいかないと作戦が失敗するからだ。今のところ、うまくいっている。後は、当日だ。


******


「準備ができた」

 僕たちは、湖の屋敷に向かった。僕とクレバーとカンさん。そしてシャテーのメンバーが3人だ。守備の衛兵は、あわせて80人になるだろうか。それでもこのメンバーで十分だ。ミスさえなければ。


 監禁場所を発見した三日月の夜から4日。ほぼ新月の暗闇だ。風もなく、穏やかな天気で条件は最高だ。


 僕たちは、船着き場の反対側の湖畔に立った。狼の群れが背後にはいるが、狼が嫌う臭いを身につけているから襲われる心配はない。獣人族のラム、サム、タムの3人に教えてもらった草の汁の臭いだ。


 僕は、湖畔に立つ。


ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਤੇ, ਮੈਨੂੰ ਬਰਫ਼ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਦਿਓ.


 僕がそう唱えると、足下から小島までが一気に凍り、幅が2メートルほどの1本の橋ができた。


「本当にできた!」

「1キロくらいはあるぞ。いったいどれくらいの魔力量なのだ」

 誰もが驚く。

「牢に入れられていたときに、あまりに暇だったので、毎日魔法の練習をしていたんです。気がついたらここまでできるようになってました。念のために、別の湖で練習もしてみました」


「さあ、急いで」

 まずシャテーのメンバーが先に氷の橋の上を走る。スキルを使って侵入し、人質の人たちに説明をする、そして衛兵のいる場所を確認してもらうことになっている。


「いったいなんですの。あなたたちは」

 人質の人たちは、それぞれの部屋で寝る準備をしていた。

 自分たちが人質になっていて、反乱が起きているということは知らなかったのだ。ただ危険からの避難のためにここに連れて来られたと言われていたのだった。


 シャテーのメンバーの説明では納得しない。クレバーには〈交渉 B〉のスキルがある。それで、ほかの夫人たちにも集まってもらい、リーダー格の夫人にクレバーが説明することにした。


 その間に、衛兵が待機している部屋を確認した。うまい具合に、全員がその部屋にそろって待機していた。

 僕は、その部屋の前に来た。


ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਵਿੱਚ, ਮੈਨੂੰ ਪਾਣੀ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਪ੍ਰਦਾਨ ਕਰੋ.


ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਤੇ, ਮੈਨੂੰ ਬਰਫ਼ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਦਿਓ.


 僕が唱えると、扉と窓が水で濡れて、そのままぶ厚い氷で覆われた。これで衛兵は外へは出られない。

 同じように、侍女や使用人の部屋もすべて氷付けにした。

 少しだが時間ができた。


 クレバーが、人質の夫人たちを説得する。突然現れた我々を信用していない。それも当然だろう。

「みなさんは、人質としてここに監禁されていたんです」

 そう説明するが、誰も不審な表情で、信用しない。

「私たちは、マグヌス様から避難するように言われて、ここにいるんです」

「そのマグヌスが王国を裏切ったのです」

「マグヌス様が?伯爵様もベルンハルト様もいるのにですか?」

 なかなか納得してはもらえない。

「そのお二人が不在の時に、みなさんを人質としてから兵を起こしたのです」

「何か、みなさんの身許を明らかにできるものはお持ちですか?」

 そう聞かれたが、もっているはずもない。

「そのような物をもってゴツトツ国に入ることはできません」

 しばらく押し問答が続いた。しかし、時間はない。衛兵がドアを破ったら……。


「みなさんが言われた危険とは何なんですか?そしてどうして敵国であるゴツトツ国に避難するのですか?どう考えてもおかしいですね」

「確かに、考えるとおかしいですね。それでも見ず知らずのあなたたちよりマグヌス様のほうが信用できます」


「マグヌス様は、辺境伯様やベルンハルト様がご不在の時にはどうされていました?」

「確かに……、そのときはわがままで、無理難題を……」

「そういう状況に、今なっているのです。辺境伯様がケガの治療で王都に行かれたときに、みなさんが、こちらに連れてこられたのです」


「そういえば」

 一人の夫人が思いついたように言う。

「主人からの手紙におかしなことが書かれていたんです」

「どんなことを?」

「息子の名前が違っていたり、二人で旅行した場所も違っていたり、微妙な違いだったので単なる書き間違いだと思っていたんですが……」

「そういえば私も」

 次々に、思い当たるところが出てきた。

「見せてもらえますか?」


 それぞれが自分の部屋から持ってきた。

 それをクレバーが目を通すが、わからない。

「間違っている文字は、どれですか」

「これですね」

 それを順番に指さしていく。

「”ニ”、”ゲ”、”ロ” になりますね」

「私も」

「私のもそう」


「どうやら、あなた方のおっしゃるのが正しいようですね。すぐに出ます。みなさん子どもたちを連れてきて準備を」

 リーダー格の夫人がそう言うと、あっという間に部屋を出て行った。


「そろそろやばいぞ」

 衛兵を見ていたカンさんが駆け込んできた。

「急ぎましょう」


 夫人たちは子どもたちを連れてきた。寝ぼけ眼の子どももいて、何が起きたのかと、戸惑っている。

「こちらです」

 裏の氷の橋へと案内する。先頭を僕とクレバーが、殿をカンさんが務めた。

 シャテーのメンバーは、すでに渡って森の中にいろいろな仕掛けをしている。


 半分ほどわたったときに、ガシャーンと音がした。氷付けにしていたドアか窓が破られたのだ。

「急いで」

 僕は声をかけるが、小さい子どももいる。このペースでは追いつかれるかもしれない。

 僕は、小島の付近の氷魔法を解除した。100メートルほどの氷の橋があっという間に溶けて消えた。追ってきた衛兵の半分くらいは湖に落ちた。

 氷の橋だから僕たちがいる部分は浮いている。端が消えても大丈夫だ。


「ボートはどうする」

「もう、沈めた」

 僕は、屋敷を出るときに水魔法でボートの中を水で一杯にした。つまりは沈没だ。


「船着き場の衛兵も気づいたかもしれない。急ごう」

 カンさんがそう言う。

「それも大丈夫です」

「えっ?」

「船着き場から小島まで氷の橋を作っておきました。ほら、ご覧ください」

 船着き場の方を見ると、衛兵が氷の橋を渡っている。おそらく全員だろう。

 衛兵が半ばくらいまで来たときに、氷魔法を解除した。50人のすべての衛兵が湖に落ちた。

「これで時間がかせげます」


 ようやく、なんとか岸までたどり着いた。子どもはハアハア息が切れそうだ。

「これから森を抜けます。嫌な臭いかもしれませんが、これを振りかけてください。狼に襲われなくなります」

「私たちは騎士の妻です。これくらいは気にしません」

 そうしてスカートの端を破って切った。

「これで森の中も走れますよ。少しはしたないですが……」

 そう言って笑う。

 さすがに、単なる貴族の奥さんとは違う。長く戦場近くで暮らしていたのだから、僕なんかよりも強いかもしれない。


 でも、これからがたいへんだ。

 そして、王国に帰るには……。


ブラウザで翻訳ができる方は、翻訳してみてください。呪文の意味がわかります。

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