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発見

 〈探査〉を始めて2日経ったが、まだ手がかりの欠片すら見つからない。

 そんなに早く見つかるとは思ってはいないが、あのゴツトツ王国軍の行進を見てからは焦りが止まらない。ヴァイスやクリスティアンが、そしていつもランドシャフトに来てくれていた防衛隊の面々が、あの強大な軍と戦うことを想像してしまうと心の底をグッと掴まれたような気持ちになってしまう。

 とにかく早く見つけなければ……。


 ゴツトツ国王都では、以前から潜入していた工作員が隠れ家を用意してくれていた。

 さらに彼等は、行商人として王城の門番に毎日昼食を売りに行っているという。準備は万端だ。

 僕は、見習い行商人として門番に昼食を届けに行く。そのときに〈探査〉で王城周辺を調べるのだ。


「おい、お前」

と門番に呼び止められたときはビビったが、

「明日は、肉は多めにな」

と言われてホッとしたことがあった。誰もこの王城を攻めてこない。門番にはそうした気の緩みがあるのだろう。それが勝機になるかもしれない。


 〈探査〉に重要なのはイメージだ。ヨネさんは、「お米のご飯が食べたい」と普段から思っていた。だから常に頭に米のイメージがあって、そのイメージが稲の発見につながった。

 だから、見ず知らずの人を探すのは難しいのだ。どんな顔か?どんな性格か?何もわからない。少しでもヒントがあれば……。


 カンさんもクレバーも「焦るな」と言ってくれるが、〈探査〉ができるのは僕とシャテーの数人だけだから、つい勝手なことを言うなと思ってしまう。


*****


 3日目の夜。クレバーが「焼酎を売っていたぞ!」と焼酎の瓶を買ってきた。

 この国でも流行し始めているらしい。

「また飲んでるの?観光に来てるんじゃないんだけど……」

 イライラしていた僕は、つい悪態をついてしまった。ダメなのはわかる。でも、心のモヤモヤが消えないのだ。


 カンさんが、僕の気持ちを察してくれたのだろう。そっと僕の肩に手を置く。

「悪かったな」

 その手が温かい。さすがに隊長として慕われていた人だ。

「僕の方こそ、ごめんなさい……」

「いや、タクが悪いわけじゃないよ。俺たちも何もできないもどかしさがあるんだ……。だから……」


 確かにクレバーも好きで何もしていないわけではない。それもわかる。

 あのゴツトツ軍の大軍が、僕たちの心を押しつぶそうとしてくるのだ。


 焼酎は、どれくらい売れているのだろう。話題を変えようと思って〈探査〉で調べてみた。かなりの店で売られている。それも繁華街ではなくて、広範囲だ。家庭でも飲まれているのだろう。だから瓶工場も忙しくなったのだ。


 そのとき突然ひらめいた。

 焼酎は、すぐに〈探査〉できた。対象が具体的でイメージしやすいからだ。

 それならば、”石鹸”ではどうだろう。


 僕の〈探査〉できる範囲は広い。シャテーの人たちが言うには、〈探査〉のようなスキルは魔力量の影響を受ける。同じ〈探査〉のレベルであっても、僕はシャテーの人たちよりも広い範囲の〈探査〉ができた。これは魔力量の差だと言うのだ。


 早速、石鹸で〈探査〉をしてみた。

 すぐに見つかったが、それはやはり王城だ。

 シャテーのメンバーにそれを伝えて見取り図で確認をする。

 彼等の中には、〈隠蔽〉〈侵入〉のスキルを持っている者がいる。王城に侵入して人質を捜してもいたが、そのときに見取り図をつくっていたのだった。


「ここは倉庫だ。すでに調べているが、人質はいなかった」

 シャテーのメンバーはそう言う。

「そうするとやはり外部だな」

「ああ、明日から周辺を〈探査〉してみる。石鹸を……」


******


 翌日から王城を離れて、王都の周辺部の〈探査〉を始めた。

 しかし、石鹸は見つからない。やはり、この国では石鹸は使われていないのだ。僕たちのようにムクロジやエゴノキの木の実を使っているようだ。


 その日も見つからずに帰ろうとしたとき、王城のすぐ外で石鹸が〈探査〉に引っかかった。しかも動いている。石鹸が動くはずはないので運んでいるのだろう。

 ということは、監禁場所に向かっているのだ。

 すぐにシャテーのメンバーに伝えて、僕は遠くから〈探査〉で尾行を開始した。


 石鹸は、3人の兵士が運んでいた。徒歩で、急ぐ様子もなく、山の方へ向かっていく。

 シャテーのメンバー、クレバー、カンさんも合流して追いかける。


 森に入り、さらにずんずんと進んでいく。王城からは15キロ以上歩いただろうか。さすがにここまでは僕の〈探査〉も届かない。

 日も暮れて、空には三日月が浮かぶ。


 森を抜けると、そこには湖があった。その畔の小さな建物に兵士は入った。まわりを柵で囲まれているが監禁するには小さい。それに守るのにはあまりにも弱そうだ。


 僕たちは見つからないように近くの丘に登った。そこから湖全体が見渡せる。

 湖の真ん中に小島あり、そこには洋館が建っている。貴族の別荘か何かなのだろう。


「あそこだ」

 僕たちは、全員がほぼ同時に直感した。

 僕が〈探査〉で調べると、洋館には28人の女性、30人の男性、そして子どもが18人いる。そして石鹸。

「やっと……。見つけた……」

 緊張が解けて全身から力が抜けていく。

 女性のうち8人が騎士の夫人で、その子どもが18人、あわせて26人で人質の数と合う。女性の20人、男性の30人は世話係と衛兵なのだろう。


「あそこから島に渡るようだな」

 兵士たちが入った建物は、船着き場だった。

「船着き場の周囲に衛兵の数は50人。船は、小さなボートが1艘だけだ」

 〈探査〉でわかったことを伝えた。

「ボートが1艘だと、何往復もする必要があるな」

「それが狙いなんだろう」

「筏でも作るか?」

「そんなことをしている間にバレるよ」

「確かにそうだな」


「まわりの森には、狼の群れが……、5つ。50頭は越えてます。熊も8頭ほどいます」

 さらに周辺を〈探査〉してみた。

「反対方向へ泳いでもダメか……」

「ああ、よくできている」


 確かに、監禁するには王城よりもいいかもしれない。

 クレバーですら、どうすればよいのか悩んでいる。


 そのときに思いついた。これならば王城よりも簡単かもしれない。

 そして、たぶんそれは僕にしかできない。


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