表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/100

クズの正体

 王都の風邪の感染が、ついに街へと拡大した。周辺の貴族の領地へも拡散しているという。


 幸い、村は人口が少ないせいか、まだ感染者はいない。

 しかし、街では、日ごとに感染者が拡大していた。


 あのお札を売っていた教会、薬らしきものを売っていた医者の周囲では爆発的に感染者が増えていた。

 感染者が増えれば増えるほど、教会やあの医者に殺到する。

 その中にはすでに感染している患者がいる。それで、あの密集ならば爆発的に感染が広まるのも当然だろう。

 教会だと、熱心な信者にはお年寄りも多い。心配にもなってくる。


 街では、隔離して手当のできる救護所を防衛隊がつくった。防衛隊と保安隊が協力して、そこにお年寄りや子どもなど体力のない感染者、貧しく栄養状態の悪そうな感染者を集めた。

 救護所で患者の世話をしている中で、何人かの隊員が感染したが、彼等は体力がある。感染したことで免疫もついている(免疫については僕が説明した)。回復した隊員が中心となって活動していた。

 救護所へ運ばれた患者には、様子を見ながら、水分と栄養のある野菜スープが与えられた。高熱の患者は、隊員が魔法でつくった氷で冷やした。それで症状がかなり抑えられたようだった。

 そうした対応で、救護所での死亡者はゼロにでき、みんな元気になって家に帰っていった。


 公爵領でも死亡者はゼロだった。

 当初、僕が教えたことを実行しない人たちが多くいたが、公爵家の執事が見回り、実行を徹底させたのだった。

 街と公爵領の感染者数が圧倒的に違う。そう感じた人たちは、僕の提案が正しかったことを理解してくれて、面倒だが手洗いなどをこまめに実行してくれていた。


 それが、近隣の貴族の領地へも広まっていき、犠牲者は王都よりもはるかに少なくできた。。


「タクのおかげだな」

 気になって公爵領を見に行ったときに、公爵様からそう声をかけていただいた。

 僕が特別に何かをしたわけではない。ただ僕の世界での常識を伝えただけなので、何か素直には喜べない気持ちだ。

「僕のいた世界でも、こういう感染はありましたが必ず終息しました。おそらく、そろそろ終息に向かうと思いますよ」

「そうなるといいな」

 公爵様はしみじみと言う。領民が無事だったのが、本当にうれしいのだろう。 


******


 ランドシャフトは時間を短縮して、人数を制限して営業していた。


「どうだ」

とヴァイスさんがやってきた。

「お客さんが少ないので、厳しいですが、しょうがないですよね」

「そうか。ちょっとおもしろい情報があるんだ」

「何ですか?」

「教会でお札を売っていたのと、治療薬を売っていた連中はな、あれはクルップ商会の連中だったんだ。感染したので助けてくれって救護所に20人くらいが来たよ。もちろん断ったがな」

「断ってよかったんですか?」

「だって、体力があって、元気なんだもの。熱が高くて咳もでていたが、死ぬことはないだろう。普段からいいものばかり食べてるんだろうな」

「そりゃそうですね」

 やはり、あいつらはクズなんだな。でも、どうすることもできない。そう思った。


「救護所に連れてこられたお年寄りに、お札や治療薬を信じた人が多かったんだ。だから、これから詐欺で捜査する予定だ。うまくいけばトップまでを引っ張れる」

「そうできるといいですね。僕に協力できることがあれば言ってください」

「ああ、そのときは頼むな」

 本当にあいつらは何とかしたい。この状況だから強く思う。


******


 しばらくして、王都風邪は、落ち着きをみせた。


 そして、驚いたことに王都にある教会本部が、クルップ商会を詐欺で訴えたのだ。

 僕たちの街では、販売されたお札に効果がなかったことで教会への批判が高まっていた。神様の救いがないのだとも言われ始めた。

 国民の信仰心が低くなることを恐れた教会本部が、その責任をすべてクルップ商会に押しつけようとしたのだ。


 そして治療薬を販売していた医者もクルップ商会を保安隊に訴えた。「騙された」と。


 でも、僕から見ると、彼等は同じ穴の狢だ。感染者の不安をあおり、それで金儲けをしたやつらだ。

 お札や治療薬を販売しているときに〈真実の目〉で見たら、真っ赤だった。つまりは嘘だと自覚していたのだ。


 保安隊が詐欺として捜査するようであり、しかもそれを訴えたのが教会本部だから、クルップ商会もこれで終わりだろう。


 そう思ったが、やつらはまだまだしぶとかった。保安隊の捜査の前に立ちはだかったのは、またあの王女だったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ