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レナータさんが

 ランドシャフト1号店を再開した。僕とレナータさんが主担当だ。そして村から何人かが交互に手伝いに来てくれることになった。仕込みには、ヨネさんも来てくれる。

 レナータさんには、〈料理B〉〈掃除B〉のスキルがあった。普通ならば、貴族の令嬢にこんなスキルはないはずだ。それだけ苦労してきたんだろう。


 1号店を僕が担当したのは、氷魔法を使えるようになったからだ。リアフさんから習って練習をした。

 公爵家に呼ばれるなど、僕がいないときは代わりに手伝ってくれる客たちがいた。

 防衛隊の面々だ。氷魔法が使える隊員が何人もいる。僕がいないときに氷を出してくれるのだ。しかも僕より強力だから、大量の氷を出し過ぎて、近所の店に配ったこともあった。

 そして、彼等がいてくれるおかげで1号店では客の暴力的なトラブルは皆無だった。


 レナータさんは、すぐに店の看板娘になった。

 美人だからというのはもちろんだが、誰にでもやさしく、気遣ってくれることが大きかった。

 飲み過ぎたお客の身体を気遣う。常連に足の悪いお年寄りがいるが、いつも手をとって席まで案内する。そうした一つ一つのことが、お客の心を打つのだ。

 自分が苦労してきたからだろう。弱い人にほど、細かな心配りをみせる。


「マジ、女神だ……」

 防衛隊の隊員も全員がレナータさんを推している。酒を飲みながらも、視線はレナータさんだ。

 特に推している隊員の一人が、副隊長のクリスティアンだった。20歳くらいで、若いがヴァイスに次ぐ実力者だ。


「レナータさんって、本当は貴族の令嬢じゃないの?」

 クリスティアンが僕に聞いてきた。

「そんなわけないじゃないですか。貴族様の令嬢が、こんな店で働くなんてありえないでしょう」

「そうだけど……。でも立ち方とか所作が貴族っぽいんだよな」

「そういうところで侍女みたいなことをしてましたから、身についたんですよ」

 レナータさんは、微笑みながらうまくごまかす。きっと僕も彼女も〈真実の目〉で見たら、真っ赤なんだろうな。


*******

 

「よう!」

 1号店に、公爵様が来た。バルドリアンも一緒だ。

「いらっしゃいませ。お客様だから敬語でいいですよね」

「しょうがないな、まず酒をくれ。ああ、やはりこの店の方が落ち着くな」

 公爵様にとっては2号店は変装が必要で落ち着かないらしい。

 レナータさんに酒とつまみを適当に運んでもらう。


 しばらくして公爵様から呼ばれた。

「あの子か?」

 公爵様が聞いてきた。

「ええ、そうです。評判はいいですよ」

「ああ、ずっと見ていたけど、いい気配りができている。なかなかできることではないな」

「そうなんです。だからファンも多いですよ」

「そうか。それじゃあ、いい話があったら言ってくれ」

「いい話ですか?」

「にぶいな……。結婚だよ、結婚。そういう相手がいたら、言ってくれ。俺の養女にしてやる。あの元子爵の娘だと障害もあるだろう。俺の養女になれば問題ない」

「いいんですか?」

「ダメな理由があるのか?」

「ありませんよ」

「それじゃあ、遠慮無く言ってくれ。幸せになってもらいたい」

「ありがとうございます」

「お前が礼を言うことじゃないだろう」

 そう言って、公爵様は笑った。


*******


 しばらくしてのことだった。


「あっ、お客様の忘れ物。出たばかりだから届けてきますね」

「よろしく。気をつけてね」

「はあい」

 そう言ってレナータさんは外に飛び出していった。


 ところが、しばらくしても帰ってこない。

「おかしいな」

 僕は、〈探査〉を使ってみた。しかし、数百メートル四方にはいない。おかしい。

「レナータさんがいなくなった。防衛隊に行ってくる」

 店の手伝いに来てくれている人にそう告げて飛び出した。


 防衛隊の詰め所は歩いて10分。全力で走った。ここのところ運動はしていない。息が切れる。それでもがんばって走った。


 詰め所にはヴァイスさんはいなかったが、クリスティアンが残っていた。

「レナータさんがいなくなった!」

 僕はそう告げると血相を変えて飛び出して来た。何人も隊員が後に続いてくる。

「忘れ物したお客さんがいたので、届けに出たのに帰ってこないんだ」

「いつだ」

「15分ほど前だ」

「全員、出動だ。すぐにレナータさんを探せ。徒歩隊は店の周囲を、騎馬隊は、広範囲を探すんだ」

「はいっ」

 続々と隊員が飛び出していく。

「タクも一緒に来るんだ。乗れ」

と騎馬に乗せられた。馬に乗るのは初めてでクリスティアンにしがみついた。


 数十分走り回ったが、見つからない。途中ですれ違った何人もの隊員に確認したが見つかっていないという。

 心配だ。大丈夫だろうか。

 いったん、防衛隊の詰め所に戻る。


「どうだった?」

「いや、見つかりませんでした」

 隊員が口々に言う。

「王都でも若い女性が消えているという噂がありましたが……」

「まさか……。縁起でもないことを……」

「すみません。心配で……」

 隊員の誰もが心配してくれている。しかし、一人だけ心配そうにしているが、そうでない隊員がいた。薄ら笑みをうかべている。どうしてだろう。


 僕は、〈真実の目〉で彼を見た。赤い。真っ赤っかではないが、かなり濃い。


「情報を整理してみましょう。どっち方面をまわりましたか?」

 僕は、一人一人にたずねていった。誰も嘘を言っていない。あの怪しいと思った隊員もだ。

「王都方面でも見つかりませんでしたか」

 もう一度、その男に聞いた。

「いや、残念ながらいなかった」

 真っ赤だ。


「王都方面です」

 僕は言った。隊員に気を遣っている場合ではない。

 クリスティアンも察してくれた。

「急げ、まず騎馬隊だ」

 クリスティアンは、もう一度僕を乗せて、王都方面へと向かう。

 嘘をついた隊員は、うろたえるばかりだ。なぜバレたのか不思議でしょうがない。そういう感じだ。


 騎馬隊は、10名ほどで王都方面に向かった。

 クリスティアンの馬は、すばらしく。僕を乗せているにもかかわらず、他の隊員の馬をぶっちぎってしまって独走状態だった。


 王都までは一本道。寄り道していなければ、必ず見つかる。

 しばらく走って行くと、一台の馬車が見えた。こんな深夜だ。怪しい。


「止まれ!!防衛隊だ」

 クリスティアンが声をかけると馬車は止まった。


「中を改めさせてもらうぞ」

 馬車の扉を開こうとする。

「待て」

と馬車の上から声がかかった。馬車の御者は兵士のようだ。

「我々は、王子直属の近衛兵だ。下がれ、無礼者が!」

 髭を生やした偉そうな兵士が一喝した。


 近衛兵?、王子直属?いったいどういうことだ。

 なぜ、ここで王子が出てくるのだ?

 レナータさんは……?


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