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パーティは大波乱

 酒類販売公社総会が、ザラブ子爵の屋敷で開かれた。

 公社の会計報告では、王女に800万円が支払われるという。顔色一つ変えない王女だ。でも、心の中はどうだろう。


「うちの支払いはどうだ?」

 クレバーが聞いてきた。

「先月までの絵本とカードの売上で、まとめて300万円の支払い。負けてますね」


 僕とクレバー、そしてセシリア、リアフさん、レナータさんまで、会場で給仕として控えていた。子爵家の使用人にはレナータさんを応援してくれている者も結構いて、今回は協力してもらってうまく潜り込めたのだ。

 ホントは、潜り込むのは僕とクレバー、レナータさんまでと思っていたが、おもしろいと聞いて、セシリアとリアフさんもついて来た。

 

 総会が終わって、パーティが始まった。

 僕とクレバーは、お酒をつくる係だ。貴族が多いので、葡萄酒がメインだが、酒類販売公社のパーティとあって焼酎も多い。二人で焼酎の水割りやレモンなどを絞ったカクテルっぽいものをつくる。

 リアフさんも氷をつくって、セシリアとお酒の準備をしていた。レナータさんは、その後で目立たぬようグラスの準備などをしていた。


「何をしてるんだ」

 僕たちに気づいて公爵様が声をかけてきた。

「公爵様こそ……」

「俺は、この公社に監査を出しているから、身内みたいなものだからな、招待されるだろう」

「そうですけど……」

「何を企んでるんだ」

 僕の耳元でささやく。

「企みも何も、これから起きることを見学に来ただけですよ」

「これから起きること?」


「何を食べさせるの!!!!!」

 メサリーナ王女の声が響いた。その声の矛先はザラブ子爵だ。

「いえ、王女殿下が好物だと聞いたもので……」

 王女は怒り心頭で、手にしていたフォークをザラブ子爵に投げつけた。フォークは子爵の頬をかすって後の壁に刺さった。

「惜しいっ」

 それを見たクレバーがつい口にした。確かにあたればよかった。


 王女は、会場を飛び出していく。

「何があったのだ」

 参加者は口々に言うが、まだ真相はわからない。

 会場がざわつく。


 王女が戻ってきた。怒りで顔は真っ赤。口のまわりを手で拭っている。

「カエルを食べさせるなんて、信じられない。すぐに吐いてきたけど、まだ気持ち悪いわ」

 そう言って酒をあおって口をゆすぎ、近くにあった容器に吐き出した。

 王女らしからぬマナーだが、そう言ってはいられないのだ。

 それを聞いた会場の人たちが出口に殺到した。おそらく吐きにいくのだろう。


「いえ……、でも……、王女殿下が好物と聞いたのでご用意したのですが……」

 必死に弁明するザラブ子爵。

「そんなことあるわけないでしょ。カエルみたいな顔をして……。屋敷でカエルを養殖?そんな気持ちが悪いところにいたくないわ。もう帰る。もう顔もみたくない。公社は解散。お金だけ送るように」

 そう言い捨てて、王女は会場を出て行った。


「なんてものを食わせるんだ」

 会場に戻ってきた貴族たちが口々に言う。泣いている女性も数多くいた。

 貴族たちは、王女をみならってナイフやフォークを投げつける。皿まで飛んできた。こんなときは執事が身を挺して守るのだろうが、誰も守ろうとはしない。

 そして、ほとんどの参加者は、怒り心頭で会場を後にしていった。


 その中、力が抜けて、床に座り込んだザラブ子爵が、呆然と天井を見つめていた。


「何をやったんだ」

 おもしろいことがおきると聞いてはいたが、なぜこうなったのか、僕は、クレバーに聞いた。

「ああ、レナータさんから、カエルの養殖の話を聞いて、ちょっと仕組んだんだ」


 クレバーは、王女がカエルが好きという記事をでっち上げたニセ新聞を印刷工房でつくってもらって、子爵家の協力者に子爵の目につくところに置いてもらった。そして、こちらに協力してくれる侍女や執事から、”ギリギリまで内緒にして、王女殿下にサプライズをしましょう”と子爵の耳に入れてもらったそうだ。

 それを子爵が信じた。子爵もカエル料理が好きだから、食べればわかってもらえる、誰もが好きだと思ったのだろう。

 でも実際は違った。

 美味しかったのかもしれない。王女から「これは何?」と聞かれて、自信満々で「カエルです」と答えたのだろう。その後は、見ていた通りだ。


「その侍女や執事さんは大丈夫なの?責任を取らせるとか……」

「もう辞めたから大丈夫。あの子爵だからみんな辞めたくて、喜んで協力してくれたよ」


「大成功でしたね」

 レナータさんも大喜びだ。今までのことを思うと、思い切り溜飲を下げることができた。

 公爵様も、クレバーの説明を聞いて笑っている。

「なかなかいいものを見せてもらった」


 ただ、実際に振る舞われた料理はカエルではなくて鶏肉だった。セシリアもリアフさんも、そしてレナータさんも、関係の無い参加者に食べさせるのは忍びない、と言うからだ。

 レナータさんに協力してくれる料理人が、そこはうまくやってくれたのだ。


 パーティは、大混乱のまま、中断となった。

 僕たちが後片付けに追われる中、子爵とクルップ商会の面々だけが、やけ酒をあおっていた。


******


 王女が酒類販売公社を抜けたので、王家の後ろ盾もなくなり、強制力がなくなった。

 元通り、手数料なしに酒の取引ができるようにもなった。


 ザラブ子爵も王女の後ろ盾がなくなり、今までやってきた悪事が次々と暴露されていった。

 ベアル男爵のときと同じように、今回も王家の対応は早かった。子爵は降爵で、男爵となった。領地も大幅に削られ、財産の多くも没収されることとなった。

 ただし、今回はそれが王女の懐に入ることになった。


 それには、ルイーゼさんが王女を唆したことが大きかった。

 レナータさんのこともあってルイーゼさんもザラブ子爵をなんとかしたいと思っていた。そこでクレバーの策略にのることにした。通常ならば子爵家で開かれるパーティに、あの王女がいくわけがない。ルイーゼさんがうまく取りなしてくれたことが大きい。

 そして、パーティの後にクレバーがとりまとめた子爵の悪事を見せて、

「今度は、王様、王子様に取られてはなりません」

と、子爵の財産をいち早く押さえるようにも進言したのだった。


******


 これで、焼酎をめぐっての騒動は一段落した。

 これから焼酎は王国全体で自由に販売されるようになる。その意味でも、一番儲けたのは公爵様だろう。


 でも公爵様は、

「俺は、もう金はいらん」

と言って、福祉にまわしている。やはりすばらしい人だ。


 王女とは、しばらくはつかず離れずの関係でいきそうだ。会う度に、あのクズ発言を聞かされてはいるが、僕を勝手に召喚した王子をなんとかしたいと思うと、王女が必要にもなる。毒をもって毒を制するのだ。


 ランドシャフトは順調で、酒類販売公社が解散したので、街の一号店も復活することにした。ここでは、レナータさんが頑張ってくれるのだが、彼女をめぐって新たな事件が起きるのだった。


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