魔法を教えて
ランドシャフトを再開した。
「やってる。やってる」
「ああセシリアもいるぞ」
常連も戻ってきてくれた。
防衛隊のメンバーも、また来てくれた。
僕は、そのテーブルに向かった。
「ヴァイスさん、ちょっと相談があるんです」
「ん?何?」
「ここではちょっと……」
「ああ……。それじゃあ明日の昼でも来ようか」
「ありがとうございます」
******
翌日のお昼にヴァイスさんが来た。
「それで何?」
「魔法を教えてもらいたいんです」
「魔法を?お安いご用だけど、どうして?」
「もっとみんなの力になりたいんです」
「いや十分力になってるだろう」
「それでも、クレバーのように頭はまわらないし、カンさんやヴァイスさんのように力もない。セラーのように物を売って村や孤児院に役立つようなこともできないし……」
「いやいや、タクの貢献はどれほどあると思っているの。今、みんなが結びついているのもタクのおかげだよ。おそらく、そういうスキルがあるせいだとも思うけど、タクが信頼している人は信頼できるんだ。そうじゃなかったら防衛隊の俺とクレバーが一緒にいるなんて絶対になかったはずだよ。タクのおかげで安心して一緒に活動ができる。それが一番大きいんじゃないのかな」
そう言われてうれしくもなったが、
「それと、僕たちに危険があるかもしれないってクレバーが……」
「あの事件に関係してか?」
僕はうなずいた。
「そういうことなら、覚えておいた方がいいな。それじゃあ、今からやるか」
「はいっ!」
ヴァイスさんは、防衛隊の中でも一番の魔法の使い手だ。魔法に関してはカンさんも太刀打ちできないらしい。
二人で、店の裏にある作業スペースに行く。ここならば誰もいないし、そこそこの広さもある。
「それじゃあ、はじめるぞ。まず、魔法についてどれくらい知ってる?」
「いえ、全然です。リアフさんが氷魔法を使っているのはよく見てますが……」
「そうか。魔法は、基本的には誰でも使える。ただし使いこなすにはそれなりの鍛錬が必要だ」
僕はうなずいた。
それからヴァイスさんは魔法についての説明をしてくれた。それを前の世界のイメージで考えてみた。
魔法というのは、誰でも使うことができる。例えば、ボールを投げることは誰でもできる。でも、160キロのボールを投げるには、かなりの練習が必要だ。それと才能も。そして速さだけでなく、コントロールもそうだ。
160キロのボールを投げる才能があっても、練習しなければ投げることはできない。当たり前のことだ。魔法もまったく同じだ。
何の練習もしなければ、例えば火魔法は、指の先に1ミリほどの赤い光ができる程度で、水魔法は汗が出たのと変わらないくらいらしい。
「まず、これを覚えてくれ」
と紙に文字を書いて渡された。それには見たこともない文字で書かれていた。
ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਵਿੱਚ ਮੈਨੂੰ ਅੱਗ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਦਿਓ
「火魔法を発動するときに使う呪文字で”聖霊の御名において 火の力を与えたまえ”という意味だ。ずっと昔に使われていた文字らしい。魔法は聖霊の力を借りるから、まずこれを唱えることになる」
「発音がむずかしいですね」
「そうだ。そんなに簡単ではないからな。とにかくこれを練習すること。そしてできればこの文字も覚えてくれ。うまく使えるようになってきたら、唱えなくてもこの文字をイメージするだけで魔法が発動するようにできる」
「見てろ」
ヴァイスさんが呪文を唱えると、目の前にソフトボールくらいの火球が現れた。
僕は、真似をして何度もその呪文を繰り返し唱えた。それでも魔法は発動しない。
「微妙に発音が違うみたいだな」
ヴァイスさんのアドバイスでもう一度呪文を唱えてみた。
すると僕の目の前にバスケットボールくらいの火球が現れた。何の音もなく、フワッと現れ、浮かんでいる。しかも無茶苦茶熱い。顔をやけどしそうにもなったが、数秒で消えてしまった。
初めての魔法の発動に、身体が震えるのを感じた。
「すごい。相当の魔力量だな。タクはすごいスキルをもっていると聞いてたから、魔力も多いと思っていたが、これほどとは……」
「そんなにすごいんですか?」
「ああ、初めてでこれだけできるなら……。魔力量だけなら俺以上かも。訓練次第でもっと大きくできるようになるぞ」
「ほんとですか。それならがんばらなきゃ。もっと大きいのを出しますよ」
「いや、大きくするより、まずコントロールすることだ。小さい火球を作る練習を毎日続けろ。大きさを自由にできるようになると次のステップだ」
「でも、どうやってコントロールをするんですか?」
「口で言っても難しいが、イメージすることだ。大きさをイメージしながら何度も繰り返すことで、身体が覚えてくれる」
「わかりました。毎日やります」
「ああ、ただ魔力切れには注意しろよ。疲れたと思ったら、回復するまで練習するんじゃないぞ」
ヴァイスさんは、いくつかのアドバイスをくれて、練習は終わりとなった。これから時々、お昼か開店前に立ち寄ってみてもらえることにもなった。
******
それから毎日1時間ほど魔法の練習に取り組んだ。かなり疲れるけど、できるようになるのはうれしかった。
魔法の練習がおもしろくなってきたので、ランドシャフトの開店準備中にリアフさんにも魔法について聞いてみた。
「リアフさんはどうして氷魔法が使えるようになったの?」
「私の場合は、生まれたところがほんとに田舎だったから、まわりに子どももいなくていつも一人だったの。近くのおじいさんに呪文を教えてもらったら、小さい氷ができて、それが楽しくて、毎日やっていたら、できるようになったわ。おもちゃなんてないから、氷のウサギとか、氷の人形とか、自分で氷で作って遊んでたら、今くらいになったのよ」
といって、さっとかわいい氷のウサギを作って見せた。
氷魔法が珍しいのは、毎日使うということがないからだそうだ。火や水は毎日使うこともある。氷魔法は、夏は使っても冬に使うことは減るので、だんだんと力が衰えて、夏になったとき、また一から始めるのが面倒になるみたいだ。
スポーツをやっていても、やらないと体力も落ちていくのと同じようなことらしい。
リアフさんは、毎日お店で氷を作っているので、またレベルが上がってきているようだ。
*******
魔法の練習を初めて1週間が経った。
クレバーからは何の連絡もない。気にはなるが、僕にできることはないから魔法の練習をして過ごすしかなかった。
また昼にヴァイスさんが立ち寄ってくれた。
そこで、練習の成果として大きさの違う火球をいくつも、いろいろな場所に作って見せた。
「ここまでできれば上出来だな。それじゃあ次のステップだ」
「何をするんですか?」
「使い方だ。火魔法を普段の生活で使う程度はもうできるだろう。でもそれは、戦闘での使い方とは全然違うんだ。今日は、その初歩を教える」
「水魔法とか氷魔法は、まだ使えないんですが……」
「それはまだいい。基本の火魔法の初歩の使い方を身につければ、あとは水魔法とかは呪文を覚えるだけだから、そう難しくはないんだ」
「わかりました」
「実は、魔法は戦闘向きではないんだ。俺と隊長と戦うと、呪文を唱える前に槍で串刺しになってしまうんだ。それに火魔法で即死まではなかなかいかない。やけどをさせるよりも剣で首を落とす方が確実だろう」
僕はうなずいた。
「魔法攻撃の利点は遠距離だが、それもスピードとコントロールが必要になる。遅いファイアーボールなんて、避けられてしまって何の意味もないんだ」
「そうなんですね」
「俺たちくらいになると、いろいろな技や使い方があるけど、初心者には無理だ。それで初心者に一番役立つのが防御だ」
「防御ですか?」
「ああ、危険があるかも、と言っていたよな」
僕はうなずく。
「そのためにもまず防御を身につけるんだ」
「魔法は、基本ができるとアイディア次第でいろいろとできるようになるんだ。いきなり剣で斬りかかってきたとき、タクならどうする?」
「とりあえずファイアーボールを投げつけるんですか」
「そうじゃない。相手との間に小さな火球で壁をつくるんだ」
「なるほど」
「相手をそれで囲んで、動けなくして保安隊を呼んでもいい。それが確実で安全だ。倒したいならその囲みを少しずつ狭めていけばいい。それで相手は大やけどだ」
それから防御のための応用を教えてもらっていった。
でも、さっきの話を聞いてヴァイスさんの攻撃の技が見たくてたまらなくもなっていった。なんとかその技を見せてほしいと頼み込んだ。
「ファイアーボールを飛ばすのは風魔法だ。両方を発動するのが面倒なんだ。遅くもなりやすい。あたってもやけど程度だ。それで……」
ヴァイスさんはピンポン球くらいのファイアーボールを放った、そこそこ早い。それが的にしていた鉄板に穴をあけてしまった。
「大きいファイアーボールの熱量そのままで小さくすると高熱になるんだ。鉄を溶かすくらいの。小さいとスピードも上げやすいし、高熱なんで鉄の盾くらいは貫通するよ。それから……」
上を見上げると、大きな氷柱ができていた。先がするどく尖っている。それが大きな音を立てて落ちてきた。土煙があがり、ビリビリと空気が揺れる。破壊力のすごさに声も出ない。
「氷魔法も攻撃向きではないんだ。氷をぶつけられても痛いくらいだよな。それを上から落とすと、重さもあって威力は抜群になるんだ」
あらためて魔法のすごさがわかった感じがした。
こうした技の多くは、ヴァイスさんのオリジナルだそうだ。見ただけでは誰も真似できない。魔法をコントロールするための呪文が必要なので。それを見つけ出すのが難しいらしい。
「水魔法も、バケツで水をかけれられても平気だよな。じゃあ、どうするか。いろいろと考えてみな」
と難しそうな宿題もだされてしまった。
それから、
ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਵਿੱਚ, ਮੈਨੂੰ ਪਾਣੀ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਪ੍ਰਦਾਨ ਕਰੋ.
ਪਵਿੱਤਰ ਆਤਮਾ ਦੇ ਨਾਮ ਵਿੱਚ, ਮੈਨੂੰ ਹਵਾ ਦੀ ਸ਼ਕਤੀ ਪ੍ਰਦਾਨ ਕਰੋ
水魔法と風魔法の呪文字を書いて渡してくれた。
「とにかく練習だぞ」
「ありがとうございます」
あの詐欺事件以来、いろいろと不安もあったけど、魔法のおかげで自信もでてきた。
そんなふうに魔法の練習をしていると、クレバーがやってきた。
「準備は完了した」
ブラウザで翻訳ができる方は、翻訳してみてください。呪文の意味がわかります。




