クズだらけの世の中
現代の日本はクズだらけ。
裏金をつくる政治家、ブラックで働かせる会社……。
でも、僕たちには何もできない。
でも、それが異世界ならば……。
※
この舞台は我々が住む地球とは異なりますが、わかりやすくするため、時間や距離、長さ、重さ、そして通貨などの単位、名称はなどは地球のものに翻訳してあります。ご了承ください。
〈世の中クズばかりだ〉
ずっと思っていたことだ。絶対に間違っていない。
クソ親父は、僕を数字でしかみない。テストの点、偏差値、学校での順位。それだけだ。
「父さんのように良い大学を出て……」と偉そうにも言う。
でも僕は知っている。
愛人がいること、それも若くて美人ではなくて、近くの飲み屋のおばさんだ。
会社でも仕事ができず窓際らしい。夜中に母さんと言い合いしているのを時々聞く。
その鬱憤を僕や母さんに向けているだけなのだ。
僕と言い争って、論理で負けると、人格攻撃と暴力に訴えるしかない。
そんな小さなやつだ。
母さんもクソ親父と同じだ。数字だけでなく、他人との比較でしか僕を見れない。
「○○ちゃんは……」と誰かとの比較が息をするように出てくる。
クソ親父の愛人のことを知っているのに、何もできない。そして僕に当たり散らす。
めんどくさくて料理をしないから、夕食のおかずがないこともざらだ。そんなときはふりかけだけでご飯を食べる。
学校もそうだ。
「こんな偏差値だとろくな大人になれないぞ」
点数と偏差値でしか生徒を見れない教師。
(いや、先生の出てる大学の偏差値よりは高いんだけど……)
それをずっと言いたいと思ってた。
その教師も、校長、教頭から、難関校への進学者数で評価されている。
教育と言いながら、商売だ。
「フォロワーが5000人を越えたぜ。お前なんかとはレベルが違うんだよ……」
SNSのフォロワー数でマウントをとってくるやつ。
それも彼女のパンチラ、胸チラで稼いだだけのフォロワー数だ。お前の価値ではない。
いじめられてはいないが、そんなやつらばかりの学校には、もううんざりだ。
唯一、僕と普通に接してくれているのが、幼なじみのエリカだった。
「タクはやさしいね」
僕を数字以外で見てくれる。
昔から、エリカのことは好きだった。
でも、エリカには彼がいる。かわいくてスタイルも性格もいいから当然のことだ。
彼を紹介されたことがあるが、いい奴で、これならエリカをまかせてもいいとも思った。
でも、後から知ったのは、彼が二股どころか、五股をかけていた。
本当にみんなクズだ。
そして、エリカの彼が五股をかけていても、それをエリカに言わない僕もクズだ。
告げ口をしたようで、エリカに嫌われるのが怖いのだ。
エリカの幸せよりも、自分を守ることを選ぶ。
僕もそうしたクズなのだ。
それでも、クズの自覚がある分、他のやつらよりはずいぶんとましなはずだ。
家も学校もクズだらけ。もうすべてが嫌だ。
家出をしようか、それとももっと遠くへ……。
そのときだった……。