いつもの解熱鎮痛薬でアナフィラキシーショックを起こして救急搬送された話
タイトルは解熱鎮痛薬ですが、本文では文脈の都合上「鎮痛剤」となっています。
使用目的にあわせて鎮痛のみの表記としていますが、わかりにくかったら申し訳ないです。
アナフィラキシー、近年よく聞くようになってきましたね。
それでも実際に体験した人は少ないんじゃないですかね、きっと。
確率は少ないにしても誰にでも起こり得ることなので、一体験談として興味がある方は聞いてくださいな。
当時わたしは非常に生理痛がひどくて鎮痛剤をよく使っていたんですよ。
脂汗を流しながら土下座スタイルで最近やった小さな悪事を懺悔するくらいには痛かったですね。
そしてお腹も必ず壊すのが定番の症状でした。
その夜も痛みで眠れないので鎮痛剤を飲んで寝ようとしていました。
するとしばらくするとお腹周りやら、太ももの裏とかが痒くて余計に眠りづらくなりまして。
アトピー性皮膚炎があり、場所も同じだったので「アトピー痒いなー。でも、電気つけて薬塗るのは面倒だな」と放置して何も見ずにそのまま眠りました。
翌朝、強烈な腹痛で目が覚めました。
仕事も休みだったし、10時過ぎくらいでしたね。
起きるなりトイレに行くとお腹を壊して…まぁ下痢ですね。
いつもの生理の症状だしと痛いなりにそう思っていました。
下腹部が痛かったのですが、下痢の痛みなのか生理の痛みなのかが判断がつかず。
そしておそらく生理痛かなと追加で鎮痛剤を飲んでしまいました。
空腹時の鎮痛剤は胃に負担もかかるので避けるべきなのですがね、痛くてつい飲んでしまいました。
どうしてものときは多めの水で飲むか、薬の前に牛乳なんかを一杯飲んでからにしましょうね。
鎮痛剤を飲んで数分後。
猛烈な腹痛と吐き気で再びトイレへ。
吐いて下痢してを何ターンか繰り返した頃にはぐったりしていました。
汗びっしょりでした、2月だったのに。
とりあえず嘔吐と下痢は落ち着いたものの、腹痛はまだ続きます。
お腹もゴロゴロいっているので、またトイレに行くかも…と油断できない状態で30分ほど経過。
時刻は10時半。ある程度、痛みが楽になったら身体がちくちくしてかゆいことに気付きました。
お腹、太もも、二の腕あたりです。
服をめくってみるとお腹に蕁麻疹が出ていました。
人生初の蕁麻疹だったので、「これが聞いたことはある蕁麻疹であっているのかな?」と調べたりもしました。
蚊に刺されたみたいな膨れ方をしますが、形が楕円形だったり、円と円が繋がったようないびつなことが特徴です。
お腹全面がそうだったので、全身を確認しなくては!と服を脱いだら背中、太もも周りに二の腕とけっこうな範囲に蕁麻疹が出ていました。
こいつはさすがにやべーなと思いました。
「これは薬の副作用では?」と箱から添付文書を出しました。
下痢、嘔吐、蕁麻疹…全部、副作用として載っていました。
アナフィラキシーも記載はありましたが、全身の蕁麻疹と喉が腫れて呼吸困難になるイメージが強くあったので「アナフィラキシーではないけど、早めに病院に行かなきゃな」と思いました。
しかし、我が家の車は一台。
どうやら母が買い物に行っているようで、車がない。
最寄りの内科までは元気なときに早足の徒歩30分。
この体調では40分以上はかかる見込み。
あと、いつ下痢するかわからないから徒歩は諦めた。
母に連絡を取ると12時くらいまで帰れないとのこと。
時刻は11時。
1時間くらいなら、タクシーをつかってまで行かなくていいかなと待つことにします。
その間も、蕁麻疹が広がっていきます。
かゆいというより、ちくちくと痛かったです。
冷やすとよくなるという情報を見て、とりあえずタオルに包んだ保冷剤で冷やしました。
顔、ふくらはぎ、腕全体、首から胸と全身に蕁麻疹が増えていきました。
「蕁麻疹、怖…。そして腫れとまだらに赤い顔がだいぶヤバいし、これ治るよね?!」と、けっこう心配になってきました。
11時45分。母帰宅。
帰宅早々で悪いが、腹具合も相変わらずヤバそうなので鎮痛剤の箱と添付文書を持って病院へ連れて行ってもらいました。
11時55分。最寄りの内科に到着。
受付の方に添付文書を渡して症状を説明しました。
問診票を書いている途中で、なぜか診察室から先生が出てきました。
そしてわたしを見るなり「ここまで全身に蕁麻疹が出ていると、ここでの処置はできないからかかりつけの皮膚科はある?」と。
幸い、この内科から歩いて5分としないところにかかりつけの皮膚科はあるのでそう伝えました。
すると先生は「今すぐ行けば12時までの午前の診療に間に合うから、ここを出たらすぐ行きなさい」と。
あとになって思えば「今すぐ」を強調されるので、早急な治療がこの時点で必要だったんでしょうね。
受付の方々も向こうの病院に電話しておくから、治療もしていないし支払いはいらないからすぐに行って!と送り出してくれました。
先生、診察してくれたのに…と感謝と申し訳なさがありましたが、お礼を言ってすぐに皮膚科へ向かいました。
ギリギリ12時に皮膚科に到着。
「○○内科からお電話があったと思うのですが、この薬を飲んだら蕁麻疹がでました」と添付文書も渡しながら受付の方に言いました。
「では添付文書のコピーをとらせてください。まだ午前の診療の患者さんも残っているので午後の受付になります。午後の診療開始時間も午前の患者さんが終わってからなので、遅れることがあります。それでよければ午後で順番を取るので名前を書いてまた来てください」と。
内科では急ぎでって感じだっんだけど大丈夫なのかな、たぶん。
午後は14時から診療開始。
すでに6人待ちの様子。
自然に治る気配もないし、待ってでもやっぱり診てもらわないといけないので予約を取って帰宅しました。
帰宅後。とりあえず、水分補給だけはしました。
食事はなんとなく摂らないままのほうがいいかと思って…血液検査とかあるかもしれないし。
ただ蕁麻疹の痛みもひどくなり、見た目もさらに悪化してぐったりとしてきます。
わたしの様子がおかしいと言う母に診療開始より少し早く行こうと病院へ連れて行かれます。
返事こそするもののぼーっとしているので、そのまま院内まで付き添われます。
受付の方からはやはり順番まで待つように言われるので、素直に待とうとするも母が強かったです。
「○○内科からすぐに皮膚科に行ってくださいと言われているんです。様子もどんどんぐったりしていっています。先生ではなく看護師さんを呼んで、話を聞いてもらうこともできませんか?」と。
なんかこう…渋々といった様子で看護師さんを呼んでくれました。
看護師さんに添付文書…現在出ている症状にマーカーで印をつけていたものを渡します。
いつから症状があるかなどのいくつかの質問のあと「すぐに先生に診てもらいましょうね」と診察室へ案内されました。
病状によって順番が変わることがありますとの貼り紙はありますが、いざ自分がいきなり診察となると申し訳なさがありました。
時刻は14時、診察開始。
「ここまで全身に広がった蕁麻疹では内服の薬が必要です。ちょっと強い薬なんだけど肝臓が悪いとかはない?」
肝機能の数値は健康診断でいつも良好そのものなので、大丈夫と伝えました。
「心配だから明日も来てほしい」と、とりあえず今日の分の内服薬と塗り薬が処方されることになりました。
処置室で塗り薬を看護師さんにつけてもらいます。
大量でした。
耳にまで広がっていたようで「え?そんなところまであるの?」とびっくりしました。
14時15分。
病院の一階にある調剤薬局へ薬をもらいにいきます。
処方箋を渡すときに、ぐらりと目眩がしてよろけました。
「すみません、ちょっと目眩がして…」と、薬剤師さんに伝えながらなんとか受付を済ませます。
母は「薬はもらってくるから車に行って、横になって待っていていいよ」と言ってくれましたが
「人気のあるところにいないといけない」「この状態で一人になってはいけない」と強く思ったのでそのまま待合室にいることにしました。
14時20分。
また猛烈な吐き気と腹痛がぶり返してきました。
吐き気はするものの朝から少量の水分しか摂っていないので、何も出ません。
足元がスポンジに埋まってバランスがとれないような、座っていても世界がぐるぐる回ります。
体験したことのない激しい目眩です。
呼吸も激しくなります。
息が苦しいし、吐き気がひどいからです。
汗が顔を伝いぽたぽたと垂れ、背中にも服が濡れるほど短時間でびっしょりと流れてとまりません。
手足も冷たく痺れます。
息が荒いから手足の痺れは過呼吸かもしれないから落ち着こうと思います。
それ以外は自分の身体に何が起こっているのかまったく分かりません。
目まぐるしく悪化する様々な症状。
尋常ではないその様子に「上(皮膚科)に電話して!看護師さんに来てもらって!」薬局内が慌ただしくなります。
だんだん強い寒気と眠気がします。
ガタガタ震えながら「寒い…眠い」と隣の母に訴えます。
視界が黒いものが増えていき、眠気に耐えられなくなると真っ暗になります。
はっと起きると見えるのですが、これはどうやら短時間、意識を失ったようです。
意識を失うとまずいと思うものの、すごく眠たく感じるのです。
14時25分。看護師さんの到着。
これだけ色々な症状が起きたのですが、あれらは全て数分の出来事です。
「先生のところまで連れていきます。立って!」
いや、立ってと言われても。
がくがくと体を揺さぶられていると感じる状態で、完全に平衡感覚がない。
足もグラグラで自力で真っ直ぐ立つことも不可能。
あと異常にやっぱり眠い。
「寝ないで!立って!」「頑張って!」
すごく励まされながら、両サイドを母と看護師さんに支えられてもまだバランスが全くとれません。
階段を登りながら、何度か視界が暗転します。
床がかなり近いので時折、意識がなくなる模様。
数段登っては休憩しながらだいぶギリギリの状態で歩き、ふと視界が暗転する直前に嫌な感覚がしました。
もらしたかもしれない。
それも大のほうを。
え?う○こをもらした?なんか熱かったもん、尻が。待って、今わたし30歳だよ?!この年でうん○もらすってヤバくないか?!
いや、ちょっと待て。失禁したかもしれないということはかなり意識レベルが低い。
肛門は自律神経の管轄だし、これが制御できないということは危険な状態なのでは。
生理中だからナプキンをしている。
仮に、もし仮にもらしていたとしてもダメージは少ない。
また失禁してさすがにバレたら恥ずかしいし、これは絶対に意識を保たないといけない。
当時、勉強したばかりの人体の構造についてが役に立ちました。
あと恥の概念ってすごいです。
急激に覚醒しました。すんごい勢いで脳内フル回転でした。
「休んだら動くのがつらいから」と言って、半分ほど残っていた階段をそのまま休むことなく登りました。
本当に人間ってやればできるもんですね。
そしてついに処置室にリターン。
ベッドに横になるよう言われて、せっせと靴を脱いでそろえようとしていたら「そのままでいいから!」と。
先生と看護師さんも3人。
医療スタッフ全員集合している。ねぇ、何この状況。
やっとで診察室に戻ってきたこのとき、いつの間にか顔の蕁麻疹はすっかりひいていました。
顔以外は服で見えないのでどうなっていたかわかりませんが、真っ青な顔色だったそうです。
「回復体位をとらせて」「血圧を計って!」
回復体位?と思ったら、足の下に枕を置かれて少し足が高くなる姿勢でした。
「血圧計測できません」「もう一回、計って」
え、何かすごく緊急事態の空気…。
覚醒してからだいぶ楽になってきているけど、言い出せない…。
「救急車を呼びます。血圧はまた計って」
ええ、2度目も測定不可だったみたいです。
「30歳女性、顔面蒼白。ショックを起こしています。救急搬送お願いします」
お医者さんが言うショックって、わりとヤバいやつじゃなかったですかね?
ドラマとか漫画で見たことある光景をまさか体験することになるとは。
「血圧、何で測れないんですか?」
3回も4回もずっと測定不可なんですよ、気になってつい。
「ちょっと血圧下がっているだけだからね。大丈夫ですよ」と安心させるように微笑んで教えてくれました。
ちょっと、下がっている。
たぶんちょっとどころじゃなさそうだけど、意識もあるし精神的には落ち着いていました。
幸いすぐに救急車が到着し、ここの病院の看護師さんも付添で同乗してくれる状態で搬送となりました。
「待合室の他の患者さんたちびっくりするだろうな、ごめん…」と、わりといたたまれない気持ちになりました。
「名前と生年月日は言えますか?」
と救急隊員さんに聞かれて「西暦と和暦のどちらで言えば…」と思わず聞き返してしまい「どっちでもいいです」とのことでした。
救急車初めて!とたぶん動揺していたせいで、変な質問をしたんだろうと思われます。
とりあえず両方答えたら「意識レベルクリア」とのことでした、リアルで初めて聞いたよ。
「トウコツ拍動なし」と、手首で脈が触れない様子で、搬送先に着くまで首で脈を測っていました。
「トウコツって何だろう…あとで調べよう」と思って後に調べた結果。
橈骨拍動と書き、やはり手首のところでとる脈拍でした。
血圧が80以下で触知できなくなるようです。
ちなみに首の頸動脈は60以下で触知しないので、当時は60以上80以下の血圧だったと推定されます。
基本的に90以下、もしくは通常より30以上低下したときがショック状態だそうです。
冷や汗、目眩、吐き気、悪寒、失禁などが低血圧でショックを起こしたときの症状としてありますが、コンプリートしてました。
そして搬送先の大きな病院に到着しました。
顔以外の、腕の蕁麻疹もほとんどこの頃には消えてきていました。
「治ってきたのな?」と思いながら病院へ入ったあたりまではしっかり覚えているのですが、そこから寝たのか意識を失ったのかは不明ですが全く覚えていません。
起きたら点滴が終わりかけていました。
多少痛かっただろうに、点滴のための針を刺された記憶すら残っていないんですよね…。
病院に着いた安心感があって、そこからの記憶がぷつんと途切れています。
まぁ、起きたら元気いっぱいでしっかり歩けましたので。
16時過ぎ。
「アナフィラキシーショック」との診断で、2週間分の内服薬とまだ残っている蕁麻疹への塗り薬が処方され無事に帰宅となりました。
長い1日でした。
診察が終わって即トイレへと行ったらやっぱり少し漏れていた。
その日1番の悲しみでした…。
ここで終わると思いきや。
深夜2時30分。
覚えのある腹痛にて起床し、やっぱりお腹を壊す。
そして太ももには蕁麻疹。
服をめくるとお腹と腕にも蕁麻疹が復活しているじゃないですか。
えぇ…もう深夜なんだけど。
ただ昼のショックを起こした恐怖から別室で寝ていた家族を起こして、搬送先の病院へ電話し受診していいかを問い合わせ…再度病院へ。
診察室に同じ先生がいました…夜勤だったんですね、先生のことも起こしてしまいましたね…。
注射の処置の後、帰宅。
頻度はそこまで高くありませんが二峰性反応といって、症状をぶり返すことがあるそうです。
今度こそ完全に症状は落ち着き、2週間の内服薬を飲みきったところで治療は終了となりました。
アナフィラキシーとは蕁麻疹といった皮膚症状、
口の中や舌、まぶたが腫れるといった粘膜症状のどちらか、もしくは両方に加えて
①呼吸困難といった呼吸器の症状
②腹痛や下痢といった消化器の症状
③血圧低下や意識消失といった循環器の症状
このうちのいずれか、もしくは複数の症状があることです。
重症の場合は低血圧や意識を失うといったことがあり、それをアナフィラキシーショックと呼びます。
なにが怖いかっていうと、前の日までなんの問題もなく使っていた薬で、量もちゃんと守って使っていたのに突然に発症したことですね…。
幸か不幸か病院でショックを起こしたので、スムーズに治療となりましたが
もし自宅にいたとしたら、家族が様子を見にこない限り自室に一人で倒れているままなんですよ。
それもパッと見はただ寝ているだけにしか見えないという。
まぁ、そうそうなることもありませんが薬を飲んで何か複数の異常があれば即受診で。
低血圧の症状もあれば迷わず救急車を呼んでください。
あとヤバいと思ったときは自分の直感を信じて遠慮はしないことも大事です。
わたしもあのとき調剤薬局に残る選択をしてよかったと…現役医師の兄も「人間、そういうときの直感はあたるから」と言っていましたね。
そんな一体験談でした。
ちなみに飴矢はその後、市販薬の説明・相談などが業務の登録販売者として働いています。
人体の構造の勉強は資格取得の受験のためにしていたんですよ。
身の危険を感じる解熱鎮痛薬には詳しくなって仕事上けっこう役立ってるし、ちゃんと成分名でNSAIDsは自力回避できるしで以降は倒れたりしていないです。
薬の箱に入っている添付文書、捨てないでね!
あと余裕があるとき読んでみてね。