プロローグ
書けたら更新のスタンスで、のんびりと。
どうぞよろしくお願いいたします。
「だっ、だだ、旦那さま、か、覚悟は、よよ、よろしいでしょうか!?」
「お、おおお、おう、もちろんだ、だ、だ、旦那さまに二言はないぜ、奥さま!」
ひゅおっ……と足元から風が吹いてくる。
目下、断崖絶壁の崖の上だ。夜空に浮かんでいた月は雲に隠れ、足先が蹴り落とした小石が、どこかへ不時着した音も聞こえない。
崖の下で、真っ暗な暗闇が口を開けて待っていた。
人一人がようやく通れるほどの幅しかない崖は、正真正銘、魔界の入り口のように思える。
だが、ここまで来たからには、引き下がるわけにはいかなかった。
エルシィはセオドアが迷子にならぬよう、しっかりと指先を組んで手を繋いだ。彼は多少面食らったようだが、代わりにエルシィの細い体を片腕に抱きしめる。
フードのついたローブを纏い、暗すぎて互いの目の位置が分からなくとも、息を吸い込んで頷きあった。
「行きますよ、旦那さま!」
「ああ、信じてるぜ、奥さま!」
二人、崖から空中へ躍り出る。
月のない夜空。星のない暗闇。
二つ分の悲鳴はすべからく、物語の幕開けを表していた。