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沈黙する母親と俯いてる私の間に気まずい空気が流れる。
時間は1分ほどなのに、ひどく長く感じる。
母親になんて言おうか、頭で考えるが、何も出てこない。
でも何か言わないといけないと思い、口を開くが、声が出ない。
この気まずい沈黙をやぶったのは母親だった。
「その服、どうしたの?」
なんで答えようか?
ゴスロリって答えるべき?
「ゴシックロリータって言うファッションだよ」
「そんな服持ってたっけ?自分で買ったの?」
「あ、うん、そう」
会話的にはなんとも思ってないように聞こえるが、お母さんの顔は、引いてるのを隠しきれていない。
「ま、まあ良いんじゃない?あ、あとご飯よ」
そう言い残して、いきよいよくドアを閉じて、階段を降りる音が聞こえた。
私はすぐに口紅をティッシュで拭き取り、服脱ぐ。
時間がかかって着た時とは違い、脱ぐ時はとても早かった。
服を脱いで、もと着ていたパジャマに着替えて、一階に降りる。
リビングに着くと、お母さんは、もう朝ごはんを準備し終わっていてた。
お父さんと朝ごはんを食べていた。
「玲衣、おはよう」
「お、おはよう」
さっきあんなことが起こったばかりなのに、お母さんは、いつも通りに話しかけてくる。
気まずいと思っていたのは私だけなの?
そう思ったけど、お母さんが私に声をかけたあとさっと目を逸らすあたり、やはり気まずいのかもしれない。
そんなことを考えてると、お母さんがまた私に声を掛けた。
「あとね、十時に家出るから支度しといて」
これまた唐突だ。
私はとりあえず頷いておく。
十時に家を出て、お母さんの運転する車の助手席に座る。
今朝のことがあったからか、とても気まずい。
お母さんは出かけると言っただけでどこに行くかはまだわからない。
「玲衣、お母さんね、あんたがどんな服着てもいいと思うよ。別にあんたの趣味を笑ったりしないからそんな気まずそうな顔しないで。ね。」
「うん」
そんな気まずそうな顔していただろうか。
私的にはいつも通りにしていたつもりだが。
お母さんがそういうならそうなのだろう。
それにしても急だ。
どうして急に出掛けようと言ったのだろう?
しかも出掛ける時、いつもいる父親の姿が車の中には見当たらない。
気になったから、聞いてみる。
「お母さん急にどうして、出かけるなんて言い出したの?あとお父さんは?」
「ん?それはね〜ちょっと自分の娘とデートしたくなっただけよ。だからお父さんは留守番。」
またどうして急に。
そうこうしているうちに、車は地下の駐車場で停車した。地下に入る前、窓から外を見ると、そこはあまり見慣れない、大きなショッピングモールだった。
私たちは車を降りてモールの中入る。
私はお母さんに何も考えずについていく。
お母さんは化粧品売り場に行くと、私の方を向いて言った。
「まずはベースとファンデは必須でしょ。アイブロウとアイシャドウ、あとアイライナーも。ああ、チークも必要」
「何やってるの?」
母親が一人でぶつぶつ何かを言っている。
こわ
「え、玲衣の化粧品選んでるんだけど。言わなかったけ?」
「いや聞いてないけど」
普通に初耳なんだけど。
「そうだったけ。最近物忘れがひどくてね〜ほんと怖いわ〜」
それからお母さんが化粧品についていろいろ説明してくれたけどさっぱりわからなくて、私はとにかく頷くしかなかった。
私は見事イエスマンに成り果てた。
結局化粧品はお母さんが全部選んで、買ってくれた。
お母さんは娘の化粧品ぐらい買ったげると言われたのでその言葉に甘えて、ちゃんとお礼を言った。
これで帰るのかと思ったけど、普通に寄り道しまくってお母さんが買った服とかの荷物持ちになった。
でも帰りに、ス○バのフラペを奢って貰ったのでとても気分がいい。
これもまたちゃんとお礼を言った。
家に着いたらもう午後の三時だ。