032 再び遺跡にて③
ラガの一声を合図に、マナカが閃光弾を投げると、5人は一気に飛び出した。
マナカは素早くゴブリン達の後方に回る。
正面からはアイルッシュが突っ込む。
不意をつかれたゴブリン達は恐慌をきたす。
マナカは弓矢の節約のため、石を的確にゴブリンの頭部に目掛けて投げる。
挟み撃ちに戸惑ううちに、アイルッシュの太刀が確実にゴブリンの命を奪う。
一方、ラガは大剣を両手で握り、広場中央に踊り込んだ。
すかさずゴブリンシャーマンの首を刎ねる。
残り、ゴブリンシャーマンは2体。
そのラガ目がけて、ホブゴブリンの巨大な棍棒が襲いかかる。
ヌブーは右手を広げ、その右手首を左手で支えるようにして力を込める。
そして、跪くと右手の掌を地面に押し当てる。
すると、ラガを中心に同心円上に地面が歪み、粘土状となった。
ラガを狙って棍棒を振り上げたホブゴブリンの踏み込んだ足が、泥濘に取られてバランスを崩す。
ラガは転がるように、体をかわし、かわしざまにホブゴブリンのふくらはぎに一太刀入れる。
が、浅い。
ラガの一太刀はホブゴブリンの分厚い皮膚に阻まれて、致命傷には至らなかった。
ラガは、片膝をついて大剣を構えホブゴブリンに対峙する。
ホブゴブリンは体勢を崩しながらも、ラガの方を睨み付ける。
ガァァァ。
ホブゴブリンは咆哮を上げる。
その声に呼応するかのように、残るホブゴブリンも泥濘に足を取られながらも、棍棒やら大剣といったそれぞれの得物を持って迫って来る。
すると、ラガの脇を光の筋が一本走り、咆哮を上げるホブゴブリンの口から頭を貫く。
「これで、ホブゴブリン残り3体」
ヌブーは右手は地面に付けたまま、左手から光の矢を放った。
そのヌブー目掛け、ゴブリンシャーマンから無数の石礫が放たれる。
ラガは慌てて駆け寄り、身を挺してヌブーを守る。
もう一体のシャーマンはホブゴブリンへの能力強化の魔法をかける。
ゴブリンメイジはというと、右手を腐鳥の方にむけたかと思うと、腐鳥は揃ってアイルッシュ達の方へ猛進し始めた。
空いた左手は、石礫を受けているラガとヌブーの2人に向ける。
空間が歪むような波が2人に襲い掛かる。
「目眩しとは小賢しいね。」
ヌブーは両手をゴブリンメイジの方に向ける。
さらにそれをゴブリンメイジは同様の姿で受け止める。
「まさか、あれを返すのかい?」
ヌブーが珍しく、驚きの声を上げた。
ヌブーが魔法を解除した事で、地面の泥濘がなくなったため、ホブゴブリンが勢いこんで向かってくる。
と、ゴブリンの寝床の方の戦場で、爆裂弾が炸裂する。
「障壁が出来たぞ!」
アイルッシュの叫び声が響く。
ラガはヌブーと顔を合わせると、ヌブーを先頭に障壁の中まで撤退する。
ホブゴブリン達が2人を猛追する。
ヌブーは障壁の中に入るとすぐに、再び両方の手に力を込め始めた。
と、頭上から大岩が落ちてくるのが同時だった。
ゴブリンメイジが放った大岩はヌブーが張った障壁に妨げられ、その場に積み重なる。
逆にそれが障害物となり、ホブゴブリン達は大岩の周りで攻めあぐねていた。
「とりあえず、大丈夫か?」
ラガは障壁の中に退避した全員の姿を確認する。
大きな怪我をした者はいないようだった。
「ぎりぎり、ヌブーに障壁を設けてもらって助かったぜ。とてもオレの魔法だけじゃ持ち堪えられなかったな。にしても、ゴブリンメイジがあんな大きな岩まで扱うとはね、驚きだよ。」
「腐鳥の使役に目眩し、あとはアタシへの魔力封じの防御魔法。そしてさっきの大岩か。。。メイジの魔法は使えても後1種類。これで打ち止めの公算も高いけどね。残念だけど、あまり相手の戦力を削げなかったね。」
「いや、障壁を張った自陣が出来て、さらにメイジの使う魔法が知れただけで十分さ。こちらに被害は無いんだ。」
「おい、ホントに大丈夫なんだろうな?」
すっかり怖気付いたサナックは、石の上にへたり込んで皆を見上げる。
「旦那はそうやって大人しくしてれば大丈夫さ。閃光弾と爆裂弾を使っただけだから、アタシはこれからって感じさね。」
「オレも、ゴブリン相手だけだったから、薬を使うような怪我も無いからな。」
「ヌブーは?相当無理をしてないか。」
「早速魔法薬を飲んだから平気さ。怪我はしてないしね。それにしても、ラガは相変わらず頑丈だね。あれだけ石礫を食らったというのに、呆れたもんだ。」
「いいねぇ、皆身体が温まってきたところ、って感じみたいだな。よし、それじゃ、第二ラウンドと行こうかね。アイルッシュ、お前はゴブリンメイジのみを狙い、厄介な魔法を使わせるな。マナカとオレで前線に行き、ホブゴブリンとシャーマンの戦力を削る。ヌブーは補助魔法で皆の底上げと、戦局の俯瞰を頼む。退くタイミングはヌブーが指示してくれ。さあ、行こうか。」




