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030 再び遺跡にて①

「ちょっと待ってください。」

「なんだい、シバケン?」

「この奥は水場で広場になってて、おそらく魔物の住処になってるんですよね?」

「ああ、たぶん間違いないだろうね。」

「分かれ道の反対側は、どうなっているかは分からないんですよね?で、当時の様式だと一本道が多くて、分かれ道があるケースは少ないと?」

「そうですね。無くはないんですけど、たしかその場合は倉庫のような構造になってたような。ごめんなさい、あまり見かけないケースなので。」

「先生ありがとうございます。アルゲリッチさん、挟み打ちはないでしょうか?一番最初に挟み撃ちになったのは、その水場からと、もう一方から来たとは考えられないですか?洞窟の外から来たのかも知れませんけど、それと同じだけ、その分かれ道の先から襲ってきたって可能性はあると思うんですけど。」

「うーん。たしかに、シバケンの言う通りかもな。ただの倉庫ならそれもよし。もし魔物がいたら挟撃を避けるため、そこの殲滅をしてからヌブー達と合流したらどうか、ってシバケンの考えに従うか。」

「ええ。でも、その場合は急がないと。」

「分かってるさ。先生には悪いけどアタシのスキルをフル活用でやらしてもらうよ。多少遺跡に傷は付けちまうけど、悪く思わないでくれな。」

「ええ。今の場合は、背に腹は代えられません。」


 セッカイクに会えた事で、この遺跡の重要性は薄れてきたのだろうか。

 当初遺跡に入った時に比べて、随分ダッカーナが寛容になった印象を受けた。


「よし。そうと決まれば、ちゃちゃっと行こうか。」


 アルゲリッチは道を引き返し、先程折れた道をそのまま先に進む。

 次第に強烈となっていく悪臭が4人を襲う。


「どうやら、こっちは腐鳥の飼育場のようだね。すぐに襲ってくるから、シバケンぬかるなよ。」


 アルゲリッチは、先程から全く速度を落とさず突き進む。

 シバケンはあまりの臭いに目から涙を浮かべながらも、アルゲリッチに付いていく。

 と、ギギッという鳴き声をあげて、突然腐鳥が襲い掛かってきた。

 飛びかかる脚を鷲掴みにしたアルゲリッチは、そのままもう一羽に投げ返す。

 床に倒れた2羽を、すかさず剣でまとめて貫く。


「シバケン、そっちに一羽行ったぞ。」


 木の幹のような太さの足と、それに似合う鉤爪がシバケンの首元を狙い澄まして襲い掛かる。

 シバケンは、金棒でそれを防ぐ。

 その勢いで、シバケンはそのまま倒れ込む。

 腐鳥は金棒を鉤爪で抑えつけまま、嘴でシバケンの目玉に狙いをつける。

 その腐鳥の首をシマノフスキは焦る事なく握り締めたかと思うと、その右手が赤く一瞬光った。

 腐鳥の首はすっかり炭化をし、胴体の横に頭が転がった。

 シマノフスキはシバケンを見てニッコリと笑う。


「シマノフスキ、ありがと。」

「おいおい、一瞬にこんなになるかね。すごい火力だね。」


 更に奥にいる一羽と、雛を2羽退治したアルゲリッチは呆れたような声をだす。


「シバケン、大丈夫かい?卵が残ってないか確認したら、急いで水場に向かうよ。って、シマノフスキ何やってるんだよ。汚いよ。」


 シマノフスキは糞尿と腐敗した餌の混ざった汚物の中に手を突っ込んでいた。

 と、ピンポン弾ぐらいの大きさの魔石をほじくり出してきて、シバケンに嬉しそうにそれを差し出してきた。

 シバケンはボロ布を出して、シマノフスキの手を拭いてやる。


「デカいな。ちょっといいか。」


 と、アルゲリッチはその魔石を取ると、ダッカーナと顔を合わせる。


「おいおい忌腐酒かよ。まさかこんな時にお目にかかるとはな。」

「私も初めてですけど、この大きさと色合いなら間違いはないかも。」

「ちっ、ヤバいな。急ごう。先生は無茶はしないように隠れてなよ。」

「何の事です?」


 更にスピードを上げて駆け出したアルゲリッチに戸惑いながら付いていく。

 忌腐酒?

 駆けながら聞いたところだと、獲物を腐敗をさせて餌にする、という食性は魔物によく見られるという。

 その過程において、それが偶然酒のように発酵する事があるという。

 その酒は嗜好品として魔物が好み、また飲んだ魔物は強大な力を得るという。

 さらに、偶然ではなく、意図的にこの忌腐酒を製造する魔物も稀に現れるという。


「それじゃ、この忌腐酒を摂取してパワーアップしたゴブリンって事ですね。」

「おそらくな。ホブゴブリン、ゴブリンシャーマンの全員が飲んでるとは思えないけど、覚悟しておけよ。」

「はい。で、作戦は?」

「広場なんだろ。遠慮なく暴れられるんだ。特攻あるのみさ。」


 そう言って、アルゲリッチは突き進む。

2023.5.4 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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