029 遺跡の地下③
「ちょっと先生、盛り上がっているところいいかい?このセッカイクってのに興奮してるのはいいけど、まずは外に出て、仲間と合流してからでどうだい?戦力を分断されて、さっきのゴブリンたちとやりあってるんだ。あいつらの事だから間違いは無いとは思うけど、早めに合流するに越したことないよ。」
「うっ。そうですけど、、、」
「先生、未練があるのは分かりますけど、アルゲリッチさんの言う通りですよ。」
「おやおや。もう行っちゃうのかい?アタシは暫くはここを離れないつもりだから、気を付けてお帰りよ。アンタ達の顔はしっかり覚えたから、安心をし。」
「ほら、セッカイクもそう言ってるんだから、早く行きましょうよ。」
ルゥリュという3人の発音がどうも汚くて耐えられないと言われて、名前を呼ぶ事は禁止させられた。
ダッカーナは未練タラタラで、しぶしぶ部屋を出ていったが、セッカイクも横に並んで付いてきた。
「そう言えば、出口までは分からないだろう?案内をしてあげようかね。」
と、先頭に立って歩き始めた。
浮くというか、滑るような不思議な足取りだった。
魔術師の住まいというだけあり、各所に魔術的な仕掛けが施してあり、その一つ一つにダッカーナはセッカイクに説明を求めた。
「さあさあ、ここが入り口だよ。」
セッカイクは紋様の刻まれた壁の前に立ちこう言った。
「ここから地上に出られるからね。もう道は分かっただろう?またいつでも遊びにおいで。ただ、今からお仲間を助けるんなら、ついでに上層の掃除をしてくれないか。臭くてたまらないよ。頼んだよ。」
シマノフスキは先ほど同様に、紋様の脇にある印に掌をかざし、魔力を込める。
光とともに紋様が開き、地上への扉が開いた。
およそ8刻ぶりぐらいの地上である。
あたりの日は陰りつつあるが、まずは現在地の把握をし、すぐにヌブー達の救出の準備にとりかかった。
ダッカーナはシマノフスキに言い付けて、再度扉を閉めた。
そこから、当初探索に訪れた遺跡まで足を進める。
遺跡の入り口には、彼らが無事に脱出した事を示す証は何もなかった。
九分九厘、まだ遺跡の中にいるのだろう。
「先生、このまま遺跡に入るかい?それとも、シバケンとシマノフスキに護衛をさせて、街に帰るかい?」
「大丈夫です。サナックさんにも早く報告したいですし、多少の魔法も使えます。私の事はお気になさらずに。」
「それじゃ、仲間との合流を第一目標にするからね。シバケン、荷物持ちだけどアンタにも戦闘に加わってもらうからね。シマノフスキもだよ。頼んだよ。」
「分かりました。」
持てるだけの薬、水、食料などを携行し、荷車は近くの草むらに隠した。
先程の洞窟とは打って変わって、うっすらと腐敗臭が鼻をかすめる。
4人は慎重に奥へと進んでいった。
先程のところまで行くと、落下した穴の周りに死骸が転がっていたが、全て魔物のものだった。
魔石を取り出した跡すらなかったのが、彼らの状況を物語っていた。
「さあ、どうする?奥に行くかい?それとも、引き返して別れ道を反対に進んでみるかい?さっきの先生の判断みたいに、サナックが進路について何かアドバイス的な事をする余地はあるのか?」
「さぁ、何とも。ここは居住区ですから、当時の建築様式から、このまま奥に行くと共同の水場があると思いますけど。逆に、引き返して別れ道の反対はどこに行くのか確信はもてません。たいていは一本道のはずなんですが。」
「共同の水場だって?間違いなく、そこは魔物の巣になってるだろうね。外に出た形跡が無いし、あのラガの事だから、たぶん魔物の討伐をしてるんだろうよ。って事は、行き先は決まったね。よし、奥に進もうか。」




