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025 いざ遺跡に①

 ダッカーナの言ってた通り、夜営地より3刻(約2時間)ほどの時間で、新たに発見されたという遺跡に着いた。

 が、シバケンが思っていた遺跡とは趣が異なり、建物などは一切見えず、ただ入り口と思われる穴が蔦に覆われているだけの外からは洞窟としか思えないようなものだった。

 外からは中の様子を伺う事は出来なかったが、近付くにつれてシバケンを悩ました身体を纏わりつくような湿度は、さらに不快感を増してきていた。


「よし、ここまでは順調に来れたな。このまま中に入るが、準備はいいか?」

「サナックさんよ、ちょっと待ってくれよ。」

「なんだ、マナカ?」

「いや、気配がないのが不気味でね。みんなも見ただろうけど、明らかに魔物の痕跡はあるんだよ。なぁ、皆はどう思う?」


 マナカは皆の顔を見回した。

 ここに来るまでの間、ラーキー3匹を倒した後、ゴブリンを2匹倒しただけで、腐鳥にも出会う事はなかった。


「たしかに、マナカの言う通り面白くは無いな。ダッカーナ先生よ、ちょっと教えてくれないか?この遺跡の用途と規模は外からじゃ分からねぇか?」

「ラガ殿、ダッカーナ先生にそんな口の聞き方を。」

「サナックさん、構いません。どれだけ分かるか自信も無いですけど、少しお待ち下さい。」


 そう言うと、ダッカーナは洞窟の入り口に立ち、周囲の痕跡や寸法などを調べ始めた。

 5分ほど調べて、ダッカーナは再び戻ってきた。


「おそらく、ですけど。」

「ああ、それで構いませんよ。で、どうでした?」

「ええと、おそらく共同住宅跡だと思います。当時の造りからすると、水場のような人の集まる場所が一番奥にあって、

遺跡の中はそう複雑な造りじゃ無い筈です。」

「そうかい。そうなりゃ、おそらく決まりだな。そっちの3人も同じ見立てなんだろうな。」

「ああ、たぶんね。」

「何だ、どう言う事だ?」


 サナックはラガと冒険者達の顔を交互に見交わして、苛立たしげな声を上げる。


「サナックさん。今の話の通り遺跡の中に水場があるなら、魔物共は十中八九その水場を拠点にしてやがるよ。待ってたって事態は好転するでなし、また、煙で燻り出せるような広さの遺跡でもねぇ。さあ、どうします?引き返すかい?」

「ラガ殿、馬鹿を言わないで下さい。やっとこれでスタートではないですか。魔物の姿をこの目で見た訳でもないのに、引き返したりなんて真似が出来る訳もありません。」

「そうですよ。遺跡を目の前にして引き返すなんて。」

「、、、という事だ。」


 と、ラガはアルゲリッチ達の方を見てニヤリと笑う。


「さて、そうなると今まで以上に気を引き締めて行くしかないな。」


 いつの間にかラガが冒険者達に指示を出すような立場になっていた。

 遺跡の探索が決まるとラガの指示で、隊列を少し変える事となった。

 マナカとアルゲリッチとヌブーの3人が先頭を。

 その背後には、ダッカーナとアイルッシュ、さらにサナック、シバケン、シマノフスキの順で続いていた。

 ラガは後方の警戒の為に少し離れて歩く。

 遺跡の中は、大人2人が並んで両手を広げるといっぱいになるぐらいの幅の通路が続き、一行は慎重に歩みを進めた。

 だが、少し前進するとダッカーナは何かを調べてメモを取る、という事を繰り返し、その足取りは遅々としたものだった。

 明らかに魔物の気配が感じられる為、尖兵のマナカはもちろん、アルゲリッチとヌブーの顔にも、張り詰めた緊張の色が浮かんでいる。

 2刻ほど進んだが、まだ全容も把握が出来ない規模のようで、自然とダッカーナとサナックの打ち合わせの回数が多くなっていった。

 途中、ネークの襲撃もあったが、マナカとヌブーの活躍で、被害を受ける事なく退治をした。

 小型の蜥蜴と聞いていたが、大きさは子犬ほどもあり、また、全身逆立った鋭い鱗から毒汁が出ている、という姿にシバケンは怖気を震った。

 魔石の採取も鱗に気をつけながら慎重に行った。


「そろそろ近いね。まずは様子を探って、場合によっては殲滅といくかい?」


 マナカが振り返って、ラガの意見を仰ぐ。

 明らかに周囲を漂う肉の腐敗臭は強くなっており、壁には見覚えのある爪痕があるのをシバケンも気が付いた。

 しかも、その足元には、動物か何かの白骨が大量に転がっていた。

 皆の顔には緊張が走る。

 ダッカーナだけは顔を青くしながらも、白骨の近くまで顔を近づけ、遺跡の痕跡の調査をしていた。

 見上げた研究者魂だと、シバケンは感心する。


「サナックさん、ちょっとこれを。」


 興味深い物が見つかったのか、ダッカーナはサナックを招く。

 サナックは露骨に顔を顰めながら、しぶしぶダッカーナの元に近付く。


「たぶんここは腐鳥が昔使ってた餌場だろうね。学者先生よ。調査もいいけど、あんまり長居はおすすめしないよ。」


 と、急かすようにアルゲリッチは2人に声をかける。

 「そうだな」とサナックそのきっかけを嬉しそうに受け、早々にその場を離れる。

 ダッカーナの方も渋々と腰を上げる。


「いや、少し遅かったようだよ。腐鳥が2匹。その後ろからゴブリンらしい集団も向かってくるよ。」


 マナカの警告と同時に、シバケンにも複数の足音が近づいて来るのが聞こえてきた。

 迫る足音は凄い勢いでこちらに近付いてくる。


「ちっ、言わないこっちゃない。ラガ、あんたにも働いてもらうよ。」


 アルゲリッチはそう言うと、足音が聞こえてくる方向に向かって身構えた。

 ラガとマナカも臨戦態勢を整える。

 アイルッシュは、ダッカーナとサナックを背にして身構えた。

 シバケンとシマノフスキは、荷車の陰に身を隠す。

 と、前方の角を曲がって、一本足のダチョウのような生き物が2匹現れた。

 最初から狙い澄ましたかのように、ものすごい勢いで突進して来る。

 あっという間にその距離が詰まる。


ガッシャーン!


 腐鳥が脚で蹴り込んで来たのを、アルゲリッチは大剣で受け止め、激しい金属音が狭い通路内に響く。

 あまりの衝撃に、受け止めたアルゲリッチの顔が歪む。

 逆に、大剣の刃で受け止めたにも拘らず、腐鳥の脚はなんともないようだった。

 もう一匹の方は、ヌブーによる拘束の魔法に捕らえられ、地面に倒されもがいていた。

 すかさず、マナカが弓を射掛ける。

 矢は腐鳥の喉元に突き刺さり、腐鳥は断末魔の声を上げる。

 シバケンは耳を押さえたが、鼓膜を突き破り頭の中にまで届くようなその絶叫に、思わずその場に蹲ってしまった。

 腐鳥の叫びは《恐慌》の効果があるとは聞いていたが、実際に聞くと抗いがたかった。

 ヌブーは拘束魔法の為に広げた右手はそのままで、左手を腐鳥に向けた。

 と、腐鳥の身体を炎が包み込む。

 初撃を受け止めたアルゲリッチは、その炎に包まれた腐鳥を躊躇うこと無く素手で殴り付けた。

 勢いよく腐鳥は壁まで吹き飛ばされる。


「なるべく遺跡を傷つけないで!」


 頭を低く抱えながら、ダッカーナは叫ぶ。


「言われなくても、わかってるよ。」


 アルゲリッチは起きあがろうとする腐鳥の胸元に大剣を突き刺した。

 2、3度痙攣したのち、腐鳥は動かなくなった。


「次が来るぞ。」


 マナカの声と共に、前後から無数の足音が近づいてくるのが聞こえてきた。


「後ろからも来るぞ。先生達を囲むように備えろ。」


 ラガの指示が飛ぶ。

 と、前後からゴブリンの群れが襲い掛かって来た。

 アイルッシュは後方から迫るゴブリンに立ち向かうべく、身構えると、刀身に魔法を帯びさせた。

 アルゲリッチはすかさずアイルッシュの援護に回る。

 前方は、ラガとヌブーが受け持つ。

 ゴブリンに混じって、腐鳥も襲い掛かる。

 ゴブリンの上位種には、腐鳥を飼い慣らす者もあるという。

 これが、最初にサナックが説明した「面白くない取り合わせ」という事か。

 シバケンは、シマノフスキの身体を抱えながら、体勢を低くして皆の戦いを見守っている。


「ゴブリンシャーマンまでいるよ。気をつけて!」


 マナカの叫びと同時に、石礫が激しく周辺に降り注ぐ。

 前線にいたマナカはその直撃を受け、ヌブーとラガはひたすらに耐える。

 腕で顔をガードしていたヌブーの腹部を、腐鳥の強烈な蹴りが入る。

 ヌブーの身体は壁まで吹き飛ばされ、そのまま蹲る。

 そこにゴブリンが襲い掛かろうとするのを、マナカがヌブーの身体を抱えて避け、間一髪で回避する。

 ラガはゴブリンの中で奮迅している。


「ゴブリンシャーマンの次は、ホブゴブリンかよ。」


 後方のアルゲリッチとアイルッシュの前に、オークと見まごうばかりの大きさのゴブリンが3体立ちはだかる。

 普通のゴブリンは粗末なボロ布を身に纏っているが、ホブゴブリンは鎧に身を包み、両手にそれぞれ武器を持つ者もあれば、戦斧を携えている個体もあった。

 アイルッシュとアルゲリッチの姿を認めると、醜悪な容貌を歪め向かって来る。

 アイルッシュは大きく一歩を踏み出すと、抜く手も見せずに迫るホブゴブリンを一閃した。

 鎧の隙間を狙ったが、皮膚が硬くて刃は深く通らない。

 剣を引こうにも肉に食い込みなかなか抜けなかった。

 そこをホブゴブリンのナタのような形状の武器が頭上から襲う。

 アイルッシュは右手を剣から離し、ホブゴブリンの胸元に掌底をいれた。

 掌に魔力を乗せた一撃は、鎧に大きな窪みを作ったが、ホブゴブリンは数歩退いただけだった。

 一瞬遅く振り下ろされたナタは紙一重で空を切る。


「硬い上にクソ重たいな。それに馬鹿力か。」


 かすってはいないが風圧で瞼が僅かに切れたらしく、一筋の血がアイルッシュの頬を伝う。

 掌底の勢いで抜けた剣を握り直し、改めてホブゴブリンと対峙する。

 ホブゴブリンも不敵に笑う。

 一方、アルゲリッチは2体のホブゴブリンを相手にしていた。

 両腕から繰り出される計4本の力任せの攻撃に、さすがのアルゲリッチも防戦一方だった。

2023.5.4 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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