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024 遺跡探索にむけて⑤

 昨夜はヌブーからの話を咀嚼していたため、シバケンはなかなか寝付く事は出来なかった。

 シマノフスキは、本当に人体実験の被験者なのだろうか?

 平穏な日常生活を迎える事は出来るのだろうか?

 考えても答えの出ない問題がシバケンの頭の中で渦を巻き、寝不足のまま朝を迎えた。

 皆が起き始めた音がしたので、すっきりしない頭のまま寝床から這い出して、冷たい沢の水で顔を洗う。

 幾分かマシになったので、シマノフスキを起こそうと寝床にむかう。

 頑是無いという年齢ではないのだろうが、シマノフスキの無邪気な寝顔をしばらく眺めた後、シバケンは優しく揺り起こす。

 シマノフスキは、まだ眠そうにしていたが、ゆっくりと顔を洗いに出ていった。

 その姿を見送ったシバケンは、昨日の肉の煮込みの残り汁に、堅パンを浸して朝食とした。


「ここから3刻も歩けば、遺跡に着くはずよ。」


 食事の準備をしていると、ダッカーナがいよいよ遺跡探索だというので、興奮気味に話しかけて来た。


「ええ。魔物も出るというので、緊張しますね。」


 ダッカーナは、魔物の事など眼中にないのだろう。

 シバケンに、あの周辺にはこの時代の遺跡が固まっているから、同時代の可能性があるけど、その場合どんな用途の遺跡が考えられる、などと専門的な内容も交えて熱心に話しかけてくる。

 もとより何の事かも分からないシバケンは、食事をしながら適度な相槌を打ち、やり過ごしていた。

 すると、


「みんな、来てくれ!やっぱり間違いないね。」


 アルゲリッチの大声が響いた。

 皆がその声のする方に集まると、大木の前にマナカとアルゲリッチが立っていた。

 シバケンも少し遅れてそこへ到着すると、大木の幹には大きな4本の爪痕と、その根元に腐敗した何かの肉が転がっていた。

 話に聞いていた腐鳥の痕跡だろう。

 サナックは嫌悪感を露わにした表情で皆を見返す。


「ふん。居るという前情報通りだな。存在が分かっているなら、遅れを取る事もあるまい。その為に雇った冒険者諸君と、衛士の方々だからな。気を引き締めていってくれ。」


 サナックの言葉にマナカは何か言いたそうにしたが、アルゲリッチと顔を見交わし、諦めたように無言のままその言葉に従う事となった。

 マナカが尖兵役を引き受け、アルゲリッチを先頭に、ヌブー、アイルッシュ、サナックと続き、しんがりはラガが務める。

 1刻ほど進み、やがて一行は草叢の前で止まった。

 いつしか湿気が高くなり、シバケンの身体から汗が滲んできた。

 夜営地を出てからずっと悪路が続き、ぬかるみとはまた違う、地面がまとわりつくような感覚が終始シバケンを悩ませた。

 また、平坦な道を進み、決して高地では無いにも関わらず、空気も薄くなっているかのように感じられた。


「いたよ。近くに他の気配は無さそうだね。」


 草叢の前で一行と合流したマナカは、声を落として伝える。

 すると、草叢の隙間から、人間の大人ぐらいの大きさのナメクジが3匹が動いているのが確認出来た。

 ラーキーだ。

 アルゲリッチは躊躇う事なく草叢から飛び出し、剣を横薙ぎに一閃し真二つにした。

 残り二匹のうち、一匹はナメクジとは思えない速度でヌブーに迫る。

 さらに、もう一匹は体を震わせると、一瞬全身が凄まじい光を放った。

 シバケンは草叢の陰に隠れていたので影響は無かったが、至近距離で直視でもしたら大変な事になっていただろう。

 アーゲンタインの閃光を思い出し、シバケンは嫌な汗をかいた。

 一行はさすがにベテランの冒険者ばかりなので、その閃光を直視する者はなく、ヌブーは迫り来るラーキーに向かって左手をかざす。

 と、たちまちにラーキーの身体が炎上した。

 一方、閃光を放つラーキーへは、樹上のマナカからの弓矢による狙撃が行われた。

 矢が貫通し、ラーキーの身体から光が失われる。

 その隙に、アルゲリッチはラーキーの背後に回り、とどめをさす。

 危なげの無い戦いだった。


「見事な戦いぶりだな。この調子でやってくれ。他の気配は本当にないのか?そうか。おい、シバケン。ラーキーの魔石の回収はお前がやっておけよ。こう臭くては敵わん。早く遺跡にむかうぞ。」


 アルゲリッチが「魔石の回収は自分達が」と言おうとするが、その言葉を無視してサナックは鼻と口を押さえながらマナカ達を先に促した。

 「悪いな」と3人は口には出さないが、シバケンの顔を見て訴えかける。

 シバケンの方も、こういった雑用全般をやるつもりでいたから、笑顔で応えてシマノフスキと共にラーキーの死体を漁る。

 生臭いのと腐敗臭が混ざったような悪臭に顔を顰めながら、パチンコ玉ぐらいの薄黄色に透き通った魔石を回収した。

 脇に生えている葉っぱで汚れを拭き取り、急ぎ皆に合流し、そのまま遺跡へと歩いていった

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