021 遺跡探索にむけて②
「ある程度の事は聞いていると思うが、ここから北東にあるアクパ集落跡で、新たな旧時代の遺構が見つかった。遺構とはいうものの、実際彼らがそこで何をしていたかは、我々遺跡管理官とダッカーナ先生の領分で他の者は知らなくてよい。旧時代の遺構に付き物の魔法の残滓に惹かれ魔物が棲みついている、という訳だ。依頼の内容は、この遺構の探索と魔物の討伐だ。当然ながら、遺構の規模は不明だ。今回の行程は探索に2日、その前後1日を移動日と設定しての依頼であるが、当然遺構の規模等で延びる可能性は留意しておくように」
一旦言葉を切り、再び全員の顔を見渡す。
「各々の役割はわかっていると思うが、盗賊ギルドによる事前調査の結果だと、周辺で確認できた魔物は、ゴブリン、ネーク、ラーキーの3種。ゴブリンが確認できた頻度から、小規模の集落かと想定されておる。」
たしか、ネークとは毒を持った小型の蜥蜴で、ラーキーは、視神経を刺激する魔法を使う蛞蝓のような生き物だったような。
「あと、4本の爪痕のような傷の付いた木が数本見つかり、その周囲には腐乱した動物の死骸が見つかったとの事だ。」
「おいおい」とアルゲリッチが小さく声を上げた。
他のメンバーには驚いた表情は見られず、この情報を知らされてなかったのは、冒険者ギルドの4名のみだったらしい。
ただ、シバケンには今の情報の重要性は飲み込めていなかった。
「本体を確認出来た訳ではないが、腐鳥がいるのは間違いないだろう。ゴブリンの集落の近くに腐鳥の痕跡とは、面白くない取り合わせだがな。」
腐鳥はたしか、ダチョウの様に飛べない一本足の鳥だったはず。
ゴブリンとの取り合わせの何が面白く無いのかは、シバケンには分からなかった。
「今から出発し、今晩はアクパ集落跡手前の安全な土地で野営をし、明朝から洞窟探索に向かう、と言う行程だ。松明等の資材は支給するが、食事に薬草は各人持参とする。何か質問は?」
「アンタじゃなく、学者先生に聞いた方がいいかもしれないけど、今回はどっちが主眼なんだい?魔物退治と遺構の探索の?」
ヌブーがダッカーナという学者に目を向けて聞く。
急に話を振られたのだが、ダッカーナは臆する様子も無くヌブーを見返す。
「はい。ご承知の通りあの地域には年代や用途に応じて大小様々な規模の遺跡があります。今回は新たに見つかった遺構という事ですので、まずその全容の把握。つまり、時代、用途、規模ですね。その把握を第一優先と考えております。また、こちらとしては願ったりなんですけど、仮に大規模遺跡だと判断されたら、その時点で一旦探索は終了します。新たにそれに合わせた探索隊を結成し深部に迫る、という予定です。」
「ああ、その通りだ。なお、その判断は私とダッカーナ先生の合議によるものとする。また、魔物についても同様だ。想定外の事態が起こったら一旦そこで探索を打ち切り、新たな探索隊を編成する。魔物の討伐は必要に応じて対応となるが、殲滅を目的とはしていない事は肝に銘じてくれ。先程言った通り、現在探索に2日間を想定しているが、伸びても1日程度だと思ってくれて良い。」
ヌブーが頷く。
と、アルゲリッチが続けて質問する。
「洞窟で見つかった遺物は、当然アンタたちの物だろうけど、それ以外の物は?」
「それ以外とは?」
「魔石もそうだけど、ゴブリンの集落にもし奴らのお宝があったとしたら?」
ああそのことか、とサナックはダッカーナを見るが、彼女は全く興味が無さそうだった。
「その程度の魔石は好きにすればよいが、ゴブリンの集落からの戦利品については別だ。通常の略奪品なら冒険者の通例に従えばよいが、遺跡からの品は全て当方の管理下に置く。配分で揉めるのは煩わしい故、見習いというシマノフスキを除くとちょうど4名だ。荷物持ちのシバケンを1として、残りを三等分にでもせい。」
アルゲリッチ、ヌブー、マナカの3人は顔を見合わせる。
共に異存はなさそうだった。
「他に質問は無いか?無いようなら、早速出発の準備に取り掛かる。シバケン、外に馬車を用意してある。荷物の積み込みを始めてくれ。馬車で最寄りの集落まで行き、荷車に乗せてそこから歩行だ。」
サナックがそう言うと、各々が部屋を出始める。
「荷車は向こうの集落で借りられるんでしょうか?」
「今の話だとそうみたいだね。わざわざ荷車牽いてきたのかい?それなら、依頼から帰ってくるまで、ここに置いといて貰うように頼んでおきなよ。それはそうと、分け前が4等分じゃなくて悪かったね。」
「いえ、そんな。私は危険な事をする訳じゃないので、頂けるだけで十分ですよ。」
「相変わらずシバケンは欲がないね。この子の面倒も見なきゃならないのにね。」
とアルゲリッチはシマノフスキの方を見る。
「昨日言ってた、オウドーとかいう魔術師の話は、無事に終わったのかい?」
「アルゲリッチ、待ちなよ。今は時間も無いし、周囲の目もあるだろうから、またゆっくりと聞かせて貰えばいいよ。シバケンも、それでいいだろう?」
ある程度察したのか、ヌブーはアルゲリッチの質問を遮ってくれた。
アルゲリッチは不思議そうにヌブーの顔を見返した。
2023.5.4 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました




