005 薬草採取
薬草採取をするにあたって、場所はディガーの被害のあった辺りと決めていた。
シバケンは手頃に開けたエリアを見つけたので、そこを薬草採取の拠点とする事にした。
ベルトに聞いたところ、ハッサム草は日向に咲くというので、まずは街道を逸れてハッサム草を探す事とした。
一番ありふれた植物なので、見付け易いと聞いている。
なかなか群生しているのを見かけなかったが、探している途中でイカンの木が生えていたので、そこで遅めの昼食を取る事にした。
金棒でよく熟していた実を一つ落とし、ナイフで皮を剥き、シマノフスキに渡す。
ペイにかじりついていたシマノフスキは、一瞬不思議そうな顔をしたのち、右手を出し口に入れる。
美味しかったのか、まだ口に入っているにも拘らず、右手を出してきた。
笑いながらシバケンはもう一切れ渡し、後は荷台の上に並べる。
シバケンは、やっと自分のペイを口にした。
“アンジュの顎”でヤンナが作ったものと同じく、イリスの香草焼きと生野菜を挟んだもので、よりスパイシーな味付けだった。
奇しくも、それがイカンの風味とよく合って、一緒に食べるととても美味かった。
イカンの木にはまだ実がなっていたので、シバケンが金棒で落とし、シマノフスキにそれをキャッチさせる。
10個ぐらい採れたところで、それを袋に入れて荷台に乗せた。
森を抜けて、日当たりのいいところに出ると、ハッサム草を見つける事が出来た。
ベルトに言われた通り、新芽以外も傷つけないように採取する。
あまり人が来ない所なのか、それとも生育条件に恵まれてるのか、シマノフスキと二人でしばらく作業に没頭していても、まだまだ採り切れなかった。
シマノフスキは割と器用なのか、一回やり方を見せると、あとはシバケンよりも巧みに採取を行った。
「ちょっと休憩しようか。」
と、汗を拭きつつシバケンは木陰に腰をかけた。
シバケンが水を飲んでいると、シマノフスキは何も言わずに荷台の袋からイカンを出してきた。
気に入ったみたいだ。
シバケンは先程のようにイカンを剥き、シマノフスキに食べさせてやる。
作業に集中し額からは玉のような汗をかいてはいるが、風が爽やかに吹いて気持ちが良かった。
無邪気にイカンを食べるシマノフスキを見ながら、これが自警団からの依頼がなかったら、とシバケンは思う。
いくら彼らが何とかしてくれるとは言いながら、ディガーの事を少しは聞いておけばと後悔する。
今もどこかで2人を見守っているはずだから、聞く事は可能なんだろうが、緊急を除いての接触は控えるように言われている。
今日の夜にでも聞こう。
初日にディガーが出なければ、という前提だが。
さて、現在の収穫だが、イカンの実とハッサム草だけだ。
悪くはないのだが、もうちょっとという欲もある。
まだ日も高く、夕方まで時間もある事だから、森の方も探索してみようか。
まだシマノフスキも元気そうだし。
シバケンは腰をあげ、シマノフスキを連れて森の方に入っていく。
木の根元や倒木の間など、キノコが生えていそうなところをしっかり見て回る。
その結果、ハム茸を4株見つける事が出来た。
ナンゾ草は見つける事は出来なかったが、インガ草はまとまって生えているのを見つける事ができたおかげで、20株ほど採取できた。
また、クルミの木も見つける事ができた。
木を揺すって実を落として、周囲に落ちたクルミを袋いっぱい採取する事が出来た。
虫が食ってたりするのもあるだろうから、全て買取りしてもらえるわけでは無いが、楽しみだ。
形が悪くて買取に向かないものは、すり潰して蜂蜜と混ぜてパンに塗って食べよう。
そこにチーズも乗せれば最高だ。
シマノフスキも喜んでくれるかしら、などと考え、シバケンはひとりほくそ笑んだ。
と、向こうからかすかに声が聞こえてくるのに気付いた。
助けを求めているような声だ。
シバケンは金棒片手に慌てて腰を上げた。
2023.5.4 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました




