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002 プシホダが戻ってきた

 翌朝はワイルの起きる気配で、シバケンは目を覚ました。

 食事のあと寝落ちして、そのまま朝まで起きなかったようだ。


「あっ、シバケンさん、起こしちゃった?ごめんね。まだ早いから、寝てて。あと、お土産ありがと。メルリーナさんから貰ったよ。お土産なんて貰うの初めてだから、嬉しかった。大事に食べるね」

「ミルク入りと普通のと、2種類入ってますからね。」

「うん、早速開けてみたからすぐに分かったよ。メルリーナさんに聞いたらミルク入りなんだってね。珍しいからすぐに舐めちゃった。甘くてミルクの味がして、すごく美味しかったよ。ありがと」

「喜んで貰えてよかったです。ミルク入りの飴、美味しいですよね。また、アンブラ村に行ったら買ってきますよ。次はもっと沢山買ってきますから、みんなで食べましょう。」

「ありがと。でも、いいの?冒険者やってると携行食や薬草買ったりするだけでもお金いるでしょ。それに装備品の手入れとか。気持ちだけで嬉しいから、お土産なんて、わざわざ買わなくてもいいよ。」

「大丈夫ですよ。そんなに高い物じゃないですから。私も舐めたいですしね。それはそうと、プシホダさんは?」


 プシホダの寝床は昨日の状態のままだった。


「あの人、昨日帰らなかったみたい。」

「そうなんですか。よくあるんですか?」

「うーん、どうだろう。酔っ払って道端で寝ちゃったなんて事もあったからね。今回もそんな感じかな。心配しなくても、午前中には酔っ払って帰って来ると思うよ。それじゃ、ボクはそろそろ仕事するね。シバケンさんは大変な依頼から帰ってきたばっかりだから、ゆっくりしてね。」


 ワイルは忙しそうに部屋を出て行った。

 結局その日から3日間、プシホダは“アンジュの顎”の支部に姿を現さなかった。

 その間、シバケンは冒険者ギルドに顔を出し、1人で出来そうな依頼をこなしていた。


 初日は、掃除夫が急遽休みを取るというので、その臨時の清掃の仕事だった。

 大衆食堂のような店で、清掃をするのは店舗ではなく倉庫兼ゴミ置き場のような場所だった。

 簡単な昼飯と夜飯は付いてはいたが、小うるさい店主がしょっちゅう仕事ぶりの確認に来て、その度毎に違う用事を言いつける、という仕事でシバケンも辟易とするようなものだった。

 それで報酬は6,000ガン。

 最初にガイエンから貰った半日の荷物持ちで20,000ガンという報酬は、どうやら破格だったらしい。


 2日目は午後から依頼の確認をしたところ、街道の道路整備という仕事が残っていた。

 陽の高いうちに現場まで移動し、夜通し作業をするという内容らしい。

 早速集合場所まで行くと、既に10人ぐらいの冒険者と、5人の作業者が待っていた。

 街道整備のプロである作業者の指示で、臨時雇いの冒険者が人足として働くという。

 仕事内容は初日の清掃以上に重労働ではあったが、瓦礫を荷車に載せての運搬をするなど、《牽引》のスキルを活かす事は出来た。

 報酬は12,000ガンだが、そこから食事代だの移動費だのの名目で天引きをされて、実際手元に入ったのは9,500ガンだった。


 街道整備の仕事を終えて、空が明るくなる前にゴモ村に帰ってきたのだが、シバケンはあまりの疲労からか汗を流すとそのまま床についた。

 昼前に目覚めると、まるでタイミングを合わせたかのように、プシホダがふらりと帰ってきた。

 3日を家を空けたプシホダに対し、メルリーナをはじめ“アンジュの顎”の他のメンバーは何も言わなかった。

 依頼で何日も帰らない事もよくあるので、この程度は誰も気にも留めないのだろうか。

 プシホダも特に何も言わず、厨房で濁り酒をコップに注ぎ一息に煽った。


「おう、シバケン、久しぶりだな。」

「プシホダさん、お久しぶりです。待ってたんですよ。今までどちらに?」

「オレか?ちょっとフラフラしてただけだよ。」

「なんですか、フラフラって。」


 シバケンは呆れたようにプシホダを見る。


「プシホダさんに、アンブラ村のお土産があるんですよ。今お渡ししますから、ちょっと待ってて下さいね」

「おっ、忘れずに土産買ってきたのか。偉ぇやつだな」

「試飲して買ってきたんですけど、プシホダさんのお口に合えばいいんですけどね」

「ん、なんだ?蜂蜜酒じゃねえか。しかも2本も。わざわざ悪いな。お口に合うかなんて、こちとらそんな上等な口を持っちゃいねぇよ。酒の方に口を合わせちまうさ。ありがとよ。早速楽しませてもらうぜ」


 と、早速プシホダは蜂蜜酒の栓を開けようとしたのだが、フト手を止めた。


「おめぇ、こんな時間だが、今日もギルドに行くのか?」

「まぁ、稼がないといけないですし、でも、昨日ちょっと激しい仕事だったんで、休みたい気持ちも半分ってとこですか。ただ、冒険者ギルドに顔だけは出して、どんな依頼があるのかだけでも見ておきたいですね」

「へぇ、真面目な事だね。って事は、昨日仕事したんだな。なに、その前もか。それじゃ金はあるんだな。よし、今日はオレに付き合いな。冒険者ギルドは別にいいだろ?ダメか?それじゃ、ギルドまで付いて行ってやるから、その後はオレに付き合いな。」

「プシホダさん、付き合えって、どちらまで?」

「初依頼達成のお祝いをしてやろうってんだよ。安くて旨い酒を呑ます店があるんだ。おめぇに教えてやるよ。」

「お祝いって、今私にお金があるか確認しましたよね?」

「ん?細かい事が気になるやつだな。良い店を教えるって、情報の対価さ。オレ達は情報の売買が商売だからな」


 お祝いと言いながら、プシホダはタダ酒が呑みたいだけか。

 シバケンは苦笑を浮かべた。

 とはいえ、プシホダの言う「安くて旨い酒」というのは、シバケンも気になった。


「10,000ガンぐらいしかないですけど、大丈夫ですか?」

「なに、それだけあれは大丈夫大丈夫。あそこは5,000ガンもあれば二人が吐くほど呑めるさ。ツケもきくからよ」


 プシホダが最後に言った言葉が何気に恐ろしかった。

 プシホダは遠慮なく呑み食いし、足りない分もシバケンのツケにする気だろう。

 5,000ガンで2人が吐くほど呑めるというのも、どれだけ信じて良いものやら。


「さぁ、それじゃ、行こうぜ。」


 浮かれたプシホダの声に従って、一抹の不安を抱きつつシバケンは“アンジュの顎”の支部を出た。

2022.10.30 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

2023.4.23 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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