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032 夜襲④

「『緑毛』を討ち取ったぞ!!」

「オオオっ!」


 突然の中央からの歓声に、討伐隊が歓声で応える。


 シバケンも、まだ自分にもそんなに元気があるか不思議なぐらいに、大声で叫んだ。

 目に見えて、オークの数も減っている。

 仔オークも、先程までとは違い、動きにキレがなく、凶暴性も無くなっている。

 リーダーである『緑毛』が討ち取られて動揺してるのだろうか?


「明らかに動きが悪くなってる。どうも『緑毛』がスキル持ちだったみたいだな。」


 ララギルも同じ事を感じていたようだ。

 ララギルが言うには、『緑毛』が《鼓舞》などの集団の戦力をあげるスキルを持っていたのではないか、という。

 その『緑毛』を倒した今、スキルの恩恵を受けなくなった仔オークを弱く感じられるのだ。


「シバケンさん、頑張ったね。手伝いに来たよ」


 ターラの声が懐かしく感じた。

 そこからはあっけなかった。

 スキルの恩恵を受けなくなったオーク達とは力の差は歴然とし、数で圧倒していた仔オークへも戦力を分散する事が出来た。

 『緑毛』討伐からわずかな時間で、全てのオークを駆逐をする事ができた。


 終わった時、シバケンはその場にへたり込んだ。

 あれだけの数のオークを討伐したという達成感と、自分が生きているという多幸感。

 そして、終わったという疲労でしばらく動けなかった。

 傍には共に戦ったララギルや、ミナ達も固まっていた。

 ヤッツが高いテンションで話しかけているのを、皆はほとんど相槌すら打たずに聞いていた。


 ターラたちオーク討伐隊は、ヴァーリント達と事後処理の打ち合わせに入っている。

 アルゲリッチとヌブーに率いられた部隊は、ジャーモンを連れ、怪我人の回復に当たっている。

 幸いな事にシバケンの部隊には、シバケン以上に負傷した者はいなかった。

 が、『緑毛』の討伐にあたっていたヴァーリントの部隊の者が1人、大ケガを負ったという。

 あばらが折れ、折れたあばらが肺に刺さったらしい。


 回復魔法でも限界はある。

 止血と、ケガの悪化を抑える事は出来ても、それ以上の事はよほどの高位者でもなければ難しい。

 治療を受けさせるには、まず怪我人を医者のいるアンブラ村まで慎重に運ぶ必要がある。

 しかしこの険しい山道を怪我人に負担を掛けないぐらい安静に、しかも急がなくてはならず、悠長には出来ない。

 『緑毛』討伐に浮かれてはいるものの、重い空気が漂っていた。


「シバケン、ちょっといいか?」


 クレンペラーがシバケンを見下ろした。

 その横には、ギルドマスターのアナナキがいる。

 シバケンは痛む体を無理矢理に起こした。


「疲れているところ申し訳ないが、お前さんにしか出来ない仕事がある。」

「何でしょう、荷物運びですか?戦利品でもたくさん見つかったんですか?」

「いや、そんな物じゃねぇよ。戦利品なんかはゆっくり運ばせればいい。聞いてるかもしれねえが、怪我人が出てな。急いで村の医者に見せなきゃならねぇ。が、この山道だ。怪我人に負担はかけさせられねぇ、って話になったらクレンペラーの旦那からの推薦でな。スキル持ちのお前さんに、って訳だ。」

「怪我人って、その方、大丈夫なんですか?」

「今のところはな。だが、悠長にはしていられない。早く医者に見せてやりたい。」

「わかりました。私で役に立てるなら。」

「そうか、行ってくれるか。ギルドとしても、助かる。別枠で報酬に加算しておくから、それじゃ付いてきてくれ。」


 シバケンは重い身体を引き摺りながら2人の後に従い、本部とも言うべきヴァーリントの元にやってきた。


「《牽引》とは、珍しいスキルだな。シバケンと言ったか、助かる。よろしく頼むぞ。いま怪我人は荷車に乗せた。わずかな衝撃でも、折れた骨が他の内臓を傷付ける恐れがあるから、慎重に頼む。だが、急いでくれるとありがたい。」


 『緑毛』討伐の功労者とは思えない、悲痛な面持ちだった。


「この者の名前はカルナック。国に戻ったら、娘さんの結婚を控えておる。なんとしても無事に帰したい。護衛として、うちからハセという男を一人付ける。道案内に、自警団からも人を出してもらえると助かるが。」


 と、自警団の方を見る。


「わかりました。あなたはたしか、西側を担当してましたね。となると、ミナのグループですか?」

「そうです。」

「それじゃ、道中カルナック様に異変があるといけませんから、ジャーモンさんと、道案内にはランカに行ってもらいましょうか。おい、ジャーモン助祭とランカに声を掛けてきてくれ」


 怪我人は荷車の上に丁寧に寝かされていた。

 横にいる若い男が「ハセです、よろしく」と声をかけてきた。

 マントは破れ、顔などにも血がついて、戦いの激しさを物語っていた。

 ハセに挨拶を返していると、ジャーモンとランカも来た。


「それじゃ、私が荷車を牽きますから、ランカさんは後ろから押しながら道案内をして下さい。ジャーモンさんは横に付いてカルナックさんに異常がないか見ていて下さい。ハセさんは、周囲の警戒をお願いします。」

「わかった。」

「それじゃ出発しますよ。」


 スキル《牽引》。

 最初は荷物持ち用のスキルかと思ったが、荷台の上の荷物に制約などはないだろう。

 クレンペラー達とのシャサの花の件では、鬼蜂にジャージャという戦利品まで入れると、荷車一杯になったのに、ぬかるみに車輪を取られる事はなかった。

 また、多少の石に乗り上げても、積み上げた荷物が崩れる事はなかった。

 最初は慎重に山道を下りていき、わずかな悪路にも気に掛けたが、怪我人に影響が無いと見て取ると、シバケンは徐々にスピードを上げていった。


2023.8.20 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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