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028 デュプレの丘へ

 そこからは強行軍だった。


 58名が休憩も取らずにデュプレの丘に向かった。

 雲ひとつない空に、月が煌々と照らす。

 ターラの心配していた土地勘のなさといったものも、今夜ほど視界が確保されていれば懸念されるほどでもないだろう。

 行軍中ターラが心配そうにこちらへ来て、アドバイスなどをした。

 それをアルゲリッチが冷やかしターラが否定する、というひとくさりがあった事もあり、ほんの僅かな時間だが重苦しい雰囲気が晴れたりもした。

 おそらく1番役に立たないであろう自分が話題の中心になる事に多少の面映さは感じはしたが、それで全体の雰囲気がよくなれば、とあえてムキにもならず照れ笑いを浮かべていた。


 ちなみに、ターラによるとあちらのグループは、ヴァーリントをリーダーとする領主の私兵8名が『緑毛』を狙うという。

 ターラたちほかのメンバーは、ヴァーリントらが『緑毛』討伐に専念出来るように、他の成体を相手にするらしい。

 『緑毛』さえ討伐出来れば、あとの成体はものの数ではないという。

 さてその『緑毛』だが、ターラは噂に聞くだけで実際に見た事は無いとの事で、アルゲリッチですら同様の事を言っていた。

 だが、ヌブーは有るという。

 先程の会議の時もほとんど口を聞かなかったが、全てを把握しているかのような超然とした雰囲気で、愛嬌者のアルゲリッチとは対照的に近寄り難い雰囲気を身に纏っていた。

 結局、実際に『緑毛』を見て戦った事のあるものは、ギルマスのアナナキと私兵ではリーダーであるヴァーリントとほか2名だけとの事だった。

 その4名がたてた作戦なので、他のメンバーからしたら否やはなかったのだという。

 ただ、癖のありそうな3人組の方の冒険者は、その作戦を聞いてからは一切口を開かなくなったらしい。

 馬鹿な事はしないと思うが、作戦を乱したりスタンドプレーをし続けて全体の統制が狂わなければいいけど、とターラは不安を口にしていた。


「シバケンは、あの冒険者さんとは長いの?えっ、今回が初めて?それにしては仲良さそうだったな。ってわりぃ。冷やかしてる訳じゃないんだ。普通の冒険者って、もっとあっさりした付き合いが多いって印象だから、ちょっとびっくりしてよ。」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ。オレは、ザルツベルで冒険者やってたんだ。ザルツベルはこの国とは比べ物にならないくらい差別が多くってな。爬人っていうだけで、まともな仕事なんてなかったんだ。で、比較的差別が少ないって理由で冒険者をやってたんだけどよ。」

「ザルツベルって、こないだの戦争で。。。」

「そうだ。それまではのんびり冒険者稼業をやってたんだけど、戦争が近付いて来るにつれて軍事絡みの依頼が多くなってな。そういうのが嫌で気楽な冒険者をやってる、ってのがあるじゃねぇか。で、戦争が始まった頃にこの国に移ってきたんだよ。そしたら、爬人に対しての差別も無くってよ。それならいっそフラフラした冒険者家業より、しっかりした自警団にでも入ろうかな、ってな。」

「へぇ。でも、よその国から移ってきたばかりなのに、自警団に入れるものなんですね。」

「だろ。それが入れちゃったんだよ。隣国の戦争があって、人員の増員ってのがあってね。このランカさんみたいに、本業は別にあってこういう時に駆り出される兼業の人も多いからね。」

「えっ、ランカさん兼業なんですか?」

「そだよ。本業は鍛冶屋だ。後ろのオットーも、本業は狩人さ」

「へぇ、そうなんですか。そういう方もいるんですね。」

「オレは、ララギルさんと同じ時期に自警団入ったけど、生まれも育ちもこの村で専業さ。」

「ヤッツさんはまだ若いのに、なぜ自警団に?」

「お兄さんに憧れてるんだよね?」

「ランカさん、やめてくれよ。」

「お兄さん?」

「ピッティングくんですよ。ヤッツは彼の弟なんですよ。」

「あっ、そうなんですか。体つきは違いましたけど、歩き方とかなんとなく似てるなあって思ってました。」

「やっぱり?初めての人もそう感じますか。よかったな、ヤッツ。」

「やめてくれよ、ランカさん。あんたも変なこと言うなよ。」

「でも、ピッティングくんに似てるって言われて満更でもないでしょ?憧れのお兄さんだもんね。」

「ミナ姉も、揶揄わないでくれよ。」


 あんまり大きな街ではない。

 皆それぞれに関わり合いがあるのだろう。

 生まれ育った街だったり、世話になったりした街を守るためにこうやって力を合わせている。

 そんな中に自分がいる事で、昨日初めて訪れたばかりのアンブラ村に愛着が出でしまうのは無理もないのかもしれなかった。

金棒を持つシバケンの手に、自然と力が入る。

2023.8.20 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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