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026 オーク討伐③

「知らねぇ奴もいるかもしれねぇが、オレはこのギルドのマスターのアナナキだ。今晩夜襲かけるってのは、さっきの作戦会議で一致した方針だ。今、ヴァーリント殿からの話で、奴らゴブリンの集落で食事中って話があっただろ。オーク共が腹一杯になるって事は、これからどうなるか分かるだろうが。今晩中に仔が生まれるって事だ。」

「そんな、それじゃとても勝ち目が。」

「だから、今晩夜襲をかけるんじゃねえか。いいか、無理な数じゃねえ。この世界にずっといたオレが言うんだから間違いねぇ。落ち着いてやれば無事に終わる任務だ。『緑毛』だろうが、仔を産もうとしてようが、やることはひとつだ。目の前のオークをどうやって仕留めるかを考えて行動すりゃいいんだよ。手に負えねぇ事まで自分が抱え込む必要なんて無ぇからな。やれる事を自分の頭で考えてやるだけだ!」


 アナナキの叱咤で、騒然としていたギルド内の喧騒は治った。

 アナナキはヴァーリントの方を向き、出過ぎた真似を、と軽く頭を下げた。

 ヴァーリントのほうも軽く頭を下げ返す。


「それでは、2つにグループ分けをするから、呼ばれたら外に出てグループごとに集まってくれ。そこで詳しい作戦を発表する。」


 シバケンも名前を呼ばれ、外へ出ると自警団が手を挙げていたのでそこへ行く。

 そこは自警団がほとんどで、冒険者は少なかった。

 心無しか皆不安そうな顔をしている。

 ターラとクレンペラーはというと、もうひとつのグループに分けられていた。


「ウチらもこっちのグループにしたよ。よろしく頼むよ。」


 アルゲリッチとヌブーが向こうのグループから、こちらのグループに移ってきた。

 ターラでさえ一目置くような凄腕ときいたのに、どうしたのだろうか。

 おそらくこっちは仔オーク退治だと思うのだが。


「領主の私兵ってのに従うのは窮屈でね、ってのは口実でさ。昨日アタシ達が請けた依頼を完遂出来ていれば、こんな後手を踏まなくて済んだんだから、皆に申し訳なくてね。ワリの悪い仕事を引き受けるよ。」


 アルゲリッチはこっそりシバケンに耳打ちする。

 見た目通り豪快で、裏表のない人のようだ。


 こちらのグループは、おそらく仔オークの討伐班。

 総勢は31名。

 自警団から22名。盗賊ギルドからは2名。冒険者ギルドからは7名。

 指揮は自警団が取るらしい。

 まだ若いが精悍な顔の若者が前に出る。

 顔は上気し、緊張がこちらにも伝わってくる。


「私がこのグループを指揮するピッティングです。こんな大規模な、しかもオークの討伐は初めてですから、緊張しててすいません。」

「いいよいいよ。今のうちにしっかり緊張しときなよ。オークに出会ってから緊張してたら遅いんだから。今のうちに緊張して、この緊張感の中で平常心を保てるようにしなよ。」

「あ、ありがとうございます。えっと、、、」

「アルゲリッチだ。こっちのヌブーと一緒に3級の冒険者さ。ところで、この中でオーク討伐した事あるのは?」


 自警団から2名手が上がったのみである。

 31名のうち、オーク討伐の経験者がたった4名。

 アルゲリッチ達が来なかったら、経験者はたった2名だった。

 その事実に他の参加者も驚いていたが、ヌブーだけは頷いていた。

 皆が『緑毛』というオークの存在のみに気を取られていたが、彼女だけはこちらのグループの圧倒的な経験不足を見透かしていたのだろうか。

 そんな中、アルゲリッチは口を開く。


「オークは初めてでも、ゴブリンはあるだろう?」


 これにはほぼ全員が頷いた。

 自然と皆がアルゲリッチ達を中心にまとまり始めていた。


「ゴブリンを最初倒した時はどうだった?」


 一番近くにいた者に聞いた。


「えっと、動きが早くて、攻撃を当てにくかったし、数が多くて苦労しました。でも、攻撃さえ当たれば弱らせる事ができたので、ビックリしたのは最初だけで。。。」

「今では割と簡単かい?」

「はい。事前の情報と、油断さえしなければ。」

「ありがと。大体みんなも同じだろう。で、仔オークなんだけど、ゴブリンに比べて多少頑丈ではあるけど、致命的に足が遅い。知識では知ってるかもしれないが、ここが明らかにゴブリンと違うところだね。攻撃が躱される事も滅多になきゃ、人間が本気で走ればヤツらは追い付けない。簡単に言えば、数が多いだけの、身体が頑丈な足の遅い生き物だ。どうだい、イメージ出来たかな?」


 アルゲリッチは全員の顔を見回す。

 本気で走れば追い付けない、と言うことは逃げようと思えば逃げ切れる、という事だろう。

 単純だがその点だけで、不安が少し減った気がしてくる。

 周りの人達は、どうなんだろうか?

 みな真剣な眼差しでアルゲリッチの方を見ている。


「ところで、この中で前衛は?あたしを入れて19名ね。遠距離攻撃は8名で、残り4名が魔法使いか。それじゃ、魔法使いに聞くけど、どの程度の魔法が使える?なるほど、わかった。ありがと。それじゃ、ピッティングさん、今から3つのグループに分けて対応に当たるけど、どう?第一グループは、アタシを含む前衛10名と魔法使いのヌブーを入れて11名。戦場の中に飛び込んで、仔オークを撹乱するわ。殲滅というよりは、戦いの場をバラけさせるのが目的ね。ひたすら戦場を駆け巡るから、体力に自信のある子にしてね。残りは前衛5名、遠距離攻撃4名、魔法使い1名の10名のグループと、前衛4名、遠距離攻撃4名、魔法使い2名の10名のグループに分けて。この2グループは戦場を遠巻きにして、手薄になった仔オークを相手にする。だけど、決して深入りしないようにね。遠距離班が遠くから狙い、動きが鈍くなった者を前衛班がしっかり急所を狙う。魔法使いは前衛の子達への補助魔法。4、5名だけにかけるなら頑張れるだろ?主力チームは危険は多いけど、アタシとヌブーが守るから安心しな。あたしが考えたのは、こんな作戦。ピッティングさん、むこうからは何て指示を受けてるの?」

「アルゲリッチさんが加わる前でしたから、私は4グループに分けて、向こうのグループの補佐に回るように言われてました。」

「なるほどね。その作戦聞いてどう思った?気を悪くせずに聞いて欲しいんだけど、その作戦、あんた達には荷が勝ち過ぎてると思うよ。ヴァーリントはこちらの戦力の把握は出来てなかったみたいだね。その作戦を実行したとして、結果こっちのグループを向こうのグループがフォローする必要が出てくるだろうね。」

「たしかに。。。圧倒的に経験の足りないこのメンバーを4つに分けて、オーク成体のいる戦場で戦うのは、難しいかもしれませんね。」

「わかってくれるかい。それじゃ、アタシと一緒にヴァーリントに作戦変更の連絡に行こうか。向こうがこっちに期待してるであろう仔オークの方は、アタシのグループが引き受けるから問題は無い筈だよ。」

「わかりました。それじゃ、ヴァーリント様の所へ行きましょうか。」

「今聞いた通り、さっき言った作戦でいくようにヴァーリントに説明をして来るよ。あんた達はグループ分けをしておいておくれ。ただ、わかってると思うけど、あたし達のグループに入る子たちがこの作戦の肝だよ。あっちのチームが成体に集中出来るよう。また、上手く戦場をばらけさせて残り2チームで仔オークの始末が出来るよう、戦場の真ん中を駆けるからね。それが出来る体力と、戦況を見る冷静さがある人間だよ。くれぐれも蛮勇はいらないからね。」

2023.8.20 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました

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