024 オーク討伐①
荷車を牽いてアンブラ村に帰ってきた。
今朝とは違って、村全体からピリピリとした緊張感が感じられた。
パニックをなるのを避け公表はされてはいないが、多くの人が事情を知っているのだろう。
ギルド内は、さらに重苦しい雰囲気に包まれていた。
ターラは依頼完了の手続きを済ませ、シバケンはギルド職員を連れて荷車まで案内する。
クレンペラーは、会議室に入っていった。
道すがら自警団の人達からの懇願もあり、オーク討伐に参加する事になった。
報酬以前に、やはり村への危険が少なからずあるのを見過ごせなかったのであろう。
運が良かったのもあるのだろうが、ゲームの世界では雑魚キャラとして知られるゴブリンを、素人の自分が一対一で倒すことが出来た。
オークもゲームの世界では知られている。
ゴブリンよりは強いけど、強敵としては描かれてなかった気がする。
この世界では、どれぐらいの強さなんだろう。
皆の緊張した面持ちからみると、相当な脅威みたいなのだが。
ギルド職員が作成した買取品のリストを確認し、金を受け取るとサインをする。
そのリストの中には、ゴブリンの魔石×5個と記載があった。
ゴブリンの死骸から、ターラが何か獲っていたのがそれだろう。
また、ジャージャの角とゼーリウムの花はなかった。
それぞれ、武具屋と薬屋のベルトに便宜を図るのだろう。
それぐらいのお目溢しはあるんだな、とオークの出現で困惑している自分のほかに、冷静な自分がいるのを感じる。
買取品のリストを持って受付に戻り、ターラと合流する。
リストを渡し、貰った金を並べる。
買取窓口の職員の計らいで、報酬を分配し易いようにわざと少額の貨幣を混ぜてもらってあった。
銀貨10枚(100,000ガン)
銀粒14顆(14,000ガン)
銅貨22枚(2,200ガン)
全部で116,200ガンだ。
ターラは素早くそこから、シバケンへの報酬の14,000ガンと、追加報酬の8,500ガンを寄越した。
「いいんですか?こんなに?」
「頑張ったから、ちょっとおまけだよ。」
「ありがとうございます。それにしても、会議長引いてますね。」
「うん。案件が案件だからね。村の幹部達も自警団もギルドマスターも、みんな思惑があってピリピリしてると思うよ。」
「ターラちゃん、少しいいかな?」
落ち着いて話が出来そうな、隅の椅子に誘う。
「シバケンさん、何?オークの事?」
「ええ。ターラちゃんはオークと戦った事はあるの?」
「もちろん、あるわよ。」
「オークって、どんな感じなんですか?」
「どんな感じって言われてもねぇ。知ってるとは思うけど、オークは大人の男よりひとまわり大きな身体をしてるわ。ゴブリンなんかと違って、動きはあんなに早くないわね。そのかわり馬鹿力よ。殴られたら、当たりどころが悪いと一撃で致命傷ね。4級の冒険者一対一なら、オークの方に分があるわね。あたしも一対一なんてやりたくないわ。でも、こっちがパーティを組んでの3対3なら、こちらが優位になるわ。この違いわかる?」
「えっと。戦略とか役割分担ですか?」
「そうよ。奴らは全員が前衛。攻撃しかしないわ。そこをこちらが作戦を立てて、仲間と連携をすれば勝率は上がるってわけ。安心した?」
「ええ。少しは。」
「それじゃ、次は嫌な情報ね。さっき言ったのは同数対同数の場合よ。オークの特徴は、一つ目はさっき言った馬鹿力。後は、貪欲な食欲と旺盛な繁殖力。この3つね。オークの成体一体につき、仔オークが10匹って言われるわ。子孫としてプラス非常食として、仔オークを養ってるの。」
「えっ、共食い?」
「そうよ。それがオークなの。その仔オークも成体ほどじゃないけど、ゴブリンなんかとは比較にならない馬鹿力だから厄介なの。つまりは、わかる?成体のオークとその成体の10倍の数の仔オークの両方を相手にしなきゃいけないのよ。」
「そんな、仮にオークが10匹なら。。。」
「そう、仔オークは100匹ね。」
シバケンは言葉を失う。
「どう?会議が長引いてるの分かったでしょ。さて、こちら側の戦力はどのぐらいなのかな。ここの自警団の事は知ってるけど、オークとまともに対峙できそうなのは6名ぐらいかな。残りは仔オークの担当かな。さっきは計算しやすいように10匹って言ったけど、オークは大体20匹で群れを形成し始めるからね。正確な数は物見からの情報待ちだけど。オークと対峙できるのは、会議室にいる自警団6名。お爺さまとアタシ。アルゲリッチさんたち。あと見た事ない4人パーティと、ゴモ村で顔を見た事のある3名パーティ。で、17名か。仔オークの方は、自警団の残り20数名と、シバケンさん。あと6〜7名ぐらいの冒険者は集まりそうかな。となると、30名程度か。満足、とは言いかねる状態だね。」
「仔オークはゴブリンより強いんですか?」
「さあ、どっちが強いんだろうね。個人的には足の遅い仔オークの方が倒し易いかな。でも、頑丈さも体力もさっき言った馬鹿力もあるから、油断は禁物だよ。」
仮の話ではあるが、30名で200匹の仔オーク。
一人当たり6〜7匹の計算になる。
やれるのか?
と、ぐずぐず悩む段階ではないんだろう。
どうしたら良いのかを考えるべきだ。
怪力だが足が遅い生き物。
数は多い。
体は頑丈で、体力も多くしぶとい。
今クレンペラーが参加してる会議で、対応を協議しているが、どういう話になるんだろうか。
トラバサミや落とし穴のような罠を仕掛けてそこに追い込むのは、時間がかかり過ぎるだろう。
弓矢部隊が痺れ薬を塗った矢で射掛け、その後接近戦部隊がトドメをさす。
痺れ薬がそんなに即効性があるのか、また弓矢部隊がすぐに編成できるのか?
都合の良い想定だ。
夜襲はどうだ?
寝首をかく、プラス急襲による撹乱は有効だろう。
クレンペラーに聞いてみるか。
同じような発想で火計もありかも。
火の延焼を制御出来るような魔法があればだけど、これも都合の良い想定だ。
肉弾戦になった場合はどうする?
金棒で殴る。
どこを?
効果的なのは脚だろう。
タイミングを合わせて脚を金棒で殴れば、致命傷にはならないが動きを封じることが出来る。
トドメは後回しにして、他の個体の相手が出来る。はずだ。
あとは、自分の防御力アップだ。
作業性を損なわないように、服はこのままで臨みたいが、ヘルメットのような頭を守る物が欲しい。
怪力の仔オークに頭を殴られたら、たとえ一撃でも危険だろう。
「ちょっと、今から防具屋さん見てきます。」
「急にどうしたの?」
「あの。頭を守るものを見てこようと。」
「ああ、そだね。あった方がいいね。一緒に行ってあげたいんだけど。。。」
「大丈夫ですよ。場所は分かりますから。ターラちゃんは、会議がいつ終わってもいいようにここに残ってて。私もすぐに戻ってくるつもりだから。」
2023.8.20 誤字訂正 ⇒ 誤字報告ありがとうございました




