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015 冒険者ギルド② 初依頼

「ありがとうございます」


 メルリーナからの紹介という事もあるのだろうが、丁寧で親切な人だ。


「依頼を受けようとしたら、掲示板から依頼書を持って、あそこのカウンターに持っていけばいいんですよね?って事は、早い者勝ちですか?」

「そうよ。だから、依頼の貼り出されるタイミングには冒険者でごった返してるわよ。シバケンさんも早めに来ないと、良い依頼は無くなっちゃうから気を付けてね。これから頑張って下さいね。あっ、登録証が出来たみたい。それじゃ、登録料は銀貨1枚(10,000ガン)ですけど。。。」


 アミナは、メルリーナとシバケンの顔を交互に見交わす。


「ああ、それは私が払うよ。シバケン、これから1年ごとに更新料が掛かるんだけど、それはアンタが払っていくんだよ。たしか、6級は銀粒8粿(8,000ガン)だったかな」


 メルリーナが銀貨を払い、無くすんじゃないよと、冒険者登録証をシバケンに渡す。

 銀色の金属製のカードだ。


「これからどうなさいます。メルリーナさんにはウチから新しい依頼があるんですけど。よかったらお時間頂けないですか?」

「そうかい。あたしは構わないよ。シバケン、今聞いた通り、ちょっと話を聞いてくるから、しばらくここで待っててもらえるかい。待ってる間、どんな依頼があるか見ててもいいし。」


 そう言うと、メルリーナはアミナの案内で2階に上がっていった。

 残されたシバケンは、人だかりのする掲示板の方に足を向けた。


 新旧様々な依頼が掲示してあり、その前では冒険者たちが思案をしていた。

 古いのは、危険なのかワリが良くないのか、長い間受注者がいないのだろう。

 依頼を掲示してある位置を、ランクごとに分けているようだった。

 シバケンは、掲示板の前に空いたスペースを見つけ、掲示された依頼を順番に目を走らせた。


 6級の依頼は、まずは、熟した果実の収穫。

 これは先程見せてもらった内容と同じらしい。

 この世界の農業はどうなっているかわからないが、時期になるとこうやって頻繁に冒険者ギルドに依頼がくるのだろうか。

 あとは、薬草採取に魚の捕獲なんてのもあった。

 街の大広場の草刈り。

 歓楽街のゴミ拾い。

 火事で焼けた住宅の解体作業。

 ここまでくると前の世界とあまり変わらないし、本当に雑用のような仕事の依頼がごく平然と冒険者ギルドに並べられていた。

 こういった仕事だったら、なんとかこなす事は出来そうだと、シバケンはホッと胸を撫でおろす。


 試しに5級を覗いてみる。

 ウルフの群れの討伐要請に、商家で集金日の金庫の不寝番。

 こちらにも薬草採取の依頼があった。

 珍しかったり、危険な場所にでも生えているのだろうか。

 大カエルの生け捕りというのまであった。

 こちらも慣れればやれそうな依頼はありそうだった。

 5級と6級の間に報酬の額の差はありそうには思えなかったが、ワリの良い依頼は既に先約済みという事だろうか。

 午後にも張り出されるという話なので、改めて確認する必要があるのかもしれない。


 アミナが言っていたギルド内の依頼というのも見てみようと、シバケンは場所を移動する。

 こちらは、先程より一回り小さな掲示板だった。


「ゴミ捨て場の塀の一部破損につき、6級クラス2名追加募集。日当銀粒6顆(6,000ガン)。朝、昼飯付き。」

「タランテラ市までの行商人警護。5級クラス1名。当方魔法使いと弓使いと索敵と前衛。追加で前衛求む。成功報酬銀貨1枚と銀粒5顆(15,000ガン)」

「アカ沼の毒ガエル駆除 5級クラス若干名。毒消し支給あり。毒ガエル1匹につき銀粒5顆(5,000ガン)」

「制圧後のゴブリン集落の片付け 6級クラス1名 日当銀貨1枚(10,000ガン)」

「アンガレ市までの荷役。5級クラス1名追加。往復20日。日数超過の場合は別途。食事除く。金粒3顆(300,000ガン)」


 色々あるなぁ、と見ていると、


「ねえ、さっきから見てたけど、あなた新人さん?仕事探してるの?」


 シバケンが振り返ると、中学生ぐらいの女の子がこちらを見ていた。


「あっ、はい。今日登録したところで、どんな仕事があるのかちょっと見させて貰ってました。えっと、あなたも、冒険者ですか?それとも、ギルドの職員?」

「本当の新人さんみたいね。そんなに丁寧に話す冒険者なんて、なかなか見ないわよ。特にアタシみたいな子供にはね。」

「はぁ、そういうもんですか。」

「その言い方からして、冒険者らしくないわよ。ところで、さっきの質問なんだけど、いい仕事は見つかった?」

「いえ、まずはどんな仕事があるのか、見てるだけで」

「へえ、それじゃ仕事は探してないの?」

「良さそうなものがあれば、相談はしようかな、と。」

「ダメだよ。そんな消極的な態度だと、良い仕事にありつけないわよ。どんな仕事がいいの?楽な仕事?報酬の良いのを探してるなら、朝一に来ないとダメよ。」


 シバケンの顔を見て呆れたような表情を浮かべた。


「ところで、あなたパーティには入ってるの?相談っていうのは、その人達と?」

「いえ、パーティには入ってないと思います。」

「思う、って何?変なの。」

「“アンジュの顎”って、ご存知ですか?」

「何言ってるの、もちろん知ってるわよ。影人の組織でしょ?あなた、もしかして影人なの?って、絶対違うわね。」

「ええ。私はただ縁があってちょっとお世話になってるだけで。」

「そりゃそうよね。いい歳して見習いって事もないだろうし、見習いにしてもだらしなさすぎるわ。」


 少女は屈託なく声に出して笑う。

 白い歯が良く似合う子だ。


「笑ってごめんなさいね。それで、どんな仕事を探してるの?良い仕事は見つかった?」

「まだ自分が何を出来るかが分からないので、報酬より何より、簡単な仕事から順に覚えていこうかと。」

「真面目なのね。ねえ、荷物持ちでいいなら、やってみない?」


 つくづく荷物持ちに縁があるようだ。

 シバケンは少女の顔を見返す。


「報酬は成功報酬で銀貨1枚と銀粒4顆(14,000ガン)。アンブラ村のちょっと向こうに湿地があるんだけど、そこはシャサの花の群生地なの。それがアンブラ村の貴重な収入源なんだけど、そのシャサの花の蜜を求めて鬼蜂が集まってくるのよ。それだけでも厄介なのに、そのままにしておいたら鬼蜂の幼虫が好物のジャージャが山から下りてくるのよ。今回の依頼は、シャサの花の収穫と、鬼蜂の巣が近くにあったら排除ね。まだジャージャが出るには時期的に早いとは思うけど、もしジャージャを見つけたら、もちろん駆除対象ね。報酬は少ないと思うかもしれないけど、シャサの花以外は追加報酬として取り分になるから。どう?」


 どう、と言われても。

 概要は分かるが、詳細が全く分からない。

 距離も分からないし、鬼蜂やらジャージャの危険度も未知数だ。


「どれぐらいの日数を?」

「順調に行けばだけど、ここからアンブラ村までは半日で着くわ。アンブラ村で1泊して、朝早くから出れば、夕方までには採取は終わるわ。日が落ちてからアンブラ村に帰ってきて、また1泊して、次の日の朝にゴモ村まで帰ってくる、って感じかな。あっ、宿泊については報酬外だから安心してね。安宿だけど、2泊分の宿泊代は私達が持つわ。ただし、食事は各自自分持ちだから、携帯食でも現地調達でもご自由に。だから、追加報酬はしっかり取らないと足が出ちゃうかもね。どうかな?」

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