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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき
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 第二部  一 ーー 面影 ーー

 八十話目。

 この形って、第二部になっても続くのね……。

  ってことは……。


 ミサゴの言葉を本気で信じることは難しかった。

 アイナ様の生まれ変わり……。

 

 にわかに信じられるものではない。


「どうも、信じてくれていないみたいね」


 言葉に詰まっていると、ミサゴが連れてきた少女は嘆くように腕を組み、口角を上げた。

 本音を言ってしまえば、アイナ様と容姿はまったく違う、銀髪が特徴の少女であった。

 ただ、こちらを見据えるまっすぐで大きな目は、どこか心が引き込まれてしまいそうな魅力を漂わせており、口を噤んでしまう。


「ま、当然よね。最初から信用してくれるとは思っていないから」


 唇を噛み、警戒心を漂わせると、彼女は屈託なく目を細める。

 それまで人を見計らうようにしていたけど、急に親しく接してくる。

 人懐っこさに戸惑うほどに。

 もしかすれば、この人懐っこさがこの子のよさなのかもしれない。


「やっぱ、そうなるよね。僕も最初はそうだった。けれど、僕らにしか知らないことを知ってる。それはアイナ様のこととかもね。それに、この大剣持っていることもね」


 彼女の隣でミサゴはお手上げ、という様子で手を上げ、首を傾げた。

 確かに彼女は背中に大剣を背負っている。


「大剣を使い、あなたが鍵を開いたのですか?」


 本当にアイナ様なのか……。

 言葉が浮ついてしまう。


「実際は私じゃないんだけど、結果的にはね」

「結果的に?」


「あそこには彼女以外に三人いたんだよ」


 ミサゴが補足する。


「ねぇ、あなたセリンでしょ。だったら、キョウとエリカって子、知ってるでしょ?」

 キョウにエリカ……。

 どこかで聞き覚えがあり、胸を突き刺していく。


「あぁ、あの二人か……」


 以前、リキルの町で会った子に告げられた名前。確かエルナの町で助けた二人……。


「不思議な境遇ね。私たちが互いに彼らと面識があるなんて」


 ……これも因果というべきか……。


「では、あなたの目的は?」

「ーー星のためよ」


 我ながら陰湿な問いだと痛感しながらも、聞かずにはいられなかった。

 胸の奥に沈み込む警戒心を拭うために。

 だが、その不安は消えていく。

 それまでおどけていた表情が引き締まり、強い眼差しがこちらを捉えた。

 淀みのない、まっすぐな瞳が。

 刹那、それまでの黒いものが肌から落ちていく。


「わかりました。アイナ様」


 自然と頭を下げていた。


「そんなに改まらないで。それに、こんなことを言うと変だけど、「アネモネ」でいいわ。そっちの方がなんか、私も慣れちゃっているから」

 

 また屈託のない笑顔が弾けた。



 印象としては、アイナ様とはかけ離れた姿でしかなかった。

 それでもアイナ様同様、惹きつけられるものがあった。


 彼女はアイナ様なんだと。

 お前の出番はない、ってことだね。

 ま、諦めるんだね。

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