第一部 終 ーー 私は踊る ーー
六十五話目。
終わり……?
終わりってどういうこと?
これで完結?
第一部
終
空は澄んでいた。
素直な太陽が燦々と大地を照らす姿は心地がよかった。
それでも、耳を伝わる鼓動は禍々しく、悲鳴みたいに脆かった。
陽光に焼かれた荒野。
焼けた大地からは吐息のように陽炎が揺れていた。
「辛いよね、やっぱり……」
「……もう少しで争いは始まりそうです」
声に釣られて遠くを眺めた。
眺めた先の荒野に、二つの群集が見えた。
黒い塊が一定の距離を保ち、向かい合っていた。
互いの間に太い線を描くようにして。
「やっぱり、止まることはなかったのね」
「勝手なものです。お互いの利権のためにあなたを狙っているのですから」
「……私じゃなくて、この“先見の力”をね」
「傲慢なものです。まったく」
「このままではいけないよね。こんな“力”があるから、争いが起ころうとする」
「ですが、あなたの決断は正直、私は認めたくありません。もしかすれば、すべてを忘れることになるやもしれないのです」
「そうね。でも、多少は覚えているかもしれないわ」
「しかし、それが新たな火種になる可能性もあるのです」
「ごめんなさいね、あなたたち、“ワタリドリ”に迷惑ばかりかけて」
ウォォッ ウォッ ウォッ
オォッ オォッ オォッ オォッ
遠くに見えた群集が声を上げる。
それは呼応して膨らみ、獣の咆哮みたいに大地を揺らす。
「……始まりそうね」
「本当に辛いです」
「大丈夫よ。きっと大丈夫」
ふと目蓋を閉じた。
大地が泣いている。
星が嘆いている。
目蓋を開いたとき、対峙する二つの群集の間に立っていた。
空を見上げる。
眩しい太陽に目を細める。
両手をそっと広げる。
争いが終わらないことは肌に触れる風が教えてくれる。
終わってほしいと願うしかない。
踊り追えたとき、何か忘れているかもしれない。
でも、誰かは覚えているかもしれない。
その違和感がいずれ、正しい道へ示すきっかけになるかもしれないから。
星よ、怒らないで。
嘆かないで。
私は踊り続ける。
私は踊り続ける。
第一部 了
“第一部”が終わり、ということ。完結じゃないよ。
まだ物語は終わってないからね。ま、一段落、ということで。
ということで、次回より第二部が始まります。
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