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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 六  ーー 空を眺め ーー

 六十四話目。

 このサブタイトル……。

   嫌な予感しかない……。


 争いは止められなかった。

 国の威厳を掲げた争いは起こり、傷つけ合った。

 だが、それを知る者はほとんどいない。


 忘れていた。

 あの争いを。

 あの動乱を。



 扉は開かれた。

 それは忘却に埋もれたなかに灯るロウソクの火でしかまだない。

 だが、それは大きな歯車の溝が一つ動き出した証。

 きっと大きなうねりとなる。



 やはり、気になる。

 誰が扉を開いたのか。

 そして、何をしようとしているのか。



 ーー 聞こえるかい、セリン。


 風の揺れに耳を傾けていると、頭に直接声が届いた。


「なんの用だ、ミサゴ。今、お前と話している暇はないぞ」


 あまり好きではないが、無視するわけにはいかない。


「今、扉が開かれた。早くーー」


 ーー あぁ、僕はその場に居合わせたよ。


「ーーっ」


 ーー そこで、ちょっと面白いことがあったんだ。

 まただ。こいつはどうして人をおちょくる喋り方をするのか。


「焦らすな。要点を早く言え」


 ーー あの方に会ったよ。


「……当然だろ。扉を開くのはそういうことだろ」


 ーーいや、そうじゃない。アイナ様の生まれ変わりだと言う子がいてね。その子が僕らに連れて行け、って言われてるんだ。


 慌てて走り出そうとしていたとき、ビクッと足を止めた。


「なんだって? ふざけるな。そんなことはないだろ。そんなーー」


 ーー アイナ様の名前を知っていたんだ。それだけじゃない。僕ら“ワタリドリ”の存在も、僕の名前もね。


「ハァッ? あり得ないだろ、そんなはずが……」


 ーー そうだろ? 僕もまだ半信半疑なんだ。けれど、本当だったら無碍にするわけにもいかないからね。


「そいつの目的は?」


 ーー どうだろ? まだ詳しくは聞いていないからねぇ。


 まったく、この状況でもおちょくるつもりか。


「……わかった。俺もそっちに向かう」


 ーー あぁ。楽しみにしているといいよ。驚くからさ。



 ミサゴの声途切れ、米神に当てていた指を放した。



 すっと空を眺めた。


 風が強いのか、薄い雲が急ぐように泳いでいる。


「……動き出すのか…… 変わっていくな……」

 まぁ、僕らの出番はなかったね。

 仕方がないね、六章が終わりなんだからね。

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