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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき
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 第六章  4 ーー いつかの目的 ーー

 六十一話目。

 リナとは目的がね……。

            4



 もし、邪魔する者が現れたなら。

 これまで何度もつきまとっていた疑問。

 一向に晴れてくれない不安にアネモネは顔を曇らせる。


「そんなの決まってる。あいつらと一緒よ」

「そだね、うん」

「私らはそれだけの覚悟を決めてるんだから」


 あいつら……。


「あいつら、カサギが死んだって知れば、真っ先に私らを疑ってくるでしょうね」

「……そうね。私らとあいつらじゃ目的が違うから」


 ふと夜空を眺めた。


 夜空は淡く輝く月がこちらを見下ろしている。凛とした深い光は心を落ち着かせてくれた。


「あいつらはこの大剣を使って、世界のどこかにある扉を開くって言っていたよね。でも、そこからが違うんだよね、私らと」

「私らはただ、アンクルスって街に行ってみたいだけ。昔の歴史を知りたいだけ。あいつらは」


 そこでかぶりを振る。


 落ち着いていた心が、カサギに憎らしい嘲笑に邪魔され、胸が苦しくなる。


「あいつらは国の再建を掲げているけど、実際は世界の実権を握ろうとしてる。国を滅亡させられた報復がしたいだけなのよ。バカな復讐。遺恨に支配されているだけのね」

「それに、みんながみんな悪いわけじゃないからね。だから、あの集団に大剣を渡すわけにはいかない」


 大剣の入ったケースをポンッと軽く叩いた。



 きっと私たちは獣の縄張りに紛れ込んだ蟻でしかない。

 すぐに踏み潰されるかもしれないけれど、最後まで抵抗するって、大剣を盗むと決めたときに気持ちを引き締めていた。


 覚悟は決めていた。

 ある意味、世界に抗うことかもしれない。

 誰かを傷つけることもある。実際、今日も……。

 逃げないと決めていた。

 ふと顔を上げると、アネモネの笑顔とぶつかった。

 またこの子は私が悩んでいるのを茶化そうとしている。


 いつもそうだ。

 人をおちょくってくる。何を楽しんでいるのか。

 でも、アネモネのこの気楽さがあったからこそ、私も覚悟を決めることができた。


「何、笑ってるのよ、バカ」

「だって、楽しいんだもん。リナが悩んでる顔を見てると」




 あの笑顔を見ていると、助けられた。

 気持ちは揺るがなかった。

 私たちの目的を達成させるために。

 それなのに……。



 姉さん、あなたと私とでは目的が違うの……



 なんで、そんなことを言うの?

 そんなこと言われたら、私の覚悟は。


 覚悟は……。

 どこで変わってしまったの、アネモネ……。

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