四 ーー 空が憎い ーー
四十五話目だけど……。
あれ?
前回もいなかったし、今回も?
青い空が憎い。
体が動いてくれない。
全身が引き千切られるような痛みが全身を縛って支配している。
悔しさが抗うほどに、胸に喰らった傷が疼いて重力をより強め、地面に仰向けになっていた。
「……ふざけるな。なんで、あんな小娘に……」
完全に舐めていた。
ただの盗賊だと思っていた小娘姉妹に刃が立たなかったのが悔しい。
ほかの連中は何をしている?
誰も助ける部下はいないのか。
俺ももう少しで……。
助けろよっ、クソがっ。
なぜ、あいつらは俺の知らないことを知っているんだ。
あいつらはなぜ、なんな物を持っているんだ?
なんなんだ、あれが“宝”だと?
そんな物が存在していることすら知らなかったんだぞ。
いや、知らされていなかった。
小娘の言い分では、アカギの奴も宝の存在を知っていた?
なんで俺だけ?
クソッ。クソッ。
体が動いてくれない。
俺は死ぬのか?
あんな小娘らに殺されるのか?
奴らは何をしようとしている。
「ほぉ。まだ生きているんだ。しぶといねぇ」
誰だ?
ここにはまともに喋れる奴はいなかったはずなのに、声が聞こえる。
聞き覚えのない声。
目の前が霞むなか、青い空に黒い影がヌッと現れる。
誰かの人影。
でも、黒いフードに覆われ顔が見えない。
「……誰だ、お前は……」
「……さぁ、誰だろうね? どうせ、死ぬ君には知る必要ないでしょ」
なんだとっ。ふざけるな。なんで俺をバカにする。
「見せてもらったよ、君たちの戦い。無様だったねぇ。君は手も足も出なかった」
「なんだと…… クソッ」
「まぁ、しかし、驚いたね。まさかあの二人の女の子が“あれ”を持っているとはね」
“あれ”だと。宝のことか。やはりあれは重要な物なのか。
いや、そもそもこいつはなんで、そんなことを。
「お前…… 何か知って……」
やばい…… 意識が……。
「なんで僕がそんなことを知っているのか、かい?」
男の口元が見えた。憎らしげに口角が上がっている。
「どうだろ? もう死ぬ君に知る必要はないよ。いや、資格もないね」
ふざけるな。
ふざけるな。
どいつもこいつも俺をバカにしやがって。
「人の持つ野心、君はそれが強いみたいだね。フフッ、恥じることはないさ。それは人の業であって本能かもしれない。仕方ないさ。ただ、君はここまでだってこと。残念だったね」
鼻に突く笑い方である。
クソッ、俺は……。
今回で四章が終わりってことだね。
だから僕らの出番はないの。
ということで、この先もよろしくお願いします。




