第四章 2 ーー 追いし影 ーー (2)
三十八話目。
私ら、遊ばれているの?
「知っているのか?」
聞き逃さなかった。
思わず声を張り上げてしまう。
「どうだろう? でも、そいつを捜して何をする気だい?」
「聞きたいんだ。なんで助けたのか。いや、なんで助かったのか。それに、テンペストに襲われたあの町なんかにどうしていたのかって」
そうだ、それこそ根本的な疑問である。
なぜあんな場所にいたのかが。
「あいつがあそこにいた理由、か」
「知っているのか」
「どうだろう?」
ふざけているのか、黒マントはその場でクルクルと体を回転させて焦らしてくる。
僕らを茶化すように。
「ーーと、別に隠す必要もないんだけどね」
回転が止まると、腰の辺りで手をバンッと叩いた。
「とりあえ、君たちはこれからどこに行こうとしているんだい?」
突然の問いに、エリカとまた顔を見合わせた。
エリカはキョトンとしている。
「テンペストを追ってここまで来ただけだから、まだ先のことは考えていない」
「テンペストを追う、か。面白いことを言うね。そうだ、行き先がないってなら、デネブって町に向かったらどうだい」
「ーーデネブ? なんで、そんな町に」
「ん~ん。どうだろ」
やはり、こちらを茶化しているようにしか見えない。まるで、大人をバカにする子供みたいに。
「あ、それと君たちの質問だったね。特別に教えてあげるよ。あいつの名前は“セリン”って奴だよ。ほんと、物好きだね」
気持ち悪かった。
この黒マントの目的が一向に掴めない。茶化すような、楽しむような、奇妙な行動を繰り返してくる。
セリン。
心から望んでいた情報かもしれない。
でも、心は晴れてくれない。
本当か嘘なのか、確証がなかったから。黒マントの態度を見てしまうと。
信じていいのかわからず、つい顔を伏せてしまう。
「じゃぁ、がんばってね」
笑い声の混じった声に顔を上げたとき、黒マントの姿は忽然と消えていた。
信じていいのか?
そんなこと……。




