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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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352/352

 終  ーー  赤いドレスのエリカは踊る  ーー

 最終話。

           最終章


 

 キョウ、どこにいるの?


 声に出そうとしても、どうしても出てくれない。


 これだったら、長く眠っていたみたい。


 何度かは目が覚めた。

 それでも二度寝をするみたいに、深い暗闇に沈んでいくことを願っていた。

 それだけ、もうすべてが嫌になった。


 キョウがいない。


 そんなの考えたくない。

 信じたくなかった。

 だから、目を背けていた。


 でも無理。

 どうしても、会いたい。


 私を見つけて。


 私は踊る。踊っているから、キョウ、私を見つけて。


 だから、踊る。




 気がついたとき、私はどこかの上に立っていた。

 多くの人が私を見てる。


 なんで、そんなに見てくるの?

 なんか、嫌だな。目立つのは嫌いなのに。


 でも、キョウに……。


 ……がんばって。


 どこかで女の人の声がした。

 優しく包み込むような声に、胸がぐっと締めつけられる。


 大丈夫よ。ここで踊って。

 キョウ……。気づいて。


 足元にアネモネが持って行ったはずの大剣が刺されていた。

 深呼吸をして目を閉じると、大剣を握った。

 思っているよりも軽く大剣を抜けた。

 そして目を開き、


 キョウ、気づいて。


 踊ることしかできなかった。

 私は踊る。

 踊ることしかできないから。

 不思議と大剣を重く感じることはなかった。

 人が見ていることも気にせず。


 必死だった。

 どこかでリナの声がした気がした。


 でもいい、今はいい。


 そのとき、青い空にいくつもの線が降り注いでいるのが見えた。


 あれって、矢?

 私、殺されるの?


 この場所……。

 ……そっか。これって祭りなんだね。

 だったら、私は生け贄なのね。

 結局、私は生け贄から逃れられない。

 生きてちゃいけないのね。

 本当、私ってバカみたい……。


 踊りながも笑ってしまう。


 キョウ、ごめんね。


 すべてを出し切り、踊り終えたとき、矢が私に降り注いできた。


 ……バイバイ。








 刹那、青い空に影が覆った。


「やっと、見つけた」


 懐かしい声がじんわりと胸に染み込んでくる。

 不安で崩れていきそうだった心がゆっくりと熱くなっていく。


 ……キョウッ。


 目の前にキョウが現れた。

 いつも見ていた頼りない笑顔。

 全然カッコよくもない顔で私を見てくる。


 ……でも嬉しい。


 嬉しい…… やっと……。


「……遅いよ、バカ」


 つい嫌味がこぼれた。


「そうだな」


 頼りない笑顔に……。


 矢が降り注ぐ。


 キョウは私をギュッと抱き締めてくれた。

 キョウの背中に手を回す。


 こんなに大きかった?

 こんなに暖かかった?

 こんなに……。

 こんなに……。







               忘却のテンペスト



                    完

 

 ようやく、というべきか無事に最終話となりました。

 全体を通して言えるのは、“まさか”です。

 まさかここまで長くなるとは思っていませんでした。

 ファンタジー作品ということで、多少は長くなるとは覚悟していたんですが、約二年投稿するとは思ってはいませんでした。

 ファンタジーでありながら、魔法の類いがまったく出てこないという、物足りなさもあったかもしれません。

 そこは反省点ですね……。

 また、キョウに対しても、こんなことになるとは最初は考えていませんでしたし。


 それでも、この作品を読んでいただき、「面白い」と思っていただけると幸いです。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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