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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 最終章  5  ーー  テンペストに意思があるなら  ーー

 三百四十三話目。

   ワタリドリが後悔でもしてるっての?

     ……ふざけないでよね。

            5



 消えることはない、か。


 私の行動は無駄だったのか、と笑わなければいけないのだろうか。

 髪を撫で、砂と化している地面をまた眺めてしまう。

 もし、テンペストに意思があるとするなら……。


「もしかすれば、私も星に影響を受けていたのかもしれません」

「星の影響…… か。あながち間違いじゃないかもしれんが、それじゃ空しいだろ。いいんじゃないのか。素直にお前もアイナ様を忘れたくなかった、で。そこにお前が責任を負う必要はないと思う。ただ単純に、アイナ様が好きなだけだ、でな」

「……そうですね」


 胸の奥で騒いでいたしこりを鎮めてくれる一言に、心が晴れていく。

 きっと自分では考えちゃいけない、と心底に蓋をしていたことだと感じる。


「そもそも、仮に私たちの行動に、星が影響を与えると考えれば、これから先、テンペストはどうなると思います?」


 懸念はどうしても消えない。


「人の心境が影響を与えるのは変わりないだろうな」

「すべては星の息吹よって、変化するのですかね……」

「もしかすれば、俺の行動も感化されていたのかもしれん。だがあのとき、アイナ様が殺されたときの心境は、俺の気持ちだと信じたいけどな」

「それこそ、その想いを信じていいんじゃないですか。セリンがアイナ様が好きであったと」


 数分前の請負ではある。


 けれど、それ以上に合う言葉は見つからない。


「まぁ、私たちはやはり星に縛られているのかもしれません。ワタリドリとしての性なんでしょうけど……」

「俺たちは後どれぐらい、この地にいるのだろうな……」


 嘆くようにこぼすセリンに、言葉をかけられなかった。

 きっと、答えることにまだ恐れているのだろう。

 明確な答えがなく、深い暗闇を歩いているのと同じ境遇であったから。


「俺たちはきっと特別なのかもしれない。アンクルスを通り、そして地上に戻って来た者としては……」

「それが星の鼓動を敏感に受けやすいワタリドリの性なんでしょうね。姉妹を守るべき存在として」

「そうか? 俺にはあの二人を助けられなかった罰として、ここにいる気がするよ」

「罰ですか……。もしかすれば、いつしか私たち自身、消えることを望んでいたかもしれないですね。だからこそ、罰として願いは叶わず、星は私らを地上に留めていたのかも……」


 奇妙な境遇に滅入りそうになる。

 己の心を鎮めてくれそうな光を求め、辺りを見渡してしまう。


「そういえば、ミサゴは?」


 自虐的に自分を責めていると、ふとこの場にミサゴの姿がないことに気づいた。


「恐らくあいつが一番、責任を感じていたのかもしれんな。だからこそ、必死になっていた。それが空回りになっていたのかもな、今思えば」


 ミサゴがどのような行動をしていたのかは、セリンから聞いていた。

 それらが本当に空回りだったんだ、と片づけることは私にはできない。

 別に私を叱咤、軽蔑するのは構わない。

 私もそうだ、と自覚もあったから。

 ただ、彼の行動は時にアイナ様、アネモネ殿や、レイナに危害を与えかねないこともしばしばあった。


「ハクガン」


 多少なりとも憤りを抱いていると、ふとセリンが止める。


「そう怒るな。あいつも責任を感じているんだ。奴が一番、あの二人を慕っていたのだしな」

「……そうですね。彼もずっと悩んでいたんでしょうね」

 リナ、セリンらの気持ちもわかってあげて、

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