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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第五部  九  ーー  一輪の花  ーー

 三百三十七話目。


 そこに花は咲いた。

 それだけが最大の訴えであり、力一杯の悲鳴だった。


 風に揺れる花は、草に埋もれ、あたかも世界からも拒絶されているように、揺れるしかなかった。


 それでも、花に気づく者もいた。

 風に揺れる花に影が覆う。


 ーー大丈夫?


 一際異質に見えた花を眺めていると、言葉をかけずにはいられなかった。

 まるで、建物の隅に隠れ、うずくまっている子供みたく見えた小さな花。


 放っておけなかった。


 話しかけると、花は小さく揺れて反応してくれた。

 甘い香りが心を刺激する。

 ただ、甘い香りに胸は躍らない。

 香りが体を通じて伝えてくるものに、息苦しくなっていく。


 ーー辛い。

 ーー苦しい。

 ーー限界。

 ーー……助けて……。


 まるで泣き叫んでいるような悲鳴に似ていた。


 花はずっと孤独に苦しんでいる。

 花の訴えを静観するのは簡単だった。


 背中を向けることも。


 いや、耳を傾けることが、村の総意に背くことになるのかもしれない。


 ……けれど。


「アイナ、どうしたの?」

「ーー姉さん?」

「どうしたの?」

「うん。なんかね、この花が訴えているみたいなの」

「訴えてるって、誰もいないじゃん」

「ううん、人じゃないの。この花、いえ、それも違うか」


 どうも見えているものを伝えても、納得がいかない。

 花を通じて感じるものをゆっくりと見据えようとしたとき、自然と言葉がこぼれた。


「なんだろ、これ。星なのかな。訴えているのは」

「ーー星?」

 ………。

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