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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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333/352

 第五部  八  ーー  “それ”が見詰めるもの  ーー

 三百三十三話目。


 ーーアンクルス。


 そこに留まっていた男はこう答えた。

 そこからまた一人の少年の想いが旅立った。

 死してなお、想いを通すために。


 留まる男の後ろでずっと眺めていた。

 少年がこちらに気づくことはない。

 話しかけてはいなかったから。

 だが以前、この少年と会ったことはあった。


 彼女のそばにいたとき……。


 疑問を持つことはないはずなのに、問いかけそうになる。


 なぜ、人のために動こうとする?

 自分が犠牲になるのではないのか?


 人々に抱く疑念。


 少年の後ろ姿にそんなことが巡った。

 ここに留まっていた男も、そんな疑念を抱いて少年に投げかけているみたいに見えた。

 

 以前にも、似た光景はあった。


 なぜ?

 なぜ、そんなことをするのだ?

 自分が辛いだけでは?


 不思議であった。

 人は誰もが身勝手。

 これまでに陥っていた状況を踏まえたとき、そうとしか考えられない。

 未来のことを考えていない。

 周りを見ていないからこそ、苦しみは蔓延していたのでは……。

 だからこそ、少年の行動に疑念が強まってしまう。



 ーーいいのよ。


 どこからともなく声が弾けた。

 

 ーー 自分が犠牲になっても、守りたい人がいるんだと思うよ。


 そうなのか?


 ーー きっとそう。私もそうだった。

 姉さんを、みんなを救いたかった。

 自分が犠牲になっても、構わないと思えたのよ。


 ……そうなのか。


 ーー それに、放っておけない。

 だこらあのとき、あなたにも気づけたんだと思うわ、私も。



 優しい女性の声に、なぜか納得してしまう。


 そうである。


 この声の主に気づいてほしいからこそ、“それ”も声を挙げていたのだから。

 あの少年も、あの女性と同じ感性の持ち主なのかもしれない。


 ならば、あの少年の想いは成就してほしい。


 ”それ”はそんなことを考えてしまう。

 …………。

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