第五部 二 ーー 失態 ーー
二百八十五話目。
ーーそう。
もう次にいくのね。わかったわ。
なぜだ?
なぜ、そんなに争いを起こそうとするのだ……。
私はワタリドリとしての責務を軽んじてしまっていた……。
深まる憤りに後悔が入り混じる。
セリンに顔向けなどできやしないな。
本当にすまない……。
イシヅチ……。
完全に警戒を怠っていた。
私としたことが……。
彼とローズ……。
この二人は明らかに不穏な行動をしていたではないか。
それなのに、彼らの行動をすべて掌握できていなかった。
完全に私の失態である……。
なぜ、争いを起こそうとするのだ?
どこか世界が歪み、崩壊していくのを楽しむような、無垢すぎる澄んだ眼差しに背筋が凍ってしまう。
わかっているのか?
お前が起こそうとしていることは、すべての者から光を奪うことなんだぞ。
怒ることもできず、ただ言葉を噛み殺し、唇を噛むしかなかった。
黙るしかなかった。
こいつには何を言っても、笑ってごまかされてしまうのは歴然であったから。
人が堕ちていくのを楽しんでいる。
だからこそ、街に矢を放つなんて暴挙ができるのだ。
こんなことになってしまったのは、少なからず私にも責任がある。
イシヅチが手にしていたノート。
……私が甘かったのだな。
少しでもアイナ様が苦しんでいた時代のことを残そうとしていた……。
後悔するぞ。
このままでは……。
もう、あのような歪んだ世界、堕ちてしまった人々を見たくない。
このままでは、また争いが起き、後悔だけがうずくまるだけなのに。
イシヅチ。
こいつを見ると、それをどこか望んでいるようにしか見えない。
それだけは絶対にダメだ。
もう二度とあのような苦しさを生むわけにはいかない。
それなのに、イシヅチの目を見てしまうと、忠告、いや警告をすることすらできなかった。
私が脅えていた……。
私にもセリンの勇敢さが少しでもあれば……。
あれ? 文句言わないのって、怖いよ……。
でも、順調に二章目も最後になりました。
次に僕らの出番も期待していますが、今後も応援よろしくお願いします。




