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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第四部  終  ーー  争いが終わることは……  ーー

 二百六十八話目。

   あ~あ。私らのいない場所で、終わりなのね。

          第四部


           終



 目に見えなかった。

 それでも肌を突き刺す風の痛さから、どこかでテンペストが起きたんだと感じた。

 大地に大剣を突き刺し、グリップを握りながら、遠きの空を眺めていた。

 テンペストの影響は受けておらず、優雅に雲が流れている空を。

 グリップを握る右手にさらに力が加わる。


 情けなかった。


 自分の覚悟を突き通せなかったことが。

 大きなものをぎせいにして、自分の進む道を確実にしようとしていたのに、それができなかった。

 殺せなかった。


 まだ迷っているの……?


 私はアネモネを捨てなきゃいけないのに。


「……おかえり」


 そのまま倒れてしまいそうななか、背中に柔らかな声がかけられる。

 レイナの声に少しハッとし、涙を指で拭った。


 泣いているところを見せたくはない。


 フッと息を吐き捨て、平静を装って振り返った。

 そこには屈託ないレイナの笑顔が迎え入れてくれた。


「……私、リナを殺せなかった……」


 黙っておくつもりだったけれど、無垢な笑顔を前にすると、不思議と不安を隠しておくことができなかった。


「……そう。よかった」


 なんで?


 なんでそんな優しくすんのよ…… 私はアイナになろうとしているのに。

 無垢な優しさが逆に憎らしいはずなのに、責めることができなかった。


「ねぇ、一つ聞いていい?」


 気持ちとは裏腹に、ずっと秘めていた疑問が口を突いて出た。


「なんで、アイナは自分の命を犠牲になんかしたの?」


 自分とアイナとの間に生まれている溝を埋めたかった。

 だからこそ、聞いたのだけど、レイナは唇を静かに噛んだ。

 逡巡しながら空を見上げ、儚げに眉を下げる。


「……自分を犠牲にすることで、争いもテンペストも、すべてが治まると思っていたんでしょうね。テンペストが人を戦争へと突き動かしたのも同じだろうから」


 ……でも争いは…… 終わらなかった。


「……辛いね、みんな……」


 それしか喉を通ってくれなかった。

 慰めでも、励ましでもない……。

 するとレイナはかぶりを振る。


「きっと、追い詰めたのは私なんでしょうね」




                 第四部


                  了

   みたいだね。

     気づいたらもう四部も終わりだしね。


 でも、ついにここまで、と思うよ。

  次回に期待しよう。

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