第四部 六 ーー ……けれど ーー
二百六十二話目。
あれ? これで六章目は終わり?
なんか、気持ちを折られた気がするんだけど……。
これで何度目になるのだろうか?
悔しさから宿の壁を殴りつけるのは。
私の立場上、冷静でいなければいけない。
アカギ隊長が不在の今、私が感情を表に出すわけにはいかない。
部下の前では、動揺を見せるわけにはいかない。
理性が渦巻くのだけれど、
……けれど。
ツルギが死んだ?
落ち着いていられるわけないじゃないか。
信じたくはない。
けれど、ヒダカが言っているのならば……。
また壁を殴りつけてしまう。
痛みなんて、ない。
悔しさが痛みを誤魔化していく。
手の平に爪が食い込んだって構わない。
例え血が流れても。
悔しいだろ、ツルギ。
苦しかっただろ、ヒダカ。
なぜ、私はここに留まっているのだ?
悔しさは時に己に対する叱咤、叱責になり、心を削ってしまう。
リナリアたちから伝えを聞いたとき、衝動を堪えることが精一杯であった。
いや、かなり感情は漏れていたのだけれど。
本来ならば、今すぐにでも戻りたかった。
だがーー。
ヒダカが呼んだのはアカギ隊長。
仕方がない。
“蒼”の危険に必要なのは私のような老兵ではなく、若い逸材であるのは承知している。
でも悔しかったぞ、ヒダカ。
私を少しは頼ってほしかった……。
私だって立場が変わっても、昔と変わらないんだぞ。
呼んでほしかった。
でも、私は残ろう。
今は感情的に動くべきじゃない。
このときばかりは、自分が年老いたのだと、痛感せずにはいられなかった。
きっと歳を重ねることは、理性を強めるのだと思っていた。
だからこそ、動揺を抑え、平常心でいられるのだと考えていた。
だが今は、気持ちを子供に戻させてほしい。
……悔しい。
友二人が苦しんでいた場に、自分がいなかったのが……。
しばらく壁を殴る衝動は抑えられないらしい……。
まぁ、気持ちを新たに。って考えればいいんじゃないの。
ということで、次回からも応援よろしくお願いします。




