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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第四部  五  ーー  キョウの決意  ーー

 二百四十九話目。

  あぁ、またこれで私らの出番、終わりそうなんだけど、大丈夫?


 私は彼のことを買い被っていたのか、あるいは彼の本質を見抜けないだけ、私が盲目でしかなかったのか。


 どちらにしても、彼の決意を邪魔するほど、私の考えが未熟であったと、痛感しなければいけない。

 

 武器を持つことはしない。


 キョウの決意に反するように、剣を渡そうとしていたのだけど、彼は頑なにそれを拒んでいた。


 戦うことに剣を使うことは嫌い。


 正直、甘いことを言うんじゃない、と怒鳴りたかった。

 時には非情さも必要なのだ、と。

 だが、言えなかった。


 話によれば、アカギ殿とも対等に戦ったと聞く。

 だからこそ、ツルギも彼に興味が湧き、一戦交えたのだろう。

 そしてツルギにさえ、臆することなく剣を交えていた。


 彼はそれだけの実力の持ち主。


 ちゃんと剣を扱えば、“蒼”の隊長格になっていたのは明白。


 それなのに剣を拒む。


 そんな高い志は感心しよう。

 でも、やはりそんなに甘くはない。


 そう、過度の謙遜は下手な嫌味にしか聞こえないときもあるのだから。

 もっと強く言えばよかった。

 ただ、彼の目を見据えていると、そんな鋭い言葉も喉を通ることを拒んでしまった。

 それだけ彼の意思は強く、揺るがない光が灯っていた。

 決して消えることのない光が。

 その力には、この短期間に何があったのか疑いたくなってしまう。

 

 リナが初めて連れて来たとき、第一印象は大人しく、隣にいたエリカという女の子の方がオドオドとして、逆に強く目立って見えたものだ。

 だが、それは逆だったのか?

 よく考えれば、彼も激しい嵐のなかにいるのかもしれない。

 時代に翻弄されず、自分の意思を貫くのは至難の業かもしれないのに。

 それに揺るがない。

 もしかすれば、彼が時代の要となる存在なのか、と疑いたくなるほどに。

 私の考えはただの杞憂でしかないのだろうか……。

 今は信じるしかないのかもしれない。


 本当にもどかしいものだ……。

 まぁ、大丈夫だって、信じてもいいんじゃないの?


 では、今回で、五章は終わりとなります。

 引き続き、次回からも応援よろしくお願いします。

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