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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 二  ーー 杞憂であることを願い ーー

 二十四話目。

 ーーん? もしかして今回って……。


 不思議な二人だった。


 怯えているからこそ強がっているのは、雰囲気からして伝わっていた。

 でも、その恐怖に打ち負けないような、強い意志を感じることができた。

 特に女の子の方からは。

 

 懐かしくもあった。

 自分も数年前は緊張がバレないように無駄に背を伸ばして反らして立っていたものだ。

 未熟な自分の姿が重なりそうで、笑いを堪えていた。


「よかったのですか。あの三人を放っておいて。拘束しておくべきではなかったのですか?」

「我々の目的は侵略ではない。一方的に命を奪うことは、新たな火種を撒いたり、誤解を生じるだけだ」

「ですが隊長。あの二人、何かに気づいているようにも思いましたが」

「まぁそうだな。もしかすれば、あの二人は勘が鋭いのかもしれん。だが、大丈夫だろう。我々もやましいことは言っていない。故意に我々の問題を広げることもないだろうからな」



 リキルを出てしばらくのこと。

 どうも、部下は私のことを責めているみたいで心苦しい。


「しかし隊長、闇雲にあなたが頭を下げることはよくありません。あのような醜態。隊の士気に関わりますぞ」

「醜態か。私はそんなふうに思っていないし、気には止めていないのだけどな」


 ふむ。胃の辺りに直接刺さってくる。

 私が頼りにしている部下の一人、ハッカイが隣で馬に乗りながらも憤慨し、唸っている。

 心配しすぎだ、と苦笑しながらも頭を掻き、ごまかしておいた。


「お願いですぞ。この老兵としても、あなたの威厳を保っていただきたいのですから」

「老兵って、何を言っているんだ。私はまだお前を便りにしているんだぞ」

「私を頼ってくれるのであれば、お立場を改めてくだされ。もし、あのような姿をカサギにでも見られたならば」

「カサギか……。 奴のことは注視しておくべきかもしれんな」


 自然と頬が強張ってしまう。

 手綱を握る手に、力が入る。


「アオバ、今、奴がいるところはわかるか?」


 ハッカイとは反対にいた、もう一人の部下に聞いてみる。

「もうしわけありません。あの部隊はどうも自由に動いているようで、把握できないのです」

「ーーそうか。これ以上、問題を起こさなければいいのだけれどな」

「えぇ。我々の目的に支障が出なければいいのですが……」

「信じてみよう、奴を。奴も騒ぎを大きくする気はない、と」

「しかし、奴には多少の不安があります。我々の探している物は多大なる物。それを奴が手にしたならば、あわよくば、と暴挙に出てしまいそうで」


 ハッカイの疑念に、唸ることしかできなかった。


「次の町に急ぐとしよう。我々が早く目的を達成できたのならば、それらすべてが杞憂に終わってくれるのだから」



 我々は重大な責務を背負っている。

 それを遂行するには、少しの時間も惜しかった。


「さぁ、次の町に急ごう」


 手綱を引き、馬の速度を速めた。

 それでも、ハッカイは後ろを気にしていた。

 まるであの三人を気にかけるように。


「ハッカイ、あの三人のことはきっと大丈夫だ」

「……しかし」

「それにあそこで、我々の目的を話したとしても、かえって混乱を与えてしまいそうだったしな。何しろ、あの場にいた三人とも、我々を知る様子ではなかったからからな」

「本当に嘆かわしいことです。このように、忍びながら行動しなければいけないことは、心苦しいものです」

「そう言うな。それは時間がいずれ解決してくれるものと、信じることしかできない。彼らに責任はないのだから」

 

 まぁ、二章のエピローグということです。

 

 さて、次回からは新たな章となります。

 もしよろしければ、評価、ブックマーク登録をよろしくお願いします。

 新たな旅の始まりに、背中を押される思いで励みとなりますので。


 では、次回もよろしくお願いします。

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