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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第四部  三  ーー  ワタリドリとして  ーー

 二百三十一話目。

     あ、また私たち置き去り?


 いつの頃から、澄んだ思いで空を見上げることがなくなったんでしょうかね。

 自分に問いながらも見上げた空は、今日も機嫌が悪く、重い雲が立ちこめていた。

 ……幻高森のそばでは当然ですか……。

 森の入り口の忘街傷に出たとき、ふと足が止まってしまう。


「そのようなところにおらず、村に入ればいいのですよ」

「……俺にその資格はないだろう」


 倒れた石柱にセリンが腰を下ろしていた。


「……別に気にすることはありませんよ」

「すまないな。お前にばかり辛いことを任せてしまって」

「いえ、構いませんよ。立場は違えど、あの姉妹を想う気持ちは変わらないのですから。助ける方法を模索した結果ですので」

「すまない」


 気を病む必要はない、と笑うと、セリンはフードを捲り一度頷くと、森をスッと見据えた。

 つい視線を追ってしまう。


「……やはり心配ですか。彼らのことが」


 きっと、キョウ殿を憂いているのでしょう。

 セリンは何も答えず、唇を噛むだけ。


「私も驚きました。まさか、この時代に再びあの姉妹が姿を変えて対峙することになるとは」

「できれば、あの二人には昔の苦しみを忘れて平穏に暮らしてほしかったのだがな」


 ようやく口を開くセリン。その目は充血しているように見えてしまう。


「あなたとレイナのことを思うと辛いですね」

「いや、あいつが苦しまなければ、俺のことなんて構わない」

「優しいてますね、あなたも。でもーー」

「ーーでも?」

「本当に運命とは皮肉ですよ。みな、静かに暮らしてほしいのに、この時代に奇しくも集うようになっているのですから……」

「……それを星が望んでいるのか……」

「……最悪の結果にならなければいいのですが」

「…………」


 そこでセリンは目を伏せ、口元に手を当てた。それは何かを危惧するみたいに眉をひそめる。


「何か不安でも?」

「いや、ミサゴの奴がな」

「ミサゴ? 彼がどうかしましたか?」

「あぁ。ちょっと様子が変でな」

「彼もまた過去の責任を背負っているのかもしれませんね」

「奴の傷か。だがあれは」

「もちろんです。軽い態度を見せながらも、思うところがあるのかもしれません」

「だが、そのせいで追い詰められているようにも見えてしまうんだ」

「……そうですね」

「無茶をしないよう釘を刺すべきかもしれんが、奴の性格を考えると……」


 

 どうも、三章がこれで終わりってことだろうね。

 僕はもう慣れたけどね、こういうの。

 

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