第三部 終 ーー 姉の姿 ーー
二百四話目。
やっぱり寂しいわね。
誰かが欠けたまま話を区切られるのも。
第三部
終
「けど、僕はまだ信じられないね。この子がレイナ?」
ミサゴは意識を失い眠っているエリカを眺め、興味深く眺めていた。
「しばらく一緒に旅してたんでしょ? 気づかなかったわけ? アネモネさん」
棘のある言い方でミサゴが聞いてくる。
ほんと、感に障るわね。
「あのときは、まだ鍵を開けていなかったから、気づかなかったのよ。鍵を開いたとき、私は気づいたけど、彼女はわからなかったみたいだけど……」
まさかこんな形で再会するとはね……。
「でも本当に?」
「おそらくね。エリカはテンペストを感じ取れることができた。それに急にあの大剣を呼んだのだからね」
少し前のこと。
黒く重い雲が立ちこもり、天気が覚束ないなと不安になったとき、背負っていた大剣が急に暴れ出した。
背負った子供が駄々を捏ねるように騒いだ後……。
大剣は導かれるように、天へと飛んでしまった。
何が起きたのかわからなかった。
でも、しばらくして大剣は帰ってきた。
エリカを連れたセリンとともに。
何かが起きたんだと理解した。
「これでよかったの?」
エリカのそばにしゃがみ込むセリンに聞くと、フードをめくったセリンは何も答えなかった。
「ただ、奇妙な話だよね。僕らはこうしているのに、なんでレイナはこうして転生しているんだ? ま、アネモネは別としてね」
「我々は想いがただ、大地に束縛されているのかもしれない」
そこでセリンは静かに呟く。
「ほんと、僕らはどうも未練があるってことなのかな……」
「未練ではない。“想い”だ」
「……そう。じゃぁ、あの裏切り者の二人も“想い”が強いって言いたいのかい?」
「裏切り者?」
「ハクガンとイカルだよ」
あたかも楽しむように、ミサゴは声を弾ませる。
何か間違った方向に行きそうで怖い。
「二人ともそうじゃない。彼らもきっと考えがあるのよ。それが私たちと少し違うだけ。だからきっと、この地にいるのでしょ」
「そうかい? 僕にはただ、意地を張って固執しているようにも見えたけど」
ここで話を切りたくて、つい割り込むけれど、かわされてしまう。
ま、わかってたけどね。
「会われたのか?」
「ええ。ハクガンとね」
「ほんと、僕らに刃向かったのに、エラそうにするなんて勝手だね」
両手を上げ、大げさに困り果てた姿でおどけるミサゴ。
呆れて溜め息をこぼした。
「きっと想いはそれぞれなのよ。それでも、私は私の想いを信じて進むのみよ。きっとね」
「テンペストを止めることも?」
ミサゴの挑発に黙って頷いた。
「かなり難しい道ですがね」
セリンの不安に息を呑んでしまう。
「ええ。わかっているわ」
第三部
了
まぁな。ここで三部も終わりになるわけだし。
では、次回より四部となりますので、よろしくお願いします。
にしてもエリカは……。




