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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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204/352

 第三部  終  ーー  姉の姿  ーー

 二百四話目。

    やっぱり寂しいわね。

  誰かが欠けたまま話を区切られるのも。

          第三部


           終



「けど、僕はまだ信じられないね。この子がレイナ?」


 ミサゴは意識を失い眠っているエリカを眺め、興味深く眺めていた。


「しばらく一緒に旅してたんでしょ? 気づかなかったわけ? アネモネさん」


 棘のある言い方でミサゴが聞いてくる。

 ほんと、感に障るわね。


「あのときは、まだ鍵を開けていなかったから、気づかなかったのよ。鍵を開いたとき、私は気づいたけど、彼女はわからなかったみたいだけど……」


 まさかこんな形で再会するとはね……。


「でも本当に?」

「おそらくね。エリカはテンペストを感じ取れることができた。それに急にあの大剣を呼んだのだからね」




 少し前のこと。

 黒く重い雲が立ちこもり、天気が覚束ないなと不安になったとき、背負っていた大剣が急に暴れ出した。

 背負った子供が駄々を捏ねるように騒いだ後……。

 大剣は導かれるように、天へと飛んでしまった。


 何が起きたのかわからなかった。


 でも、しばらくして大剣は帰ってきた。


 エリカを連れたセリンとともに。

 

 何かが起きたんだと理解した。


「これでよかったの?」


 エリカのそばにしゃがみ込むセリンに聞くと、フードをめくったセリンは何も答えなかった。


「ただ、奇妙な話だよね。僕らはこうしているのに、なんでレイナはこうして転生しているんだ? ま、アネモネは別としてね」

「我々は想いがただ、大地に束縛されているのかもしれない」


 そこでセリンは静かに呟く。


「ほんと、僕らはどうも未練があるってことなのかな……」

「未練ではない。“想い”だ」

「……そう。じゃぁ、あの裏切り者の二人も“想い”が強いって言いたいのかい?」

「裏切り者?」

「ハクガンとイカルだよ」


 あたかも楽しむように、ミサゴは声を弾ませる。

 何か間違った方向に行きそうで怖い。


「二人ともそうじゃない。彼らもきっと考えがあるのよ。それが私たちと少し違うだけ。だからきっと、この地にいるのでしょ」

「そうかい? 僕にはただ、意地を張って固執しているようにも見えたけど」


 ここで話を切りたくて、つい割り込むけれど、かわされてしまう。

 ま、わかってたけどね。


「会われたのか?」

「ええ。ハクガンとね」

「ほんと、僕らに刃向かったのに、エラそうにするなんて勝手だね」


 両手を上げ、大げさに困り果てた姿でおどけるミサゴ。

 呆れて溜め息をこぼした。


「きっと想いはそれぞれなのよ。それでも、私は私の想いを信じて進むのみよ。きっとね」

「テンペストを止めることも?」


 ミサゴの挑発に黙って頷いた。


「かなり難しい道ですがね」


 セリンの不安に息を呑んでしまう。


「ええ。わかっているわ」




                 第三部

        

                  了

 まぁな。ここで三部も終わりになるわけだし。

 では、次回より四部となりますので、よろしくお願いします。


 にしてもエリカは……。

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