第三部 八 ーー 貫くこと ーー
二百三話目。
やっぱり、私ら置き去りな気がするわね。
何度、空を見上げたのだろうか。
そのたびに胸が痛む。
裏切り者。
ミサゴの嫌味はどうしても、鼓膜の奥にへばりつき、消えてはくれない。
彼自身、口角を上げて放つ姿は冗談を漂わせていたけれど、目の奥に隠す意思は私を責めていた。
いや私自身、それを痛感していたのは、それだけ自覚している片鱗が少なからずあったからかもしれない。
私はきっと異端者なのでしょう。
ワタリドリとしての性分は、アイナ様を支えることが使命なのは理解していたけれど、あの方に背き、離れたことが裏切りの何物でもないのだから。
烙印は当然なのでしょう。
空を眺めていると、優雅に泳いでいる雲が羨ましくなってしまう。
みな、あのように自由にすごせるのならば、楽なのでしょうけれど。
アイナ様は心から世界を憂い、救おうとしているのは胸が痛んでしまう。
本当に尊敬しかありません。
けれど……。
だからこそ、自分を犠牲にしてまで世界を救うことに意味があるのですか?
自己犠牲なんて、綺麗な言葉でもなければ、正しいとは思えない。
ましてや、誇れるものではないと思うのです、私は。
だからこそ、今もあなた…… いえ、私たちは苦しんでいるのではないのですか。
私たちは決してあなたを嫌いになったわけではない。
むしろ、あなたを犠牲にならない方法を探したかったのです。
イカル……。
あなたもそう願い、あの大剣を託したのでしょう。
ただ、あなたがここにいないことは、救いでもあるのかもしれませんが……。
残っている私たちは、きっとアイナ様を救わなければいけない。
アイナ様の苦しみはきっと続いている。
だからこそ……。
いや、あの方のことはセリンに任せることにしましょう。
彼なら頼りになる。きっと大丈夫だ。
ならば、私は何をするべきか?
「そうですね。私がするべきことは……」
……これで八章は終わり…… エリカは?




