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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第三部  五  ーー  今、やるべきことは  ーー

 百七十八話目。

   私、置き去り?


 想いが伝わらず、何度も壁を殴って悔しさに打ちひしがれてしまう。

 そんなとき、静寂した廊下の無様な私に、敬礼をする青年がいた。


「あなたがヒダカ隊長ですか?」


 背を伸ばして体勢を整える私に、青年は穏やかに話しかけてきた。

 体格がよく、短髪の金髪が特徴的な青年。まっすぐな眼差しは意思の強さの表れか。


「もしかして、君はアカギ殿かな?」


 揺るがない目に、こちらの声に力が入ってしまう。青年は臆せず頷いた。


「はい。ヒダカ隊長にお伺いことがありまして。突然で申し訳ありません」


 ……なるほど。


 “蒼”とは己の理念に基づき集まった者ばかり。

 それぞれが力の持ち主でありながらも一癖あり、統率が取れない者も少なからずいる。


 だが、この者は違うらしい。


 容姿を見た時点であらかたアカギだと確信を持てたが、このまっすぐな目……。

 ハッカイが慕うことも頷けそうだ。


「あなたに相談したいことがあります」


 新たな問題を突き詰められ、頭痛で頭が破裂しそうだ。

 ハッカイを交えて話をしたいところだけれど、そんな安らぎは許してくれなさそうだ。

 見る見るうちにアカギの表情が険しくなる。


「……幻のなかに隊員がいた?」


 すでにツルギから聞かされてはいたけれど、想像を超えてきた内容に、眉をひそめてしまう。


 アカギの話ではある隊員が、その幻を見て、さらにはそのなかに知人がいた、というもの。


「……確かその者は」

「タカクマと呼ばれている者です」

「ーで、そのタカクマは?」


 そこでアカギは逡巡し、唇を噛んでしまう。


「彼はローズの部下でして、それ以上詳しくは話せていないのですが……」


 逡巡する意味をすぐ理解した。


 ローズ……。


 彼女のことも踏まえ、我々“蒼”すべてにおいて、考えねばいけないのかもしれない。


「君は今、“蒼”は何をするべきだと考える?」


 唐突すぎるのは承知している。言葉が浮つきそうだ。

 それでも聞かずにはいられない。

 すると、アカギは鼻頭に手を当て思案していた。

 しばらく目を泳がせていたあと、顔を上げ、まっすぐな目を向けてきた。


「我々“蒼”は武力によって統率を進めるべきではなく、テンペストを含めた不安要素を一つずつ取り払うべきです」


 嬉しかった。

 迷いなく告げられる決意を賞賛したくなる。

 まったくその通りだ。

 過去の遺恨に縛られ、世界を恨むべきではないのだ。

 ツルギよ、お前はわかっているのか……。

 

「まったくその通りだよ」

「なら、今我々がするべきことは……」

「アカギ殿。君に頼みたいことがある」

「ーーはい?」

「君にはリナ…… リナリアを捜してほしい。恐らくアネモネは今は無理かもしれんが……」

「それはもちろん、そのつもりでーー」

「いや、そうじゃない。大剣を奪った罪人としてではなく、世界の今後について相談するべき人物としてだ。テンペストについてもな」


 そうだ、ちゃんとあの子らとも話すべきなんだ。

 確かに今は、こんな話をしている場合じゃないのに……。

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