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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第三部  四  ーー  伝わる決意  ーー

 百七十二話目。

    ようやく、難しい話は終わり?

     私の出番は?


 テンペストを追って探している。


 信じがたいが、彼らに迷いはない。

 言葉だけを聞けば、無謀であり、愚かな挑戦なんだと、大人の私としては制止しなければいけないかもしれない。

 ただ、話を聞いている限り、興味や好奇心だけで動いているわけではない、と伝わってきた。


 盲目で姿が見えなくても、迷いのない雰囲気に胸を突くものはあった。

 胸の奥から心臓を握られてしまう。その息が詰まる思いに。


 テンペストを恐れないのか……。


 ナルスの町の住民が過去の行いに絶望し、テンペストに対して覚悟を抱いているのとはまた違っていた。

 それはどこか闇に隠れた光、影に覆われた町を照らそうとする、光を探しているようにさえ感じられた。

 いつしか忘れ、失ってしまった光を思い出させてくれそうで、嬉しくもあり、つい笑いそうでもあった。


 熱意に似た想いはいつ捨ててしまったのだろうか。


 いや、私自身そんな想いを抱く資格しら、すでにないのかもしれないが。


 テンペストに絶望を抱く町だと私は思う。

 それは、過去からの行いがそう諦めさせているのだろう。

 それでも昔、彼らと似たようなことを言っていた子供らがいたな。

 その子供たちも、町のあり方、捉え方に憤り、よく想いを私にぶつけてきたものだ。

 そのときも嬉しかった。

 憎悪がうごめき、闇に染めていたナルスの町を憂い、変えようとしていた。


 彼らは今、何をしているのだろう。

 自分たちの想いを果たそうと、動いているだろうか?


 ダメだな。

 若い子たちの想いに触れてしまうと、私自身感化されそうで、胸の奥がざわめいて熱くなってしまう。

 つい胸に手を当て、そのまま掻き毟りたくなってしまう。

 そんな資格なんか私にはない。

 と罵り、痛めつけるために。

 それでも微かに望んでしまう。

 もう一度、光に触れることはできないだろうか。

 想いを強くする彼らの顔をこの目で見たくなった。

 叶わないと痛感しながらも。

 

 さらに懐かしさが拍車をかけてくる。

 昔、己の想いをぶつけていたあの三人の子供たちはどうしているだろうか、と。


 名前はなんだっただろうか……。

 終わるからって、喜ぶな。

    話は重要なんだからな。

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