第三部 第三章 10 ーー テンペストの跡に (2) ーー
百六十三話目。
テンペストって、何がしたいの?
「……そもそも、忘街傷がなんなのかもはっきりとわかっていないし」
だよな、と口元を手で覆い、唸ってしまう。
「先生の家で見た地図には載っていたよね、忘街傷があった場所に知らない町の名前が」
「……忘れられた街ってことか。皮肉しては毒が強いよな」
忘街傷にテンペスト。
今さらながら、目に見えない因果関係を疑いたくなる。
「……そう考えたら、確かにそうよね」
それでもやっぱり、テンペストが忘街傷を狙ったのか?
「ーーん?」
また混乱に襲われ、頭を抱えていると、遠くに佇んでいたエリカが窪みに降りてきた。
その手には何かを掴んでいる。
「何それ?」
メガネをかけ直したリナに、エリカは手にした物を持ち上げる。
「ーー剣?」
右手に持っていた物を眺めた。
エリカが手にしていたのは、一本の剣。
だが、それは刃先は根元のところで折れており、全体的に錆が回って茶色く汚れている。
かなり年季が入っており、ボロボロとなっていた。
「これは?」
「このクレーターの縁のところに埋もれてた」
「落ちていたってこと?」
リナが疑問に、エリカはコクリと頷き、直前まで自分が立っていた場所を指差した。
「落ちてた? でもテンペストが全部えぐったなら、なんでそんな物が落ちてるんだろ?」
「それとも、地下深くに埋もれていたってことかな? この剣もかなり古そうだからな」
エリカから剣を受け取り、錆びた剣を眺めていると、疑念が強まってしまう。
「ほかにもあるってことなのかな?」
「ってか、そうなら、ここは元は人がいたってことなのかな」
しばらくしてのこと。
ほかに何か埋もれていないのか、探してみることにした。
「……なんか、嫌な感じだよね。元々からあったってことなのかな……」
「そうなるかもね」
手にしたのはいくつかの武器。
どれも錆びていてボロボロで、刃の部分だけが残っている。
そんな印象を抱いてしまう。
「これって剣? いや、矢の先端かもしれないな」
これまでテンペストに襲われた場所を眺めてはいたけれど、それまでとはやはり異質さを漂わせていた。
因果関係……。
考えると頭が痛くなりそうだ。




