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忘却のテンペスト  作者: ひろゆき


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 第三部  第一章  2  ーー  完全復活なのか  (2)  ーー

 百三十九話目。

    やっと、私の出番?


 リナに連れられて来たのは洞窟。

 しばらく僕が眠っていた場所に……。 

     

 エリカはその洞窟の奥に佇んでいた。

 背中はなぜか小さく見えてしまう。

 天井か抜けて、外の陽が射し込んでできた淡い光の柱を見上げて。

 そばにはミントと呼ばれた女の子が小さな泉に咲く花を摘んでいる。

 あの花は大剣によって、再び咲き出したんだと聞くと、やはり不思議だ、と一言では片づけられられない気がした。


「もう体は大丈夫なんですか?」


 こちらに気づいたミントは立ち上がり、胸に多くの花を抱えながら、満面の笑みを弾けさせた。

 屈託ない笑顔に、不安が消えてくれてこちらも頬が緩んだ。


「ありがと。君のおかげで、僕は助かったみたいだし」


 隣ではお礼を促すように、リナは顎をクイッと動かし、僕を急かしてくる。

 どうも得意げに胸を張る姿は、どこか癇に障るのだけれど、ここは素直に従っておこう。

 いつしか僕は逆らえなくなっている……。

 まぁ実際、この子のおかげで助かったのは事実なのだから。


「いえ。私はただあなたたちが剣を持っていたから……」


 なんだろう。やっぱり僕を助けてくれたことに、どこか理由があるのか、それまでの表情が嘘みたいに曇り、目線を逸らしてしまった。

 どうも、このことには触れるべきではないのだろうか……。


「っと、エリカ。お前は何やってんだよ?」


 急によそよそしくなるミントを気にしつつ、エリカに声をかけた。

 するとエリカはキョトンと間の抜けた顔を向けてきた。

 エリカだけはまるで独自の時間が流れているようだ。


「……なんとなく、ここって落ち着くから」

「珍しいわね。ずっとキョウのそばにいるんだと思っていたけど」

「なんだよ、それ」


 どこか含みのある笑みを注ぐリナを軽くあしらい、エリカを見るけど、呆然としている。


「……あの」


 エリカの能天気とも取れる姿に、頭痛が襲いそうなとき、ミントが申し訳なさげに声をかけてきた。

 だらしなく下がっていた眉が上がり、眉間にシワが寄る。


「あの、エリカさんの踊りって、何か意味があるんですか?」


 踊り?

 問われてエリカを眺めると、エリカは何食わぬ顔で天井の岩の窪みを眺めている。

 また踊っていたのか。でも珍しいな。こんなところで?

 普段、エリカは見晴らしのいい外で踊っていたはず。

 しかし、ここは周りが囲まれているのに。


「どうなの、エリカ?」


 何度似たことを聞かれたんだろう。もう半分は慣れたけれど、答えようがないんだよね、やっぱり。

 実際、リナに問われたエリカは相変わらず呆然としている。


「ーーミントッ」


 こいつの気分次第。

 と呆れて答えようとすると、洞窟の入口から、誰かが呼びかけた。

 振り向くと、二人の子供が恐る恐る近寄ってきた。

 どこか怯えて見えるのは、僕らが原因なのか……。

 僕らに気づいた二人は、より身を縮め、小動物が獣に襲われるみたいに目を吊り上げた。

 なんだ? もしかして、リナが怪力で住民を従わせたのか……?


「……目が覚めたんだ。だったら、長老の部屋に。話があるみたいだから」

 その割には、どうも素っ気ないじゃないか?

 腹でも減ってるのか?

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