トラックに轢かれたが異世界に転生する事は無かった模様
「んごっ……?」
意識を取り戻した俺は自分に意識がある事に驚く。
しかし同時に身の危険を感じたのだ。
「おごごごっ!?」
何かで塞がれてるのか息が出来ない!
口、耳、鼻、肛門に何かの異物が敷き詰められている!?
俺はがむしゃらに異質の苦しみから逃れようと頭をぶんぶんと左右に振るう。
「ぶべっ!? あばっ!?」
物理的に頭を振り払ったら俺の顔面がざらつきのある壁に強く擦り付けてしまった。
そのせいで余計に苦しみ悶える。
「ぶおおおおお!!」
埒が明かなくなった俺は視界に広がる白い壁を蹴破り起き上がったのだ。
そして俺は見覚えのある天井を見上げる事になる。
此処は……?
「ぶしょん!? ごほ!?」
俺は反動で鼻と口から何かを吐き出した。
「これは……綿?」
それは敷き詰められていた綿だった。
俺は鼻を擦りつつ天井を凝視する。
「此処はベルモ◯ー会館の天井か?」
見渡せば見慣れた物が置かれている。
そして嗅ぎ慣れた空気と違う事空気が漂っている事にも気付いた。
「煙臭っ」
蚊取線香でも置いてるのか?と言いたくなるぐらいに酷く煙いのだ。
とう言うか何で俺はこんな所で寝ていたんだ?
しかも安置されるような形で。
確か俺はトラックに轢かれて死んだ夢を見ていた筈では?
ふと俺は立ち昇る煙の匂いの元を目で追った。
そこには供えられていたであろう線香があった。
線香の傍には寝ていたであろう俺の棺桶があった。
「はっ!? 棺桶!? 棺桶だとっ!?」
嫌な予感が脳裏によぎった俺は棺桶を飛び出て走り出す。
目的の場所は風呂場の洗面台。
其処には鏡が置かれているのだ。
「……」
鏡に飛び込んだのは恨めしそうな顔をした死装束の男。
額には例の三角の布を結びつけてある。
そう……俺の見た夢は現実だったのだ。
俺は確かにトラックに轢かれて死んだらしい。
そして生き返ったのだ。
どうやら俺は自宅安置されていた所を蘇生してしまったらしい。
俺はたまらず鏡をグーパンする。
ドゴッ! ドゴッ!
ブッブッブッ!
グーパンする度に肛門から屁が出る。
「ふざけんじゃねえ!! 異世界転生するなろう系小説じゃねえんだぞ!! そんなのはラノベの中だけにしやがれ!?」
ヘナチョコパンチを一頻り放ち終えると意気消沈でトイレを後にする。
プゥ〜……。
透かしっ屁をすると肛門の綿がポトリッと落ちたのだった。