表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

佐藤かおるとの初デート

【気がつけば、デートの約束】

親父にカメラ持っているか聞いたら、うちには『写ルンです』しかないって言われた。昔あったフィルムカメラはとっくに壊れたらしい。いくらアラフォーまで人生経験を積んだ俺でも『写ルンです』で写真部の撮影会に行く勇気がない。机の引き出しにあった俺の通帳見てみると、こいつ(俺自身のことです)、意外と貯めているじゃないかと自分自身に感心した。これなら一眼レフの入門モデル程度(ズームレンズ付き)は買えるだろう。まあ小遣いは参考書買う以外は、弁当のない時のお昼に使うか、佐藤とたまーにお茶しに行く時ぐらいでしか使わないので、貯まるのは当然か。ちなみに佐藤とは遊園地に行ったり、映画館に行ったりなどのいわゆるデートはいまだ実現していないはず。多分デートしていたら佐藤の顔見た瞬間に思い出すだろうから。きれいな子をデートに誘うのはボッチに荷が重いのです。

今日明日にでもカメラ買いに行くか。入部の締め切りはあってないようなものだが、佐藤にも迷惑かけるし他の部員の手前、ずるずる延ばしていても仕方ない。


登校時にたまたま下駄箱で安藤に会ったので青山の様子を聞いてみた。青山、安藤の前に座っているからクラスの男子の中では安藤が一番よく青山と話しているのではと思う。俺?当然話したことなんかありませんよ、当り前じゃないですか。ボッチとリア充は住む世界が違うのです。青山とは高1の時のクラスも違うし。

サッカー部で部長をいよいよやるらしく、また新入生の部員等も入ってきて結構張り切っているらしい。青山の目標はとりあえず地区大会ベスト8ってそんなに強かったっけ?サッカー部。青山目的で入ったかわいい女子マネもいるらしく、練習後はたまにデートに行っているらしい。前にも言ったかもしれないが2年E組の一部の女子からも人気です。

「青山って、佐藤とどうなの?」

「どうって何が?佐藤と仲がいいお前の方が知っているんじゃねーの?」

「いや、青山、佐藤のこと気にかけているのかなって?」

「そんなこと、俺にわかるわけねーだろ。あいつから佐藤の話なんて出たことねーぞ。むしろサッカー部の女子マネの話バッカ。ところでお前はどうなんだ。落雷の時、佐藤と熱い抱擁交わしていたじゃねーか」

「バカ、あれは不可抗力だろ!」

「まあ、お前ら仲良いからな。実は俺も今、狙っている奴いるんだよ」

「おーっと、誰々?」

「うちの焼鳥屋にバイトに来ている女子大生の渚おねー様♡」

ごめん、安藤。その恋、実らぬ恋だぞ!お前にこれからできる彼女の名前、たしか名前違った。まあ、すでに俺の記憶と今とではずいぶん様子が違うのだが、でも、たぶん、それはない。そうこうしゃべっているうち、教室に着き、俺らは別れて自席へ。

HRが始まった。


晴れていれば校庭の端にある芝生のスペースでボッチ飯というのが俺のお決まり。雨の日は仕方ないから教室だけど。女子は仲いい子が集まって席くっつけてランチというのが多く、だったら、俺の席を無料開放。うん、うん、役立っている。ボッチ飯は人の役に立つのです!

今日もボーと昼連している連中横目で見ながら食べていると佐藤がやってきて隣に腰を下ろした。え、何で佐藤この場所知っているの?と思ったが多分高1時代からここが俺の指定席だったのだろう。ほんと人格は変わらないなぁ。

「おう、どうした?」

「部活どうするの?お父さんのカメラあった?」

「写真部は入るよ。カメラ、うちには『写ルンです』しかなかったので今日明日にでも買いに行こうかなと」

「だったら一緒に買いに行かない?私もカメラ欲しいかなって」

「お父さんのカメラ、貸してもらえないの?」

「うーん。難しいかも。やっぱりお父さんのだし、お父さん、週末は使いたいって。その代わり使ってないレンズはご自由にって言われた」

「じゃあ次の週末、一緒にカメラ、買いに行く?」

俺は一人で買いに行くのをやめ、佐藤と一緒に週末に買いに行くことにした。

通帳に記載されていた俺の預金額、自分で貯めた覚えが全くないからちょっとした臨時ボーナスが入った気分なのですよね。なので、買い物の際は佐藤に飯でもおごってやるか。アラフォー時代はそんな余裕はなかったけど。


【佐藤かおるとの初デート】

10時に駅で待ち合わせ。佐藤の家に誘いに行ってもよかったのだが、しおりちゃんが出てきたらまずいと佐藤が強く言うので。一緒に電車に乗り、ターミナル駅で降り、さっそくカメラの機種が豊富に置いてある家電量販店へ。そう、ここはアラフォーの俺がカメラの部材を買いにたまーに来ていた場所なのでよく知っている。一眼レフのデジカメないな、そう、まだこの時代は画素数の関係で一眼レフはデジカメよりフィルムカメラが幅を利かしていたのです。俺は予め放送室のPCで調べておいたカメラを確認。俺の予算的には、うん、問題なし。『佐藤はどうする?』と隣にいる佐藤に問いかけると、一緒のカメラで良いとのこと。ペアルックでなくペアカメラですね。予算的に明るいズームレンズは選べなかった。ちなみにカメラは佐藤パパが使っているメーカー製で俺もアラフォーの時はそれを使っていたから問題なし。メーカーが変わると、そもそもレンズが転用できないのです。佐藤も俺と同じセレクション。偏向フィルターを付けてフィルムを何本か買って、無事お買い上げ。まあ、これで写真撮影として形にはなるだろう。ネガフィルムが一般的だけど、おれは相馬さんからHPに載せる花の写真撮影もお願いと依頼されていたのでポジフィルムも買った。

お昼奢るよと佐藤に声をかけて、近くにあるビルの中にあるレストラン街で初めて佐藤と2人での食事となった。いくら学校ですぐそばに座っているとはいえ、外で2人きりでの食事は初めて。高校生の俺が緊張するのは致し方ないとしても中身がアラフォーの俺が緊張するのは情けない。この手に関してはすっかりご無沙汰だったのです。なお、俺の名誉のために言っておきますが、遠い過去に彼女がいたことは、あります。もちろんアラフォー佐藤とは別人物。生活やっていけるのかと当時の彼女の親御さんに反対され、ジ・エンド。思い出したら情けなくなる。今でもあまり変わらないけど。

佐藤も緊張しているらしく、真っ赤だった。

食事が終わり、『これからどうする?』と聞くと『映画が見たい』と佐藤が小声で答えた。いよいよこれってデートですね。初デートの映画は俺が既にDVDを借りて見たことのあるディズニー映画にした。ということで、俺は何度も見てはいるがこの時に佐藤と見た際はロードショーでした。まあ、面白いことは知っていたので(これって一種のカンニング?)、佐藤には喜んでもらえた。逆に俺は内容知っていたので睡魔に襲われ、ほとんど寝てしまった。寝たこと、バレてはいないとは思うけど。いくらヘタレでも女子と手もつなげない情けないアラフォー(いや、これはオヤジのJKに対する犯罪ですかね?)ではないと自分に言い聞かせ、佐藤と手をつないで、帰宅の途に就いた。佐藤を家まで送ると、玄関前でまさかのハグをされてしまった。『しおりへのけん制よ』とは言っていたが。

俺が知っている20年前の佐藤との関係から考えると信じられないぐらいの展開で頭が追い付かない。どうもアラフォー佐藤の手のひらで踊らされている感じ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ