相馬和泉との接点拡大
アップした原稿からちょっと変更しました。女性陣の容姿、自分の部分もちょっとだけ記載しています。
【失われた記憶はどこに】
相変わらず目が覚めると、自分はやっぱり高校生、アラフォーには戻っていない。
このところよく考えていることがある。俺が高2として始業式の前日に病院で目が覚める前の俺ってどうなっちゃったの?
佐藤の家で倒れた夢は見たが、どうやらそれは実際にはここで起きた現実らしく、だったらアラフォー時代が夢だったのかというと、そうではない。ちゃんと幼い頃からの記憶はありますよ。とはいえ記憶力が抜群に良いわけではないので大半はうろ覚え。仮にその記憶は間違っている、こうだったと否定されると、そうだったかなと自分の記憶に確信が持てず、すぐ信じてしまうのだが。
話を戻すと、佐藤の家で倒れる前の高1の俺の記憶があやふやなのである。
かといって、先日、母親が忙しくて弁当用意できなかったので、食堂に昼を食べに行った際、ディスプレイされている食品サンプルを見て、そういやこの醤油ラーメン、こないだ食った時くそまずかったぞ、などとふと思い出したりするなど記憶が全くないわけではなく、何かきっかけがあれば記憶が戻ってまざまざと思い出すのである。ちなみに、その時は醤油ラーメンではなく定食を食べました。定食もいまいちだったけど。
ということで、俺なりにこの状況を整理すると、この高2の俺の身体にアラフォーの俺の記憶や体験などが上書きされているみたいで(この身体にとっては未来の出来事なので上書きとは呼べないか?もちろんアラフォーの俺が覚えている通りにことは進んでいません)、高2以前についてはこの身体が覚えている記憶は海馬のどこかにちゃんとメモリーされていて、何らかのきっかけでまざまざと思い出すのではと、結論づけた。もしかして、佐藤の手料理食べたら、佐藤が料理研究会に入っていたことなど、思い出すのだろうか?でも、俺から佐藤に手料理食べさせてと言うのは、うーん、そんなこんなで佐藤と付き合い始めたら、青山から絶対決闘申し込まれそう。まず、俺、負けますね、その決闘。佐藤の手料理食べるのは、機会があったらにしておいたほうが、無難、無難。ほら、君子危うきに近寄らずと言うじゃないですか。
そう考えると、なんとなく納得できることがある。俺がアラフォー佐藤と飲んだ後に気を失い、うっすらと気付いたベッドの上で脳波計(あれは俺の記憶をコピーするモノか?)を付けていたような記憶や、俺が高校生として目覚めたのは病院(そこでアラフォーの俺の記憶が高校生の俺にリロードされた?)だったことなど。
だが、確認すべき手段はなく、唯一の手がかりの佐藤に『佐藤、お前、俺に何をした?もとの世界に戻せ!』と怒鳴っても、この佐藤、アラフォー佐藤と違いおしとやかでまた俺のように記憶が飛んでいる様子もない。しかも俺に好意を寄せているとなればそんな子を怒鳴れませんよ。泣かれたらすぐ、『ごめんね、俺が悪かった』と慰めるしかないじゃないですか。これじゃ何にもわからん。
ちなみに俺の人格についていうと家族や周りから指摘されたことは全くない。つまり『お前先日までリア充だったのにいきなりどうしたよ?』などと言われたためしがなく、このボッチキャラで周囲に何の違和感もなく溶け込んでいる。家族からも「健一あんた最近ちょっと変よ」などと指摘されたこともない。たまに『こないだのこともう忘れたの?』と驚かれたりはするが、それは先ほどの理由で。
【相馬和泉との接点拡大】
今日は委員会活動の初顔合わせということで、放課後に相馬さんと一緒に放送委員の集合場所である放送室に向かう。相馬さんとは高2から一緒のクラスになった。そういや相馬さん、相馬和泉って名前だったなと、隣を歩いていてふと思い出した。はて、何故だろう?始業式のHRでの自己紹介の時には全員を覚えきっていない、だって知らない生徒が大半だから。そういや声に聞き覚えがある。確認すると相馬さん、高1の時も放送委員だったそう。別に相馬さんに校内放送で呼び出し食らって職員室行ったわけではないと思うがお昼の放送などで記憶していたのだろう。ウグイス嬢の声はいやされますからね。でも、相馬さん、声と似あわず見た目はすっきりした容姿で、どちらかというとカッコいい。せっかくのその声とのギャップに違和感があるとのこと。
「相馬さん、カッコいいですね。身長いくつ?」
聞くと168センチとのこと。俺は174センチなので、彼女がヒールをはくと俺とあまり変わらないのでは。そういや佐藤は162センチで、須藤さんは少し小柄の156センチ。
「あら、清水君だってカッコいいわよ。かおると仲が良いので他の女子はなかなか清水君に話しかけるきっかけがないみたいよ」
相馬さんがお世辞を言ってくる。相馬さん、実家は花屋とのことで『小さい頃からお店を手伝っているの』と言っていた。だからお世辞もうまいのですね。
放送室に着くと、すでに大勢集まっていた。各クラスから2名なので高1~高3まで入れるとまあまあの数になる。まあ、今日は初顔合わせということで、皆さん出席だけど、委員会活動って、いつの間にか人がいなくなりますからね。次からは少ないだろう。特に高3は2学期にはほぼ引退状態。顧問の先生から挨拶があり、簡単に自己紹介(クラスと名前名乗る程度)の後、委員長の決定。委員長になったのは去年も放送部だったという高2の別のクラスの男子生徒。もちろん名前も顔も知りません。ちなみに相馬さんは誘われたけど実家の手伝いを理由に断っていた。次はローテーション決め。朝会の時と、お昼、下校時ということでローテーションが埋まっていく。1年A組から順に決めていって、俺たちの当番は、4月は2回だった。
その後、機材の操作説明を受けていると、俺はPCがあることに気が付いた。おっと、Windows98じゃないですか。家のPCもそうだったけど。一通り機材の説明が終わった後で、PC起動してみていいですかと顧問の先生に断って起動すると、懐かしい。デフォルトのブラウザがネスケじゃないですか。ネスケ、いまはいろいろあって、Firefox。ちなみに家のPCのデフォルトブラウザはIEだった。IE、歴史ありますねぇ。今やエッジに切り替え推奨されているけど。
「清水君、PC得意なの?」
相馬さんに問われて『まあ、結構使っていたかな、Windows98はさすがに今使えないけど』などと答えようとして、今はこれが先端(いやMeか?またはXPが出ているかも)のOSで、俺は家に共用PCが置いてあるチープな環境の高校生だったことにはたと気づいた。
「お父さんがPC持っていてちょっと使わせてもらっているんだよ」
「うちの花屋でHP作ろうと思っているのだけど、よかったら手伝ってくれない?
うちのPC、暇なときに使ってもらってもかまわないわよ」
この提案には2つ返事でOK。やっぱりPCでネットにアクセスしたいじゃないですか。携帯電話も持っていないし。家だとダイヤルアップだから遅いし、金かかるし!
ちなみに放送室のネット環境、ヤフー!BBのADSL。ちょっと校長、駅前で『ADSLいかがっすかー』と駅弁売りのようにADSLばらまいている人から機器、ゲットしたわけじゃないでしょうね?ちゃんと学校として判断して導入したのでしょうね?光だったらよかったのに。
ちなみに、放送委員になろうと思ったきっかけの生徒の名簿は、顧問に言うと簡単にコピーさせてもらえました。そういやこの時代の個人情報の管理、ゆるゆるだったからね。