1:旅の仲間たち 1
この度はぶれいぶすとーりー!2 ~佐藤唯は勇者です~1:旅の仲間たちを読んでいただきありがとうございます。
今回は、唯とその仲間たちの出会いについてを書かせていただきました。
唯は羽陽曲折あり、旅の道連れとなったロビン、アリア、セイラ。今後はどうなるんでしょうね?(投げっぱなしジャーマン感)
またまた拙い文章になってしまいましたが、1:旅の仲間たち書きあがりました。
そんな、ようやく動き出したシリーズですが、応援していただけると幸いです。
第1章 旅の仲間たち 1
わたしの名前は、佐藤 唯。身長は162センチ、おかーさん譲りで、そこそこないすばでぃーで色白さんだと思います。
悩みは身長があるのでー、っといつも言い訳していますが、少し体重があるのを気にしているくらいなもので、普段は学校行って友達と昨日のテレビについてしゃべったり、放課後はマックに行って今日学校であったことをしゃべったり、夜は友達とラインで恋バナをしたり、そんな感じです。
家族構成は、おかーさん、お父さん、わたしの三人。
お母さんの鵜鷺さんは、背が低くてかわいいけどないすばでぃー、そして色素が薄く真っ白。お父さんの孝宏さんは、中肉中背で成人男性平均取ったらこんな感じの顔になるんじゃないかなって感じ、そして隻腕の自営業。
夫婦仲は付き合い立てカップルのようにアツアツ、それでいて熟年夫婦のような落ち着きもある。
そんなどこにでもある普通のおうちに産まれた、普通の女子高生!
「やっばい!遅刻遅刻!」
ベッタベタな出会いのシチュエーションのように家を飛び出す。
「もう!どうして、おかーさん起こしてくれなかったのですかー!」
恨みつらみを言いながら学校に向け、流れる景色を追い越そうとひた走る。ここまでベタをしているのだから運命の赤い糸が小指から垂れ下がった人が曲がり角から出てきてごっつんこ。転んでパンツ見せて、転校生。なんであんたがここにからフォーリンラブしてしまう。
しかし、こと彼女においてはそのようなことにはならない。
もちろんこんな展開なので、十中八九よけれないタイミングで人が飛び出してきてしまう。
「よっと。失礼しましたー!」
ベストタイミングの出会いをなんの危なげもなく避け、軽く謝りながら走り去っていく。
物心ついたころから、いろいろな武道というものをたしなんできた。母親譲りの高い身体能力と高い動体視力は、いろいろしてきたことも相まってか、空手においては神童と呼ばれるほどだった。
しかし、そんな彼女は高校入学と同時にぴったりと、空手を含むすべての武道というものをしなくなった。
理由としては普通の女子高生をしたかったから。
たかがそんなことで?とあきれるかもしれないが、彼女にとって普通の女子高生をやるためにも、県選抜や全国大会、ましては世界大会の日本代表になんぞ選ばれるわけにはいかない。
そんな武道で身に付けた鋼の意思を、武道をしないという決意に向けた。
「何事もほどほどが一番です」
彼女は誰にあてたわけでもなく、ただただ自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
普段より少し家を出るのが遅くなってしまったが、ぎりぎり3分前には校門につき、1分前には教室のある2階につきHRのチャイムが鳴るころには着席できそうです。
今日もいつもと何ら変わらない一日を、予感させるには十分すぎるほどだった。
そんな唯を襲う転けたとも違う日常においては感じることのない落下感、とでもいうべきものが彼女に急に襲い掛かる。
先ほどまで横目に見えていた大きな国道はなくなり、目の前は空。眼下には森。
眼下にあったはずの森は急速に近づいてくる。もちろん近づいて行っているのは落下している唯の方で地面ではない。
しかし、唯の人生において体験したことのない感覚は、彼女にそのように錯覚させた。
「きゃぁぁぁぁあああ!!!」
あまり甲高い少女特有の声を出すことのない彼女にしては珍しく、全力の悲鳴だった。
この時初めて彼女は自分の良すぎる目を恨んだ。あまりにも良すぎる動体視力はこの瞬間に覚醒し、今まで以上に、すべてが鮮明に見えるようになってしまった。風に揺れる草木の葉一枚一枚まで。
腕で頭を覆い落下の恐怖に備えた。彼女の耳に届いた音を文字に起こすと、
ビュオオオオ!!ガサガサガサガサーー!ドォオン!
そんな感じだった。
「あいたたた。ここはどこでしょうか?」
どのくらいの高度から落ちたのか皆目見当もつかなかったが、まず間違いなく死ぬ高さだった。
なぜ死んでいないのか不思議なほど落下したはずなのに、彼女は生きていた。
まだ生きているという自覚は、女の慌てふためきたい本能を無理やり鎮める。
冷静でいることに努めたからこそ、まずは現状の確認から始めた。あたりを見渡しても木、木、木。上を見上げれば葉の隙間からわずかにのぞく青空。それ以外の情報はここにはなかった。
植物学に明るいわけでもない唯に植生がどうとかで場所の判断なんてできる訳もなく、徒労に終わる。
「なんだ! おたく!?」
「おわっ! びっくりしました。あまりにザ・迷彩。実にこの森になじんでいて気が付きませんでした」
彼女は、グルーっとあたりを一度きちんと見渡していたが、それでも気づかないほど完璧な擬態だった。
「お、おう。んでおたくはなによ?」
「あ、はい。わ、わたしは佐藤唯です。東山高校に通う2年生で、趣味はとくにはありません。身長は162センチで体重とスリーサイズは秘密です」
唯は焦りのあまりか、普通なら絶対にしないおかしな自己紹介の仕方を選択した。
先ほどまで冷静に現状把握に努めようとしていた唯だったが、急に人に出会ってしまったがためか冷静さを若干欠いていた。
そう、彼女は若干のあがり症なのだ。
「サトウユイ? 珍しい名前だな?」
「そ、でしょうか? とても一般的な名前じゃないでしょうか? 一般という教科が存在していたら模範解答百点満点レベルです」
そう、彼女は若干のあがり症なのだ。
特に、知らない人と会話をしなければならない時、会話のキャッチボールをきちんと繋ごうとするあまり、食い気味で返答をし受け辛いボールを投げてしまう。
唯自身そんなことはよくわかっているのだ。
元来の性格からいえばかなり明るくお調子者な部類の唯が、おとなしめの女子グループに属している理由はここにある。
高校入学時にみんな少数のグループを作ると思うが、あがり症の唯は誰とも話せずにいた。
そんな唯と仲良くなったのは同じように、上がり症の椎葉さんだった。
出席番号も近く、似たような性質を持つ彼女たちは、類は友を~とかスタンド使いどうしは~みたいに、仲良くなるのに時間はかからなかった。
若干というかかなり食い気味返答してしまった唯は、それに気づいた。
ばつが悪そうに軽く咳払いし、呼吸を整えこちらから打って出ることにした。
「……コホン。あ、え、え~と。あなたのお名前をお聞きしていませんでした」
「……ん? あ~、俺か。俺はロビン。クルス村のロビンだ」
若干呆けていたロビンは少し返答を遅らせてしまったが、しかっりと答える。
ロビンと名乗った男は年齢としては20半ばといったぐらいだろうか。落ち着きのある雰囲気というのではなく飄々としていて若干胡散臭く感じるが、声音からはあくどい人間のようには感じられなかった。
スポーツか何かをしているのか、かなり引き締まった体をしていることが葉っぱの迷彩を脱いだことで分かった。
見ると、矢筒と弓道において用いられるユガケと呼ばれる手袋、葉っぱの迷彩に隠れていて分かり辛かったが弓があり、このことから狩りをしていたことが分かった。
「ロビンさんですか。かっこいいお名前ですね」
「おう、ありがとよ。んで結局おたくは何よ?」
「私は学生です」
「オーケーだいたい分かった。おたくは異世界人だな。よくあるんだよなこの森だと。そんでだからこそ、俺がいるわけだけども」
「……?」
唯はあがり症なだけで、基本的には達観している。
だからこそ、何言ってんだこのおっさんいい年こいて中二病拗らせてんのかよ痛てぇ~。みたいな表情が、非日常に置かれて出やすくなっていたのかもしれないが、もろに顔に出てしまった。
「お兄さん傷つくな~」
ロビンは、表情から透けてみていた唯の思考に答え、自分の名誉を守るためにあえて強調して答えた。
「あっ!ご、ごめんなさい……」
「まぁいいさ。付いてきな。君らの世界と違うかは知らんが見せてやる」
移動のさなかロビンは唯にいろいろなことを語った。
「この森はよぉ、まぁぞくに言う迷いの森みたいなもんでよ。人が消えたり、逆に人が現れたりするってやつよ。世界各地にこういう場所は点在すんだけどよ、でだからこそ管理者が必要なわけよ。んで、ここの管理者が俺ってわけ」
「……」
「んで、さらにいま世界は未曽有の危機ってわけよ。原因はこの森を抜けた先ですぐに目につくからまたあとでいいや」
唯はあまりに突拍子のない話に返す言葉を持つはずもなく、黙って聞き続けた。
どうやらこの世界は滅んでしまう~とか、語られてもよくわからないのだ。
またロビンの話し方にも問題があった。
彼自身、性格から飄々とした話し方をしてしまうし、この世界において世界が滅びかけたり、実際に滅んでしまうことは割と日常的に起こっていた。
よって、慣れていたのだ。世界の危機という奴に。
この森の管理者ロビンと一緒だと、迷わずに森を抜けることができた。
森を抜けるとすぐ村があった。
ある程度間隔をあけ建つ、赤レンガを土台として土の漆喰の壁。
屋根には赤い焼きレンガに煙突。
壁に立てかけられように置かれた鍬に手押しの荷車。
切り株のような土台に刺さった斧。
近くに壁に沿うように置かれた薪。
収穫の時期にはまだまだ早く、緑色で穂の垂れていない小麦と収穫時期のトウモロコシ。
ザ・農村。中世を舞台に置いたRPGによくあるあれ。想像するならそんな感じ。
日本じゃまず見られないかなり物珍しい光景だった。
しかし、唯はそんな物珍しい光景には目をとめない。
誰だってこんな村なんかより先に目がいく。
圧倒的に高く、そしてでかい。雲などはゆうに突き抜けているだろうが、雲一つない晴天のおかげでよく見えた。
離感がつかめないほどの大きさでかなり遠くにあるはずなのだが、手を伸ばせば触れれるんじゃないかと錯覚するほどの氷の柱。
よくよく見ると、表面はかなりガタガタしてるようだ。
ここからでもガタガタして見えるということは、あのガタガタ一つ一つが、相当のへこみだということが分かった。
「ありゃー。約20年前に現れた氷の柱だ。もともとあの氷の柱の真下には20年前にこの世界を滅ぼさんがために目覚めた魔王の居城があったそうな」
「そいつを倒そうとした英雄一行が『こりゃ無理だ』と、苦肉の策で凍らせたらしい。そんで20年後の未来に賭けると。んで、20年たっちまったがために、またまた世界が滅びそうなわけよ。おわかり?」
「……はぁー?」
正直、ぶっちゃけ何がどうでこうなっているとかわかったもんじゃないけど、唯はつねり続けたふとももの痛みと共に理解した。
夢じゃないんだな~、これが。
非日常の始まりだった。
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最近、思い返すことのなかった記憶を組み手の中で思い返していた。
なんでこうなったとか。わたしは何をすべきかとか。
「……あいたっ!」
「こーら!なーにを気ぃ抜いとるか!もう一度死にてぇか?ぇえ?」
気が抜けた一瞬を確実に突かれた。
何日何時間組み手をやっていたが覚えていないが、これではもう一度死ぬだけだ。
奇跡は一回しか起こらない。もう誰も助けてはくれないだろう。
わたしは、ほほを両手でたたくと同時に決意を固めなおした。もう一度魔王に挑み、今度は倒す。
世界を救うのは、やはりわたしでなくてはならない。
「よぉ~し! 再開です!」
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ロビンの話を信じたとかじゃないけど、わたしの知る限りでは日本、いや世界のどこにもあんなものは存在しないってこと。
ロビンによって、とりあえずは村長に挨拶や今後について相談しておいたほうがいいだろうと図らわれ、村長のもとへ挨拶に連れてこられた。
ゴンゴン。
「失礼する、村長」
ロビンの後を追い村長の家へと入る。
「お待ちしておりました。佐藤唯さん」
やや痩躯気味の男性が私の名前を呼んだ。
ロビンの身長がだいたい180センチぐらいあるが、そのロビンより若干高いか同じくらいの背丈だった。
ロビンが細マッチョ系なのに対してこちらはもやしっ子といった具合だ。
村長の家にいるのだから村長なのかとも考えたが、どうもそういう感じではなさそうだ。
「は、はい。こ、こ、こんにちは……です」
「こんにちは。そんでおたくは?」
ロビンが痩躯気味の男性に尋ねると同時くらいに、部屋の間仕切りの奥の方から若干肥満気味の40~50代くらいの優しそうなおっさんが姿を現した。
「あぁ。ロビン君お帰りなさい。こちらはアルド領主様の使いの方でイェンチェ・クルーガーさんです。先ほどこちらにおいでになられたので、私もまだ詳しいことは聞いていないんだ」
「どうも、ご紹介にあずかりました。イェンチェ・クルーガーです。本日は佐藤唯様を訪ねてアルド様より遣わされました」
「へ?わたしですか?」
胡散臭い笑顔と芝居がかったポーズ。第一印象はあんまりにも、あまり関わり合いにはなりたくないタイプだった。
そして分かることは、どうやらわたしの事をアルド何某は知っていたようです。
「では早速本題に入らせていただきます。アルド様は高名な祈祷師のようなものであらせられて、本日こちらの森に佐藤唯様がいらしゃることを予言されました。そして、佐藤唯様には世界を救うことが可能だともアルド様は予言されました。ですので、アルド様は佐藤唯様とコンタクトをとるために、私を遣わされました。一緒に来ていただけませんか?」
唯は今激動の渦の中にいるのと変わらない。
日常という緩やかな下り坂はなくなり、いくら達観しているとはいえたかが16歳の少女に世界を救えだの言われても無理に決まっていると唯は思った。
「ちょ、ちょっと待ってください! わたしには無理ですよ!」
「時間が惜しいですがまた迎えに来ます。3日後。それまでによろしくお願いします」
時間がないとイェンチェは言い残し、村長の家から去っていった。
唯はその日村長の計らいにより、村長宅にて夜を過ごさせていただいた。与えられたベッドと布団の隙間で、渦の中で嵐に遭遇してしまったそんな一日だったと疲れで靄がかかったような頭で振り返った。
翌朝、日の出とともに村は徐々に働き始める。
人間の動き出した気配と共に唯は目を覚ました。唯のルーチンとして、朝起きてすぐ伸びをした。
それから30秒ほど時間をかけて、意識を覚醒へと向ける。
あてがわれた部屋より出て村長夫妻に挨拶をすました。
朝食を村長の妻ハイネさんが、わたしの分も出してくれた。
村長のヘッタさんもそうだが、閉鎖的に見える辺境の村だが実に対人関係に対しオープンだった。
見ず知らずの私を村の子供から大人まで皆、まるで旧知の間のように親しくしてくれた。
「ねぇねぇ。お姉ちゃん」
「あ、う、うん。なんでしょう?」
「お姉ちゃんは世界を救えるの?」
この子は昨日、たまたま村長の家の近くで遊んでいたときに聞こえてしまったらしい。そしてこの子は私の答えを待たずに続けた。
「まぁ。でも救えなくてもしかたないよね」
諦めをこんな子どもがしなければならない、そんな世界らしい。
とても物悲しい言葉だ。
昨日森の中でロビンはひどい格差があったりすることも言っていた。
ロビンは昔、そういうのがそういうのがあまりない世界から来た人らと会ったことがあるらしい。
唯はつい考えてしまった。
子どもが夢さえ見れない、そんな世界をわたしが変えられるなら、それをしなければならないのではないだろうか。
力を持つものは、自身の力に対し責任を持たねばならない。
そのように教わってきてしまった唯には非常にキク言葉だった。
「そうだね……。どうなんだろう?」
唯は、そんな象徴のような氷の柱を見上げた。
この度はぶれいぶすとーりー!2 ~佐藤唯は勇者です~1:旅の仲間たちを読んでいただきありがとうございました。
あとがきですよ。あとがき!どうもこんにちはなつみんです。
お気に入りの曲を聴きながら、あとがきを書かせていただいてます。いやー、私なつみん自身、ラノベのあとがきって大好きなんですよね!あとがきでネタバレとか、あまりしないような作者様の作品ですと、あとがきを先に読んでしまうくらいです。
文才も学も、ましては面白みのある生活をしているわけではない私には、あまり面白いあとがきはかけそうにありませんね。汗
次いでに、2:では、1:の最後でちょろっと出たギルドまで~ギルド中編くらいまで書こうかな?
そんな感じで、緩くふんわりと考えていますので、次回を楽しみに待っていただけると幸いです。